越智善彦『ドロイどん』71〜75

(『ドロイどん』71話より)
はい、1ページ四段構成の二段目、右端から四コマ。これは黒ドロイドが倒れているの見て、お嬢さんが自分のドロイドに指示を出す、という上段から続くコマです。
まず一コマ目。コマの右上にドロイドの腕。筒状の、射出形態のそれが見切れてます。で、破裂したような漫符「ドン」というオノマトペがつき、ネットが黒ドロイドに向かって飛んでいます。コマの中を右上から左下に向かう、読者の視線と移動方向が同じ。
それを成立させるため、これ一枚の絵としてはやや矛盾のある構図です。右上のドロイドの腕元は仰角、左下の黒ドロイドは横からのアングルですので。ただし、発射した腕→飛ぶ網→飛んでいく対象、という流れを映像として意識すれば、無理なく読めるんです。そこは私、マンガならではの構成のおもしろさだと思います。はい。
で次のコマに行くと、そのコマの右上から左下にネット発射、という構成を今度は俯瞰から見せます。一瞬時間が進んだ、先程のコマの結果の絵として、アングルを180度タテ方向に変えて。「ボフッ」という、このスクリーントーン貼られたオノマトペがネットのかぶさった音です。さっきの「ドン」とは異なる形状、つまり音質。あと、このミルキィホームズ風コスプレがちょいと気になります。この網目を省略する描き方とか技術ですよね。
で左にいくと、さらにタテに二段に分割されます。右側でお嬢が笑顔で腕ふりあげて駆け出す、次のコマの左でドロイドが「すってんっ!」と転げる。横からのアングル連続させて、これもまあ先ほどの二コマと同じく行動と結果ですね。ドロイドはお嬢についていこうとしたけど網が重くて転んじゃった、とそこまで読ませます。「ドン」「ボフッ」→1コマあけて→「すってんっ!」というオノマトペのテンポがいい、字体変えつつ。



(『ドロイどん』72話より)
この三コマなんかは、完全にオノマトペが主演状態ですが。白背景に「キュイイイイイン」と音が浮かび、対象が吹き出しで「ピ‥」と鳴る電源の入り。「じたばたじたばた‥」という動作形容。「ピョーン…」という四角くトーン貼られた上に書かれたこれは、跳躍の方にピント合わせられてるわけです。



(『ドロイどん』73話より)
この回の冒頭三コマ、家と玄関口。
まず空中の「ピンポォン」というオノマトペが目に入り、でそれが宅配員の鳴らした玄関ベルの音だった、とデフォルメしつつ遠景で図示されます。そこからの、この床の木目とかタイル地とか靴箱とか、そういう細かいディティール見てくださいね。人物の配置とか音符とか。いい画力です。



(『ドロイどん』74話より)
この場面はシステムの説明ですね。登校してきたひなたちゃんとドロイどんが、あちらにあずけて、と告げられる。ひなたの視界、風景からコマ左のキャラの指示→空間内の俯瞰へ。



(『ドロイどん』75話より)
疾走するドロイどんが、「ガラッ」と戸開けて「キュキュッ」とカーブしますが、手前の影に「ピ」と停止。



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