月刊コミックビーム2017年7月号

新井英樹『KISS 狂人、空を飛ぶ』/新連載。表紙絵(アオリ含む)からして強烈ながら、本編は吹き出しもオノマトペもそしてペンタッチもなしで、ガキの衝動猛りまくりインフレーションとモノローグで突っ走る52ページ。『SCATTER』も1話から強烈なヤバさでしたが、より“純粋”になっちまった感であることよ。 キチガイを自称するしかない焦燥、孤独、そして端から見れば妄執が出会うのは、夢? 隔離地域ディストピアネタ、になるのかしら。
三宅乱丈イムリ』/うわあああ、ついに、か?再会のもたらすものは。
羽生生純『恋と問』/あっちもそっちもヤっちゃってどうすんの、と思ったら次回最終回って、おい。しかし前作においても山場となるマンガ持ち込み回では、異物たる主人公に対して外部、かつ職業人である編集者の視線は、真っ当に冷徹だったからなあ。この物語だって勝手に因縁読み取ろうが、所詮は全員が他人同士、というのも真実なわけで。
●市川ラク『わたし今、トルコです。』/宗教編。結論、ゆるい。いやさ俗人的。そこにどう美意識を見るかも他人の勝手、といいオチだね。
●うすね正俊『砂ぼうず』/長距離砲、というオノマトペ表現。
山田参助あれよ星屑』/連載再開、最終章突入。欄外に、今日から見れば不適切な語句〜的な但し書きがあって(初だよな?)、一方で巻頭カラー2ページ目からして放送禁止語な号なのになあ、などと。/ ヤクザとGHQ、ひいては古さと新しさ、という形の対比。時代に取り残される人、というモチーフは一貫して流れている作品ながら、この邂逅がまた戦場の記憶を開くことになりそうで。しかし本当、ペンタッチの落差すごいな。
カネコアツシ『デスコ』/序盤からのサブキャラであるこいつら含め、一斉退場か。あ、ひょっとして変装済み?
●伊図透『銃座のウルナ』/かつて同じ戦場にいて、国家の使徒としてあって、その上での心理的距離、というモチーフは星屑の方にも通ずるかも。ここではその脈絡を集団劇の中で読ませる。コマ内・コマ間での立ち位置の見せ方とか巧いものだ。主人公と同じく彼氏も強いお人。そして、こういう形の闇が現れるか。
松田洋子『大人スキップ』/交番での説明ひでえ。笑顔がすてきなおばさん達(お向かい含め)。
山川直人『小さな喫茶店』/実在する詩より。重いそれは、しかし伝わるもの。で、我ながらひどいが、チャンピオンの『サウエとラップ』の芸風にダブって落差でちょっと笑ってしまった。申し訳ない。
●H.P.ラヴクラフト、田辺剛『狂気の山脈にて』/怪獣バトル漫画の様相。すげえ。
須藤真澄『どこか遠くの話をしよう』/死の未来の中で。嗚呼。
●conix『青高チア部はかわいくない!』/いわゆる地獄の合宿編的な。自意識の部分込みで苦労してるのがこの作品らしさか。
●横山旬『あらいぐマンといっしょ』/出自の重さであり、淡々とした様も取り乱し様もそれを増す効果としてあり、その過去において好転はないわけだけども。それがある種キャラとしての達観の領域に読めるのがおもしろさというか。
森泉岳土『報いは報い、罰は罰』/ホラー描写、本格化。こういう絵になるかあ。
●久野遥子『甘木唯子のツノと愛』/集中連載最終回。あー、そっち側に落とすか。かつてその“目的”を与えた側として、二人の世界にとらわれて。いやー、すごかった。上手くて面白かった。