越智善彦『ドロイどん』61〜65

(『ドロイどん』61話より)
ひなたちゃんをベッドに寝かせて、お姉ちゃんが部屋から出てった次の場面。
部屋のドアが「パタン‥」と閉まり、ドロイどんとネコがコマの左側でそれを見ています。そのまま左のコマに目をやると、ドロイどんとネコがコマの右側に、前の絵から180度逆のアングルで描かれて位置しています。同じく、部屋の内装も前のコマと真逆から描かれている。この視覚効果がおもしろい。
コマをまたいでドロイどんが続けざまに目に入る。その向きが逆になった状態見てから、コマ全体・部屋の内装の変化に視線がいくことで、アングルの回転が体感できる。
あと、ひなたですね。前のコマでは、ひなたはベッドの陰になって見えません。しかし逆から見たら、実はドロイどん&ネコ同様ひなたもドアをじっと見てたんだよ、と明かされます。これはマンガならではの効果ですね。



(『ドロイどん』62話より)
「ででん」と空中要塞、そこでドロイどんの映像見ている何者か、です。この映像機器裏の配線の描写とか好きなんですけど。
で、この映像にモアイが映ってます、俯瞰で。これは前の話でひなたとドロイどんが作った雪像なんです。
(『60話より)(61話より)
60話では遠景で全体像、61話では間近から部分的に見せて、62話では俯瞰。状況は繋げてるんだけど絵的にこだわるこのセンスが好きだなあ、という話です。



(『ドロイどん』63話より)
63話には1ページ四段構成の中に、二段ぶち抜きのタテ長のコマがあります。この右側ですね。断面図、真横からという記号的描写。
建物があって、そこから地下に穴のびてて「ウイイイン」とエレベーターが降下していく。「キヨキヨキヨ」と機械が動く部屋があり、巨大なドロイドが横たわる部屋が見えるわけです。図解してあります。
読者はこのコマを上から下に読みます。で、次のコマにいくと上から下におじさんが移動してくる場面です。「プシュッ」とドア開けて部屋に入ってくる。視線の移動方向が継続されています。その先に巨大ドロイドが正面から描かれている、俯瞰で。そういう構図の見せ方です。
次のコマは仰角で巨大ロボの頭部、とおじさん。いろんな角度で見せてきて、ロボかっこいい、かな。おじさんは角度変えてもポージングあまり変わんないですね。



(『ドロイどん』64話より)
はい、これはドロイどんの体に頭つっこんだら、頭のみワープしたお姉ちゃんです、何を言ってるのかわからねーと思うが。
右端のコマです。上段から折り返して、コマの左上から入ってきた視線上に「ひょこっ‥」というオノマトペと姉の顔の絵が出てきます。で、視線が向かう左側におじさんの抜けがららしきものが並んでるわけです、何を言ってるのかわからねーと思うが。
次のコマ、これ逆さまの姉の顔の絵は前のコマと変わりないんですけど、動線と漫符で、ハッと気づいた、ふり向いたと表現されます。で、姉の視線の先にあるおじさん。さっきコマの左にあったものがこのコマでは手前に描かれる、大きさアップでスクリーントーンで影貼られて。アングル変わってるわけです。
そして「がばっ」と緊張の面持ちでドロイどんから顔ひっこ抜く姉、です。



(『ドロイどん』65話より)
木を見てぎょっとするひなた、てんとう虫の群れ、飛んでいくその中の一匹。
私が、この作者は絵が上手いな、オリジナルの絵を使いこなしているな、と感じるのは、たとえばこういう光景の描写なのです。



二年以上の週刊1ページ連載、その分の重みと質量はこめられた一冊(になっているはず)。越智善彦『ドロイどん』、来週27日単行本発売!