越智善彦『ドロイどん』91〜95

(『ドロイどん』91話より)
「キヨキヨキヨ」とメカ群に追われるひなたちゃん。汗かきべそかき猫抱え、真正面からの構図です。なんかわざとらしい程レトロな構図のコミカルさ。これを描けるのが作者の距離感ですね、作品に対する。
そこに響く「ガンゴンガン」というオノマトペ。ふっとぶメカ群。ふり返るひなたちゃん。この辺もデフォルメきいてます。



(『ドロイどん』92話より)
「カチャ…」と双眼鏡的アイテムを構える謎のおじさん、石畳の上にカケアミの影おとして、ディテールとデフォルメのきいたつなぎ着て。
続くタテに並ぶ二コマは、おじさんの見ている光景です。「ピ」と最初に双眼鏡の視界らしい、黒ベタの縁取りの絵。さらにそれが「ピ」と目盛りと共に拡大されます。



(『ドロイどん』93話より)
はい、これは「キヨキヨキヨ」とメカ群に追われるひなたちゃんと姉とお嬢さん。
先の91話からの引用画像と状況的には同じです。しかし、こちらは俯瞰でロングショットで、追う側も追われる側も細かく多く描かれています。限定された空間であることも意識させられますね。あと追うメカ群の出す音、「キヨキヨキヨ」オノマトペが先行して追われる側との間にあり、この音から、それの象徴する不気味さから逃げている、という絵にもなってます。
で、物陰に「ささっ」「ささっ」と隠れる面々。この“潜入編”になってから、しばしば表れるスクリーントーンによる影です。穴の向こうからは、いまだ聞こえる「キヨキヨ」。そこから「ぷきゅう」とアイテム取り出すお嬢さんにフォーカスされます。



(『ドロイどん』94話より)
サイレント漫画で“解説”を描くとこうなる。絵解きですね。しかしとりあえず、このお嬢さんのニカーッて笑顔と突き立てる指とピカーッて背景をご覧いただきたい。



(『ドロイどん』95話より)
「どしーっ」「どしーっっ」「どしーーっっ」。黒ドロイド集団の飛空。
これは素直にカッコいい絵面だと思う。ランドセルなんだけど。



漫画という表現の楽しさ・おもしろさに出会えるはず。越智善彦『ドロイどん』、明日単行本発売!