週刊少年チャンピオン2022年8号

●灰谷音屋『Diego!!』/新連載。いやもう期待どおりの構成技巧の嵐でもって、前連載『ジュニオール』1話目でその作家性に惚れて全話感想書き通した私としては快楽&さらなる期待なわけですけども。コマ割りと構図の接続の上手さを、吹き出しオノマトペと間白の位置どりを、それらによる視線の流れ(の速度と方向)の誘導の巧さと、そこで高められる演出の迫力と描写の快さ。構成の上手いマンガ家は見開きにおける右ページ下部と左ページ上部の使い方が巧い、というのが私の持論だが、そういう点も注意して読むとより面白いし凄いんだよ~。


→題材としては前連載から読み切り2作に至るまで常に“超人”を描いてきたと言えるのだが、本作では栄華をスタート地点に陰りがのぞく。アオリ文も這い上がり展開だと言っておる。枠を破壊してみせるのがこの作者の作風なのではたして…という懸念をフッ飛ばす強烈な主人公。楽しみである。ヒロインも明示。

渡辺航弱虫ペダル』/俺が妹だったら、て界隈が喜びそうな妄想だな。ウサギのトラウマどうこうは知らんのだろうか。

安部真弘『あつまれ!ふしぎ研究部』/コマ変わったら走る方向が逆になってるとか、いまだにこんなミスやらかすレベルのマンガ家でいられるのもひとえにおやさしい読者と編集のおかげですね真顔。


西修『魔入りました!入間くん』/まあこの作品に独創性を期待するファンなどついてないとは思いますが、ここまであからさまに人気バラエティまんまパクってみました!wwてな描写でも“面白さ”と認識されるものなんすかねえ。あと、入間くんは進歩的価値観ゆえに女性人気が高くて~、みたいなまとめを以前見たんですけども、もっぱら美形でないオスが女に被害与えるイコールギャグ、それへの報いで暴力イコールギャグ、てなレトロ構造をなんちゃってノリ免罪符に垂れ流せる意識、まあキツいっすよ。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/デート回じゃん。背景のモブはマスクしてるんだよな。「(ゾンビを)美味しくいただきました」の笑顔の可愛さがシュール。

→この横長コマは、吹き出しオノマトペをはさんで右と左で違う時間なわけである。

●宗我部としのり『ヤンキーJKクズハナちゃん』/高校デビューでガングロ金髪ギャルってまたアナクロな、ふし研じゃあるまいし、と思ったら元から色黒設定だったのでなんだか申し訳ない。しかし、このぞんざいな描き方だとメガネ少女には戻りそうにないな…。

板垣巴留『SANDA』/素でやる辺りが壊れている。しかしこのサブタイトルはなあ、ちゃんと元ネタの意味を作者が理解しているのか不安。同じ誌面の言葉の扱いが雑な作家達には伍して欲しくないので。あとBEASTARSとは違って、人間しかいないとモブが味気ない、というのは感じてしまう。

荒達哉『ハリガネサービスACE』/2年ほど読んでないはずなんだが、やってること一切変わってねえな感がすごい。

高橋ヒロシ、鈴木リュータ『WORST外伝 グリコ』/話の流れ一切知らないんだけど、幽霊とはまた原作と世界観違うな…。超越者キャラである九里虎に発破かけるなら、幽霊×女という作品世界における超常現象レベルじゃないと無理、みたいな理屈?

板垣恵介『バキ道』/ジャックは技が技だけに毎度密着に持ち込まれてる印象あるが。首伸ばすわけにもいかんし。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/このサブタイトルで、この立場のキャラに語らせる重み。その“瞬間”の積み重ねという冷徹さであって、だからこそ対置されるのは歓喜なのだよなあ。こういう時にワールドトリガーの名台詞「気持ちの強さは関係ないでしょ」を(真意ふくめ)噛みしめよう。それにしても圧倒的ブラフだったな、ラブちゃん。いずれ見せ場あるんだろうけど。
/試合描写を流れるように読ませてくる本作は、つまり読者の視線(の方向と速度)を誘導する構成が巧みなわけであるが、今回の内容は見る側と見られる側の描写が主題である。観客・傍観者からすれば等しくある双方の競技者を、同じく読者にも共に物語を持つ者達なのだと理解させる。その為に今回は試合と見守る者の描写の切り返しが多い。主人公チームの描写をいちいちせき止め、分断しつつ進め、同じ会場で闘う他のチームにも流れを散らせ、この瞬間は見つめるだけの敗者にも主人公たちの相手にも存在する内実を並置させてから、ラストのコマにて本来なら主人公枠に用いられて定番の構図で相手をこそ描くという結び。この構成力よ、物語りよ。