ハルタ 2017-JUNE volume 45

  • 裏表紙、宇島葉『ハルタカルタ』は「ゑにかいたもち」で各種名画パロディ。こういう手間とセンスは好み、上野顕太郎の作風にも通ずるというか。/で。以前もこの作品で何かパロディ要素ほめる感想書いたような、と検索してみたらvol 30掲載の「もちはもちや」だった。再餅か!無論ネタの方向性は異なり、「もちはもちや」は日常にある物を組み方により餅らしく擬態する、「ゑにかいたもち」は名画の中に餅という異物を闖入させる、というもので作品として異なる面白さである。作者は餅好きなのかな、とは思った。

●冨明仁『ストラヴァガンツァ 〜異彩の姫〜』/最終回。異種婚も認められる世界になって終わり。うん、まあ。
●川田大智『彼女はお義父さん』/新連載。
九井諒子ダンジョン飯』/扉絵は掃除する面々、と平和な光景である。小物はしかし、これまでの旅路をふり返るディテールで、今回の内容ともつながる絵であると。/ライオスにはファリン同様、霊との親和性(?)芽生えてるっぽいな。霊の側もここで忠告を与えるということは、彼ら(?)なりの思惑がありそう。この辺りは物語的に、ライオスの回想や生き返りシステムの解説とつながる。ダンジョン修復生物はここに限らず遍在する、仕組みを人体の治癒に例えて説明する、とこの辺はマルシルの回想にあったダンジョン生成つながり。以前登場した世界観説明(に属するエピソード)が、物語の布石としてはまってく快感はSFっぽい。食材も貯まっている。雲行き怪しい邂逅が果たされたが、さて。
●山田果苗『東京城址女子高生』/新連載。城跡めぐり。そこにあった歴史紹介しつつもネタとしてしか昇華しない、その再話におはなしとして身を投じる気はないっぽい。ライトなオタクってか。
入江亜季『北北西に曇と往け』/落ちる水昇る水、でかい。絵でオノマトペでその表現に誌面費やせるのは、まあ贅沢であることよ。
八十八良『不死の猟犬』/白雪姫がヤる前に子供どうこう言ってたのは、すでにできてるなら未来のずらしようがないって事か。婚外子できない世界ってどうよ、しかし。あと寿命って概念あったのかよ。
●高江洲弥『ひつじがいっぴき』/怖いわ。暴力の平等性ってか。
●山本和音『星明かりグラフィクス』/逃げ場でしかない、という自己認識も大概病んでる感。
●高橋那津子『昴とスーさん』/ふーん。他の女とキスしたら元に戻るというオチかな。駄目か。
森薫乙嫁語り』/そうか、鷹狩りと呼べども世界各地で扱う鳥は異なるわな。ここではイヌワシ
●サワミソノ『丁寧に恋して』/日常描写、である。この地平が、喜びも悲しみもときめきも怒りも含んだドラマとしてある、それを描ける筆力はやっぱり好きだなあ。おもしろい。/故にヒキのアオリ文は直接的過ぎるっつうか、もうちょっと情緒というかさぁ。
●原鮎美『そろりちゃんには霊感がない』/読み切り。アホの娘は怨霊を救う。これもガールズコンビながら、よいバディものかもしれん。
樫木祐人ハクメイとミコチ』/扉絵、世界観上、アナグマのお菓子屋が小人用のサイズを作り分けているのだが、考えたら体格差の存在って貨幣経済的に…まあファンタジーだから。姉と弟。以前ミコチの姉も出てきたけれど、この距離感のよさね。
●設楽清人『忍ぶな!チヨちゃん』/ちゃんと仕事もこなしているのか、て雇い先が警察っておい。親父…。
●上瀬達也『ふぉーちゅんスタンプ』/読み切り。絵柄とノリは一昔前のオタク向け作品という感じだが、話自体は小品らしくまとまっている。誌面的に新鮮なテイストではあるかも。
近藤聡乃『A子さんの恋人』/くり返しますが。本作を読む場合は、余裕があれば吹き出しの位置どりの巧さにも注目してください。本作にて初めて写植を入れているという作者が、セリフを言葉を文字をどう読ませるか、発言を見せ絵を添わせコマをつなぐものとしてどうおくか、その表現に挑む様も読んでみてください。/前半、あいことえいこ。えいこもA太郎も光と影の間という表象にいて、それを外部にいるあいこがつなぐ、という構成か。忘れた絵、というモチーフの重みがなんとも。明晰ではない言葉と気持ち、とこの作風において言ってくる事の内圧。先月号でも言ったが、あいこは少女マンガ的キャラでありつつ大人、なのよね。/後半、あいことけいこ(今回の二つの章題の対比にも注目)。丁々発止、慨嘆、説得(思い出の共有)、赦し、と前半から一転しての緩急の上手さ。あいこの顔は、風呂入る前はボロボロだった、という絵になるわけですかね。あいこにここで友人として接せられるけいこはいい人だし、山田は自覚的道化だったわけだし、こいつらも大人かよ〜。キャラ造形的にタテヨコ90度単位の構図多めの作品であるが、けいこがあいこを諭す前段やあいこが山田の前で泣くコマであらわれる高低差も加わった斜めからのアングル、そこで生まれるコマの奥行きが印象的。こちらの面々も丸くおさまり、いよいよクライマックス近いのかな。あと、冒頭で結局えいこはカレンダーに「印を付けて」ないわけで、それも今後の展開に関わってきそうだが。
西公平『ゲス、騎乗前』/GⅠ勝利。いや、そこで泣くのかよ。次回最終回。
中村哲也『ネコと鴎のクローネ』/サブタイトル見ると、鴎というのは主人公の事?ではヒロインがネコなのかね。本編、人生の6年間をかけて資格を得る道か。目標とは道しるべであり。