ハルタ 2017-NOVEMBER volume 49

※先月号です。


  • 裏表紙新連載は大上明久利『Auto Smith』。クラシックカーのイラスト集。ちゃんと“マンガ”だった前連載に比べると、面白さには欠ける。

のらずにいられないっ!



久慈光久『剣闘奴隷アキレイア』/読み切り。古代ローマのコロシアムで女奴隷同士がズッパズパ。風呂からタイムスリップできたらいいのに。

樫木祐人ハクメイとミコチ』/右のページでバードさんぶっ倒れたのに続き、この伏せポーズからの導入もなんだが。家に招いた飄々キャラがチラチラ感情のぞかせるお泊まり回。ふれあいだね。不安要素の闖入による雷のエフェクト化はおもしろいギャグ。不安と共に雷雲も去り、満月と安堵。

●namo『ここだけの話』/読み切り。クーデレ一発ネタともいえるんだが、既刊の多さだけあって構成による読ませ方はさすがに手練れ。こういう技術を読みたいんだよね、私は。

●福田星良『あねおもい』/新連載。

●設楽清人『忍ぶな!チヨちゃん』/愛という感情に目覚めたがゆえの不具合と。結局知人にはだだ漏れのデレデレぶりなのよな。

大武政夫ヒナまつり』/脱毛に繊維の汚れ落としって、ほとんど分子レベルじゃねえのか。深く考えたら負けだが。

●大上明久利『Killer Queen』/読み切り前編。1930年代アメリカでこのキャラ、つまり西部警察ですねわかります。

九井諒子ダンジョン飯』/地下通路の雪景色。生ける絵画の伏線の方は、ワープ術が絵を通してのものであることとも関わるのかな。魔術についてはライオスばりに熱くなるマルシル、とセンシはそこで(やな)表情のぞかせるのね。彼は冷静かつ創作派なオタクだし。(そうか?)/冬コミ前に二次創作へと釘さすモンスターが登場、嘘。伝承的には狸や狐の類いとも思えるが、クリーナーも性質解説と共に登場したしこの能力にも説明つくんだろうか。セルフパロディでもありつつ、互いの認識の差=画風の差という表現はおもしろいギャグ。また「修正されていく」の言葉通り、話進むと細かい部分がちょっと変わってるんだよな。チルチャックの耳とか。

●真冬麻里『メガリスは最果ての人』/読み切り。巨大女。信仰だわな、まあ。

●冨明仁『ストラヴァガンツァ~異彩の姫~外伝』/はだしのゲンの、さらわれた赤ん坊が戦傷者の家たらい回しにされていた話がダブる。戦と幼い命の対比という定型ではあるのか。

●山本和音『星明かりグラフィクス』/今さらバカかこいつ、なら最初から勝つ気で挑めよ。人物の承認欲求の内実が回ごとにブレブレで、話を都合よく回す道具になり下がってんだよなー。

近藤聡乃『A子さんの恋人』/会話・通信のマンガ化が見事な本作だが、今回はLINEが登場。キャラと吹き出しという図示で、話進むと(その言葉を入力した時の)表情の理由が判明したり、浮かぶ吹き出しに対して目線を下にスマホ見つめるすごみある顔が配置されたり。盗み聞きする会話とそれのもたらす心情、という今回の展開に、ツールの絵としての親和性はあるやも。
/全体的に顔の絵が効果的&印象的な今回。場面転換に顔、人物の状況の接続に顔→全身像並列→もう一人の顔、ヒロ君の純朴さに驚愕する女二人の珍しくギャグ調ショック顔(クライマックス)といった具合。/そしてラスト2ページ。まず左ページで、ゆうこの内心を正面顔で指摘するヒロ君のセリフとそれに相対する彼女の後頭部というコマが続く。ラストのコマで左方向に席を立つゆうこ、コマ内に残る(左向きの)ゆうこ後頭部。ここに至って表情を見せないという構成。

