ハルタ 2017-APRIL volume 43

※先々月号です。



福島聡『カバー・ストーリー』/ロボットとのファーストコンタクトと、男女の仲の進展と。作者はロボット好きだなー、やっぱり。部位や吹き出しのコマからのはみ出し方、上段左コマから折り返してきた視線意識された右端コマの構図、とこういう巧さですよ。/巻末コメントがゲーム実況動画の話なのだが、『鵺の砦』の作者が言っていると思うとなんだ、明るくなったね!
森薫乙嫁語り』/4ヶ月ぶりの連載再開は、カルルクの修行編より。騎馬で追いながらの狩猟場面が印象的だが、マンガ内でのこういう描写ってどの程度のリアリティでなされてきたのかね。『キャンディ・キャンディ』とか浮かぶけど。
●サワミソノ『丁寧に恋して』/スクールカーストという物言いもなんだが、利用されてしまう立場というのは環境として、日常のリアルとしてある。で、この物語の軸となる恋愛面(?)においても現状、ヒロインである彼女は動く周囲の受け手であるしかなく、それに対して見せる感情の動きこそがキャラクターの核として描かれる。地に足着いているが故の表情の力であり。
●高江洲弥『ひつじがいっぴき』/新連載。予告でかわいいアピールしていたけれど十分グロい、本作もまた闇を含むメルヘン。夢の世界のビジュアルイメージということで相当無茶もききそう。つらい現実に対して作り出された私的ユートピアとも見えるが、意図せず害悪が入り込むということはもう少し何かあるのか。抵抗手段として外部を、現実の暴力を持ち込んだ時に起こるのははたして。
樫木祐人ハクメイとミコチ』/ラストの1ページ大ゴマへの結実。その感情の吐露を迎えるまでの努力の証も、見守る友の笑顔も、目の前の結果も絵に収め。「今日はあり合わせで」「煮物だらけだ!」というやりとりが絶妙である。いつもメシうまそうな作品における、今の気分と状況の証である。
●山本和音『星明かりグラフィクス』/わりと楽しく読めるのは、私が猫のかわいさとか全然わからない人種だからだろうか。
大武政夫ヒナまつり』/新たな超能力者登場。(このマンガにしては)意外や有能。
八十八良『不死の猟犬』/心臓さえあればいい、て便利っちゃあ便利だな。
●緒方波子『モテ考』/アタック展開だと!?
九井諒子ダンジョン飯』/扉絵めくって1コマ目に描かれるのは普通のメシ、というわけで別パーティー編継続。主人公達の背景語りが、別視点から行われる。読者がこれまで見てきた主人公達の状況や感情の背後に余白に、どういう文脈が存在するかという物語り。 推測・論理として世界法則の結果が提示できる、ファンタジー世界たるディテール群。主人公がボスキャラ倒す、という定型の後に現れた群像劇でもあるのよな。ライオスは人間(とそれ相手の行為の結果)に興味がない、というのは嗜好と目的への邁進からして事実なのだろうが、しかし対するカブルーの意識が私刑癖と支配欲というのもなあ。新たに和風パーティーも登場、多彩である。
●菊池まりこ『公安部特異人種課56』/失神設定の活用という、いやまあ。
近藤聡乃『A子さんの恋人』/あいこの回想&ちょっぴり彷徨。少女マンガというかロマンス文脈を、この作品にあって許されたキャラなのである。特に今回のあいこは、仕事の悩みと恋の思い出が生き様にリンクする、大変に女性マンガな仕様でございます。シーンの流れの上でも、コマ単位でのアップとロング、顔・体の向きの切り替えでフックは作れて、そこから回想とモノローグに入る読ませ方の上手さ。ナレーションへのキャラからのツッコミという、本作品には珍しいメタネタもこなすが、これも個人的には少女マンガ文脈ととれる。インスタグラムを見ている表現として画面の像が風景に浮かぶ絵も、その背景多重表現に連なるか。背中越しに会話を聞く場面も、コマのスクロールとアングルの90度変化で表情と吹き出しの読ませ方をコントロール。ハンカチをポケットに入れてる女はツッコミ所という日常の地平も入れつつ。/で、物語の内容の方も、えいこに対するあいこのラブコメ的グルグル逡巡から、他人の目を気にしないえいことその欠落、というタームがここしばらくの展開同様ちらと現れる。日常の記憶として。そこからロマンス回想、おセンチモノローグ、走る背中の絵のコマを連続、とカタルシスに向かってるぽい演出の後にラスト1ページで謎の急転、怒涛の部位アップ&オノマトペ押し。コメディに落とすかー。すがる相手のけいこが一番の昔なじみである、というのも回想中の絵にちゃんと出してるんだよね。
西公平『ゲス、騎乗前』/なんつう馬名だ…。サブタイトルはその意味でか、ミスリード効果にもなっているが。
中村哲也『ネコと鴎の王冠』/病み上がりにフルーツたっぷりのケーキ、贅沢ですなあ。職人見習いを経てから学生、そこから職人へ、という段取りになるのか。まさに人生設計込みでのお付き合いなわけですな、主人公カップルは。
●長蔵ヒロコ『ルドルフ・ターキー』/完全に男がヒロインになってる。