ハルタ 2016-MAY volume 34

  • 表紙絵は和田隆志。チアガールと各種スポーツ中のSD動物達。かわいいじゃないの。

●和田隆志『カバー・ストーリー』/表紙続きで、チアガールのドタバタメルヘン。人間もいる世界の中、対する動物達ばかり応援して勝利をもたらすのになんだか歪みを感じる…のはこれまでの作品の印象引きずり過ぎか。省略のテンポのよさがなんだか新鮮。
●比嘉史果『真昼の百鬼夜行』/新連載。コメディ寄り現代妖怪話。個人的には読み切り時から、デフォルメ動物の外見で中身は人間で名乗るのは妖怪、という設定が生理的にキツい。
九井諒子ダンジョン飯』/扉絵が竜の一部とキャラクター、と前回から続けて、大きさ異形さ見せる演出だったわけか。いいね、ヒグマドンっぽい。全編バトル、というよりも逃走展開。巨大モンスターが、走り出す緊張、火を吐く迫力、接近戦の恐怖。圧倒される強さを見せつける描写の連続である。策は通じず(前回ちゃんと説得力あったのに)、装備も失われ(ケン助…)、追いつめられる中、最後に頼れるのは包丁!…なのか?切迫した危機感描きつつ、その時ならではの笑いはさむ展開が映える。ラストバトルっぽいし。
八十八良『不死の猟犬』/一発ヤってきた(二発だけど)部下カップルに鰻をごちそうする上司、いやまあ。死亡フラグな気もするが。これ連絡とれるのなら、情報だけ交換してもいいのでは。
樫木祐人ハクメイとミコチ』/狼に眼帯は構造的に難しい。行きたかった場所にちゃんと行けたことで、別れた過去と出会えた今があって。遠景の自然に姿の埋もれる中での、この音による通信の絵がいい。無機質なオノマトペでの、片や仕事道具の火薬の、片や首領の遠吠えの。
●緒方波子『モテ考』/新連載。エッセイ漫画、なのかこれ。
入江亜季『北北西に曇と往け』/また明らかに気合い入れて描かれたジジイだな、こりゃ。
森薫乙嫁語り』/旅と野盗、遊牧と土地所有者、夫婦間のわだかまり。進む中、話せば進展はある、というのはパリヤさん側と対ではあるか。ばあ様は弓を使っていない、と認識されている裏で、あの終戦の一矢があったわけだな。
●山本和音『夏を知らない子供たち』/読み切り。SF的設定とノスタルジー。端正。
佐々大河『ふしぎの国のバード』/料理回。衛生面掘り下げると、そこはね…。
近藤聡乃『A子さんの恋人』/タナトスとエロス、と言ってしまっては直接的すぎるかもしれないが。元カレ&遠距離の今カレ、と恋愛描写が過去・記憶として出てくるこの作品において、失われた他人の存在から認識と行為が今こうして動き出す、と。スクリーントーン使わない絵でお葬式の光景、喪服の集団を、しばしばキャラクターもデフォルメされる中、ちゃんと服装描き分け、カケアミで塗り分ける巧さよ。で、記憶の中のA先生は光源の中にいるね。長い尺で展開される中、6人をコマに並列でなくおさめる会話劇、縦長コマ→高さ2分割コマ、という構成で上から下へ読ませる効果の生かし方、と構成もやはり巧い。
●紗久楽さわ『極楽蜻蛉』/読み切り。ハルタにはひさびさ登場。本当、絵が上手くなったなあ。モチーフもパロディもお手の物という風情の絵でつむがれる、女博奕打ちの地獄での勝負。現世の非業と清廉、地獄のコメディノリ、と描写が対比されており、そこで主人公の見せ場は地獄のファンタジーの中でこそある。そのカッコいい“生き様”は、夢として。見栄を切られれば後は如何様にも、という幕引きはかぶき伊佐とも通じるか。
●百名哲『走れ、メロス』/シリーズ読み切り2回目。外国人アイドルオタ道中記。苦労も達成もオチもそれでも。やっぱり、現代の民話、という印象が強い。作者(モデルの人物)が語り手で、デフォルメ絵とナレーションにより“奇行”をパッケージングして、視線を間において描く体で。当事者間に物語としてあるダイナミズムが、その語り部というフィルターにより、常人の見せる瞬間、という地平に着地できる。それがワンオブゼムの中に宿りうる光景だからこそ、より切実で輝かしい、という脈絡に読めるのだ、物語として“リアル”として。
なかま亜咲健全ロボ ダイミダラーOGS』/最終回かその直前にエロ、という作品構成は確かにありますけどモブ姦はちょっと(モブ姦言うな)。次回最終回。
西公平『ゲス、騎乗前』/人間観察能力の賜物ではあるわな。
●渡邉紗代『春の宵、密かの森』/読み切り。メルヘン。
丸山薫『事件記者トトコ!』/最終回。これまでのキャラ総出演でにぎやかに。脇役同士の見せる絡みあいの楽しさは、主人公の見せてきたこの世界の魅力の総決算でもあり。最後で桔梗さんそんな扱いかよ!というのはあるが、構成による視線誘導の先、オチにたたずむのは役得かもな、技術を読ませる作品でもあったし。いやー、おもしろかった。お疲れ様でした!


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