越智善彦『ドロイどん』86〜90

(『ドロイどん』86話より)
海水浴です。砂浜をかけていく、ひなたちゃんと防水カバー装着ドロイどん。後ろではお姉ちゃんが「ぎゅむむぅ」と自分のドロイドにも防水カバーつけてます。少女は笑顔でうきわ抱えて、無表情なロボットは両手をあげて、一緒に走っていきます。
次のコマ、二人はそのまま同じポーズ、位置取りで海の中をかけていく。「ザブザブ‥」オノマトペ立てて、この前のコマからの経過表現、背景の変化がいい。で次のコマ、アップになってアングルも横からになって「ドボッ」と大きめのオノマトペ立ててドロイどんのみ水没。ひなたは相変わらず楽しげに吹き出し音符。かわいい。
個人的に、この海の描き方とか好きですね。ゆらめく波頭。



(『ドロイどん』87話より)
「Z」と寝ている姉に対し、ひなたが「シャキインッ」。ドロイどんは同じ構図のコマ二つの中で、「チイイイイイ…」からの「パコ」。不穏。



(『ドロイどん』88話より)
威勢のいいお日さま、入道雲、「ミーン ミーン」「ショワッ ショワッ」。夏です。
次のコマは俯瞰で室内。「てててて…」とドロイどんにかけ寄るネコ、机に宿題(と類推される)を拡げるひなた。床や敷物等、背景小物のタッチが好きです。



(『ドロイどん』89話より)
ひなた&ネコ@謎の部屋。光と影のコントラスト。スクリーントーンとカケアミ、でもあり。



(『ドロイどん』90話より)
先の引用コマ同様、明暗が描写された部屋。そこに上半身だけワープしてきた姉(!)。左奥方向から光が指し、コマ右側は闇。貼られたトーンのグラデーションで表現されるよう、光が届かず手前はやや暗い、という状態。
で、次のコマではアングルが180度逆になります。まずコマ上部に「キヨキヨキヨキヨキヨキヨキヨ‥」というあやしいオノマトペが浮かぶ。これに音源の方向を図示する漫符がついています。
ここで表現されるのは、このコマをひとつ絵として見た時に、構図の手前左方向から音がしているということ。実際、壁より手前に描かれてますね。と同時に、コマの外側の左、つまり視線の向かう先のコマに何か音源がある、という表現でもあります。この二つは意味が異なるんだけれど、ここでは両立してます。
前のコマからのアングルの切り返しについては、姉の漫符つき振り返り、という絵はもちろん、奥の光源が手前になり、前のコマでの影が見切れる、という形での表現がいいです。



約20年のキャリアを週刊1ページ連載に注ぎ込んだ、絵と構成と物語の2年3ヶ月分。越智善彦『ドロイどん』、明後日27日単行本発売。おもしろいよ!