ハルタ 2019-APRIL volume 63

※先々月号です。



丸山薫『図書室のキハラさん』/帯裏連載。小物にも生き物感の出るタッチ。

●中西芙海『巨人暮らしのススメ』/巨人ガジェット無関係な日常パートの方が、ちゃんと画面構成できているように読める。
/そもそも、私はこの作品の読み切り版掲載時に言ってたわけですよ。「すごくおいしい場面なのにもったいない、という形で技術の追いつかなさ感じる部分は多いものの、ファンタジー世界のセンスは好き」「しかし最近のハルタ誌面見てると、読み切りほめる場合は「設定が好みでアフターシチュエーション見たい、とかじゃねえんだよ!あくまで褒めてるのは“作家性”であって、あなた方編集者が何か形に育て上げてくれって言ってるんだよ!」と、わざわざ念押ししなきゃいけないんだろうか」と。で、まんまとその不安が的中してる状態という。ちょっと“設定”が好評だとホイホイ“引き延ばし”に走って、作家としてのクオリティアップなんざ蚊帳の外という、もうねえ。

樫木祐人ハクメイとミコチ』/1ページ大カット集。パース芸が映える。海産物は食肉になる世界観なんだよな、うん。そう考えると、BEASTARSの水生動物周りの設定は思い切ったもんだ。

●二宮香乃『哀愁エスパー』/読み切り。ヒロイックになれない、という一貫性ではある。

九井諒子ダンジョン飯』/人を食うものとしてのダンジョンと、それを管理しようとする者と。エルフ隊長の戦闘描写が抜群に巧いな、また。

佐野菜見『ミギとダリ』/サスペンス展開。最終的にはシリアスにいくのかねえ。

須川佳『まつ毛のない人魚』/読み切り。けもフレ2でなんやかや言われてた、擬人化と飼育の要素にも重なるな…。断絶の見せ方と、物語としてのその回収が上手い。

森薫乙嫁語り』/暇、すなわち日常。残らない文化、という描写ではある。

●設楽清人『忍ぶな!チヨちゃん』/急転の状況説明を扉絵1枚で済ますという。親父は強かった。こんな形で混戦状態か。

●大槻一翔『欅姉妹の四季』/毎回、目が素通りしていく作品なのだが(正直)、今回の連続コマによる首そらしはちょっと面白い描写。

→なお、前号感想でふれた『A子さんの恋人』のそれは、より発展形。
             (※右ページ下段)
                (※雑誌のノドまたぐ)
(※左ページ上段)
●金箱さくら『霧の中へ』/読み切り。カッパ探し。こういう日常内の異物メソッドが、いききったら異世界ものになるのかねえ。

●嵐田佐和子『青武高校あおぞら弓道部』/この手のディティールなり日常なりとしてのネタを、本編に物語として組み込めてないあたりが惜しい。

●犬童千絵『碧いホルスの瞳』/ヤリチンもしくはヤリマンと動物、というのも一つ物語の定型ではある。

●間間戸淳『鞄工房日記』/最終回。タイトルに工房日記とつけて、前回ラストでようやく工房に雇われて、今回は四コマ3本載せて終了。なんだそりゃ。

八十八良『不死の稜線』/あれ、たしか白雪姫は四人以上感染させてたよな。本心ではなかった、という結末?

福島聡『バララッシュ』/山口の手たたきが、「ぱんッ」という発声セットで通じるようになっている宇部。上述にて連続コマでの首そらし≒連続運動についてふれたが、こちらは左ページ最後の2コマにて、アップ&構図の半回転しつつ、コマ内の位置という形での“連続”性。

/酒に酔って本音を吐露するオッサンと、切れた電話に向かって決意表明する若者という、二人の「凡人」。山口の俊巡と自覚の、間と挙動で読ませる心理描写が堂に入ってる。対して、ラスト2ページに配置される“天才”の恐怖感。

近藤聡乃『A子さんの恋人』/電話で会話しながら室内でのモノローグ、リフレインされる過去、という描写から、最後に主人公が“部屋から出て”、電話ごし・回想中の登場だった友人と(別れの)対面をする、それと同時に自らの中に未だ見えないながら言葉があることに気づく、という構成の上手さよ。外に在る背景の描き込みが“リアル”としてきいている点もまた。オチへの布石もね。


  • お便りコーナーの読み切り群感想、個人的には最も面白かった『リトル・ホテリエ』(荒木美咲)のものだけ掲載されてないのか、うーん。まあ他の作家は初登場ということもあるのだが。