週刊少年チャンピオン2019年7号



●原作:高橋ヒロシ、漫画:鈴木リュータ『WORST外伝 グリコ』/新連載。WORST完結も5年以上前か。グリコ過去編。元に似せようとしてるのはわかるが、基本的な技術面で不安がのぞく。/不意打ちの御嶽海関の応援コメントも、あくまで元作品に言ってるわけだしなあ。

石黒正数木曜日のフルット』/10周年記念巻頭カラーなのだが、↑のカラーと本編の間に掲載というのがどうも。長年やってれば絵柄も変わる、というメタネタでもある。/作家陣のお祝いイラスト、お題がデフォルメキャラだからこそ画力に差がのぞく。リアル白川先生の板垣絵はともかく。

板垣恵介『バキ道』/相撲に威厳を、と唱える金竜山が最大トーナメントではプロレスに負けてるんだよな、と。力士VSプロレスラーというTHEドメスティック&フォークロアを経てその後、猪狩の方はダーティーな盤外心理戦、外伝での伝説対決、なんなら最凶死刑囚というグローバル、神話的構造の外部からズタボロにされるまで込みで、ゼロ年代始めまでの“おはなし”の行く末を体現してたとは言えるわけで。では、今にあって金竜山側の目指す神話とはなんぞや、とね。まあ公共の場で力士にケンカ売るというので、パッと思い浮かんだのは『ザ・ワールド・イズ・マイン』最初のモンちゃんなんだけども。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/↑のラストページでの力士に続けて、扉絵で柳が手の平こっちに向けてると、「答えは酸素だ」思い出す。柳無双。

●中村勇志『六道の悪女たち』/悪の心を消すアイテムで無力化、と普通なら主人公側のやることだが。抜け殻すぎる…。

つのだじろう恐怖新聞』/リバイバル掲載。主人公は翻弄される側なんだよなあ。つのだ氏インタビューは相変わらずのビッグマウスぶりですけど、話半分に受け取っておきましょうね…。これを信じる読者の存在とは、すなわち『空手バカ一代』メソッドの再生産なのでは。

●ニャロメロン『ベルリンは鐘 ヤッホー!』/私はもっぱらライブビューイング最前列席で拍手のみなので…。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/サブタイトル「野良タコ」ってミャオじゃないんだ。描き手の意識としては、一ヶ月前の春巻が食い過ぎで路地に詰まるネタと同時発生的に出てきたのかな、などと。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/勢いのあるコマが続く、ということは勝負がつかないということでもある。武の礼節、チームの恩義。今回も吹き出しオノマトペによるコマ間の接続が上手いが、それが技巧として成立するのは、前提としてコマ毎に異なる空間入れてカットバックとしての一連の流れ作れるだけの構成力あってこそなので。絵が上手くなくても漫画を読みやすくする方法、というのも、ページ単位・見開き単位・複数の見開き単位という尺での構成に流用するには限界あるので。

安部真弘『あつまれ!ふしぎ研究部』/ドア開ける絵が描けない作者だもの、そりゃ引き戸開ける絵も描けないよ。

荒達哉『ハリガネサービスACE』/そういえば監督親子は結局和解できてないのか、とちょっと笑う。

板垣巴留BEASTARS』/スタンドかよ。正義の食肉、と呼ぶのは自負でありつつ因果だね、しかし。骨肉麻薬は狂牛病からの着想だろうな。

西修『魔入りました!入間くん』/前回の合コンでの、人間(読者)の美的感覚でバケモノなのはそのままバケモノ扱いなルッキズム感もキツかったんだけどさ。今回の舞踏会も、ツノとキバを隠すのが礼儀だ、とより人間っぽい外見の悪魔が諭してくるっていう、なんだ、畸形扱いなのか、ツノとキバは?わざわざ黒い肌、顔にそばかす、気弱という属性付けしたキャラに、種族としての生来の特質であろうツノとキバ隠させるという「古い礼法」守らせてエラいエラいと人間体側から承認してあげる、て美意識として相当グロテスクじゃねえの?この手の、大した思索も覚悟もなく、単なるエモいギミックとしてノリで出される要素ににじむ固定観念≒作中にあっては天然の差別意識、という作り手の雑さが大嫌いなんだよ、俺。『AIの遺電子』に対してはその脈絡で批判しまくってたけどさあ。

●灰刃ねむみ『足芸少女こむらさん』/さすがに図書館の本の扱いについては考えてほしい。てか、なんだこれ。酔う、のダブルミーニングってこと?

平川哲弘『ヒマワリ』/「天下」と書いて「てっぺん」というルビふるのはどうなんだ。言いたいことはわかるが。

●盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ』/四次元殺法コンビ的な吸血鬼による地獄の砂団子的な何か。すごいぜハンター。

桜井のりお『ロロッロ!』/部長とギャル、作品の良心は引かれ合う…。

●いづみかつき『鬼のようなラブコメ』/新ヒロインは殺し屋なのか。いや、まあ。

●灰谷音屋『ジュニオール』/こっちの美術部は善人のリア充感空間ぽいけど。イケボヒロインはVtuberだった!て、これ物語にどう絡ませるんだろう。わりと期待。

●氷見雷太『ZENRAMAN』/読み切り。熱い馬鹿話。いいんじゃないでしょうか。

石黒正数木曜日のフルット』/二本目、干支が来る。谷岡ヤスジ『アギャギャーマン』に辰年だから龍が来るっていうネタあるけどね、ひたすら不条理です。


  • レジェンド作品は『Let’sダチ公』『フジケン』。92年の作品としてあげられてるのが『キク』『シャカリキ!』『ウダウダやってるヒマはねェ!』。
  • インタビューはヤンチャン学園音楽部の人。なんだそれは。