→めくってラストページ。一段目の1コマ目に珍しい顔つきのゆうこ。2コマ目に、右から続くゆうこの吹き出し、ゆうこを見つめるえいこの表情(とヒロ君の雑音)。下部は大ゴマで、彼女達のシリアスな表情に対置するかのような街中、その中に小さくいるゆうこ・えいこ・ヒロ。浮かぶ吹き出しは、ゆうこにその表情(感情)を起こさせた、あいことけいこの会話である。言葉と表情によるセンチな展開。/あと、けいこの伏線はこだわりの作家性という感じ。

山本ルンルン『サーカスの娘オルガ』/嗚呼。何がつらいって、ここでの上流階級の子たちにも悪意は全然ないんだよなあ。その純真さなればこそ、摂理と映るわけで。/冒頭の“川で遊ぶ西洋人”みたいな場面が、おはなしとしての現風景突いてくる感ある。海で見かけたユーリィ追って別世界へという流れも、その要素とロングショットのコマ相まってどことなく幻想的。片眉によって表現される表情の造形の面白さ。

森薫乙嫁語り』/いずれスミスは、期せずして戦地から脱出できた立場として描かれるのかね。決闘の文化知ってるのなら復讐もそう遠くはない気がする。

●サワミソノ『丁寧に恋して』/いわば話してるだけ、なのだが面白い。互いに背景のぞかせる生身の言葉による、少年と少女の対話。そりゃのぞく感情も切実というもんだ。名前の漢字についての会話ということで、以前掲載された読み切りの感想にて、主人公二人の名前がタイトルである点に私がこだわったのは正しかった、多分。/自分から相手に触れた時は無自覚で平静なのに、相手から触れられるときっちり赤面反応の丁が印象的なシメである。で、その点も“お互いに”なのか、男女共にその心境なのか、というと最後のページは永松の表情見せないように構成されてるのよね。彼の方の心情は読者に委ねられると。まあ俺が思うに、永松君は狙ってやったんじゃなく自然に手が出たらラッキーどきどき、みたいなもんだと思うよ(どこ目線だ)。

中村哲也『キツネと熊の王冠』/たまたま面白い味、とそういうのも出せるのが店を持ってる強み、プラスアルファだよな。定番はきちんと備えた上で、なのだし。

●比嘉史果『真昼の百鬼夜行』/はいはい、ホモシチュエーションにすりゃネタで済むってね。

●高江洲弥『ひつじがいっぴき』/タイマンはったら(ゴア要素負いつつお膳立てしてくれたロリヒロインの方と)ダチ!不良少年とお嬢様、夢の中で会う男と女、少女を救うべく怪物を倒す少年、といった各要素は確かにロマンチックかも、というかそれ成立させる為の手練手管な物語なんだよな。ベタを通すのも難しい時代、というよりはフェチを込める技術なのかもしれんが。

●渡邉紗代『B/W』/最終回。

●浅井海奈『マカフシギランド』/読み切り。独特な絵柄の作家だとは思っていたが、本作ではバンドデシネ的な作風が炸裂しており、そこがルーツだったのか、と。面白く読めるんだけども、そっちの作品の影響下な組み立てであることも見てとれるんだよな。上手く伸ばして欲しい個性である。

●黒川裕美『春立つ姉』/読み切り。文盲の早とちりは困るね(おい)。マリモ飼うというと幕張サボテンキャンパスのネタが頭かすめてなあ。

●木村みなみ『舞ちゃんのカメレオン』/読み切り。戻れない、から偽りの元通りへ。前号の方の読み切りでウェット全振りな感想ノリノリで書いてたら、今回はすごくドライなホラー見せられちゃったというね、トホホ。しかしながらこれ、内面描く力量ある作家があえてその排除を描いたら、という作風でもあるわけで。あすなひろしにも原作付きながら『呪啼夢』という連作ございましてな。
呪啼夢 (Gekiga Etoile)

●長蔵ヒロコ『ルドルフ・ターキー』/最終回。普通のマンガを普通のクオリティでやりきった、という印象どまりだが、この誌面にあってはそれで十分貴重だからね。お疲れ様でした。


  • 次号より福島聡新連載!(もう出てる。)