ハルタ 2013-JULY volume 6

  • 表紙は福島聡。絵の具をまき散らすガキ共がなんとも楽しそう。雑誌のタイトルロゴも絵の具でイタズラされてる、という装丁ですけれど、アナログ塗りが福島聡で、デジタル塗り部分は表紙デザイナー担当ですよね、たぶん。
  • 新人読み切り9本掲載。多いな。

八十八良『不死の猟犬』/新連載。不死の世界と“死ぬ”という病とガンアクション。前作同様、ともすればチープな設定の中、状況描写と構成でうまいことシリアス読ませてくんのよね。
入江亜季『春駒』/読み切り。姫様もの、直球メルヘン。君には歌が歌えるじゃないか!
樫木祐人ハクメイとミコチ』/キセルと葉煙草、て、そこメインじゃないんだけれどグッときたり。熱意とルールとおそれを、心にたずえてこその職人よな。耳ピアス狸としっぽギュウがケモかわいい。女同士でも嫁でいいじゃないか!(キッ)
●佐野菜美『坂本ですが?』/受け手のイマジネーションで補完されてこその超人であり、物語であり。
●菊池まりこ『カプチーノ』/ベタだ、だがつよい。
●松本水星『みらくるどりーまー☆ルウ子』/読み切り。魔法少女がブスだったら問題、にならぬほど力は正義。
●西島麗『彼女のほくろ』/読み切り。ほくろとフェチズム。マンガヒロインでほくろといえば、やはり『自虐の詩』の幸恵さんでしょう。
森薫乙嫁語り』/戦が日常の中にあった時代と場所。これまでの生活描写があったからこそ、重く、つらい。
久慈光久狼の口』/狂乱の死の嵐を経て、静かに苛烈な最終決戦。
中村哲也『魔街の坂』/バトルファンタジー的王道であるのは承知の上で、このマンガとしてのコマ構成の巧さよな。主人公と子供たちの間に少しずつ愛情が芽生えてきてこのクライマックスという、ああもう言っててはずかしい、でもそういうことを大見得切って作画構成技術の上できっちり見せて読ませて楽しませてくれる作品があたしゃ好きです。この無機質な鎧があたたかい言葉をかける、てのがテーマとしてもあってんのよ。
丸山薫『事件記者トトコ!』/膝枕で悪夢って、↑との冒頭の落差が。ページ見開きまたいでのメタネタ絵というのも、この人の絵の感覚ならではかな。ようじょが受けるという酷い辱しめや、撃たれた桔梗さんの安否を引っ張りつつ次号へ続くわけだが、全然心配じゃないな!
福島聡星屑ニーナ』/サルとタイへーの登場で別のカップル成就、というパラレル。ビリーのこの強さは、一度彼女あきらめたからこそ得たものなんだよなあ。記憶の蓄積で心を発見する、というのは『ロボット花子』にも近いか。
●原鮎美『でこぼこガーリッシュ』/成人女性が魔法少女コスプレをする背徳感、わかるわ。(本編エロくないよ)
●紗久楽さわ『かぶき伊佐』/江戸の終わる日、とここまで時代劇マンガになるとは思わなんだ。立ち上る煙の表現がよい。戦見物という“祭り”に際して、数年の時を経てよみがえる友情。いや、まあ、愛なんだろうけどさ。
●高田築『補助隊モズクス』/展望エレベーター内で外から迫る大量の敵との死闘という、怒涛の緊迫感。うまい、本当見せ方うまい。
●和田隆志『いけにえ館』/読み切り。淡々としたスプラッタ、というかなぜハルタでこれを。
●高田健一『ベルチャイルドの鐘』/女性保安官といえば洋ピンが浮かぶ頭でごめんなさい。なに想像してんのさ攻撃。
●徳永智子『偲べ!村田君』/読み切り。死んだ後のエロ本処理、というネタはよくありますが、まあ立つ鳥後をにごさずとはいかんよね。わびしくもきれいなエンディングではある。
●木村みなみ『3年C組の事情』/読み切り。教師と生徒の恋愛、もとい片恋。報われないからこそ美しい、というのもあるんだよ。いい表情描きますねぇ。
●空木哲生『鴨の水かき』/現場調整作業。既存物に合わせ、またそれを活かし、形にしていく。向き合うこれを「現実」と呼べるのはディティール描写の力だな、物に限らず。
伊藤憲一ランナーズ』/読み切り。直球青春もの。
●大道礼子『ケロケロ・パニック』/読み切り。カエルの移動で鐘が鳴る。発想は変で好き。
●染谷みのる『穴あき袋は忘れがち』/読み切り。忘れ癖。勢いあるコメディで読ませるだけに、最後は笑いでしめて欲しかった気もする。


  • で、巻末に「予告漫画」という触れ込みで全然予告になってないショート6ページを九井諒子が描いてるんだが、なんでこんなにおもしろいんだよこの野郎。(ひどい言いぐさ。)夢もパロディも童心も人生すら読ませやがって、コマ運びもすごくうまくって、ちっくしょう、本当うめえよなぁ。くやしい。(なんでよ。)
  • 帯裏の「巨大少女名鑑」は金髪ショート貧乳二人。いい。
  • 巻末コメント見て、森薫バンドデシネの推薦文書いてもらうのはどうだろうか、と思ったり。