越智善彦『ドロイどん』54

週刊アスキー No.907(2012 12/4号)53ページ


  • タイトル絵、主人公の女の子の喜びの表情です。別離から再会をはたしてのこの表情ですね、いなかったの一話だけなんですけど。/この目の形状「∩∩」、これタイトル絵で出てくるのたぶん初めてです。この形状自体はもちろんベタなんだけれど、その頂点部分が切れている、この辺が作者らしい絵です。アニメ絵ですけれど、タッチの部分でディテールがプラスされる。あと口が大きめに横に開いており・・・口の中の右上が黒ベタで影になってますね。そして、白丸ほっぺがあり、ドロイドくんに添えて手が描いてあり、これも初です。/そして顔が右向きです、読者の視線の動きに向かい合う形です。この点もたしか初めてです。つまりすでにこの部分で盛り上げてきてるわけですね、結構。
  • 1コマ目、この細かさね。石垣、射出口と滑走路、木々、建築物、それらを俯瞰で、この手描きぶりのタッチ。こういうところが魅力です。その射出口が2コマ目でアップになると、石垣にディテールが加わります。そして、主人公と兄妹が「わさわさわさ」と黒ロボット集団に追いつめられてますね。1コマ目ロングショットでちっちゃく汗かいてた人影、主人公が、2コマ目でアップになる際にはちょっぴり前進しています。その後ろに兄妹も加わり、「わさわさわさ」と追いつめていた存在も登場します。カメラが近づくと共に時間経過している。/そして一段目最後の3コマ目。視線の折り返し点になるこの幅の小さいコマで、構図を思いきり傾けてます。床が斜めです。そこでコマ上部にロボ集団が背中側から描かれています。このロボを大きめに描いてトーン重ねてぼやかして、つまり手前に位置していますね。そしてコマ下部に主人公。顔がこちら向きでほぼ全身コマに入っちゃってる、つまり小さいわけで遠くに、奥に位置しているわけですね。大きさの対比と構図で、追いつめられている感じが表現されてます。視線がコマの上から下に向かうのも、前のコマからの視点180度転換といきなりのアップもきいてるわけです。またこの「わさわさわさ」という擬音が隙間埋めてて、端っこのコマで画面ぎゅうぎゅうなんです。
  • 二段目はバトルです、この兄妹のね。/二段目1コマ目は射出口の絵、この四角い通路の出口から集中線が引かれててですね、その出口の光を表現してる集中線の中、白抜きで「ドゴンボゴン」ですよ、角ばった擬音で。この黒一色の敵ロボが光の中跳ね飛ばされて舞っている絵。/次のコマが、闘っている兄妹のロボの絵なんだけど、これこの回の14コマの内1コマだけなんだよな。「ゴオンッ」と擬音の中、ロボがひも付きロケットパンチ飛ばしてると。兄妹はスタイリッシュ立ち。まあでもこの絵はいい構図ですよ、カッコいい。この作品らしくないカッコよさ。これ擬音も前コマから「ドゴンボゴン」「ゴオンッ」で続いてるんだな。まず擬音だけで何か起きたぞ、と示して次のコマではもう闘っている絵です。/2段目最後の6コマ目、ひたすらギョロ目状態で驚く主人公。どうよ、この前コマとの対比。飛んでいる汗のでかさといい、もう「まんが」ですよね。手前の崩れいく敵ロボはリアル、というかディテールあるんですけどね、外れて飛んでる関節のリングとか。なのに主人公のギャグ顔と、その背景のうずまき雲。その空で「きらりィん」となんか光るんですね、ひらがなで「きらりィん」と。
  • で、三段目1コマ目ではたと気づく主人公ですね、後ろ向いて。この俯瞰で見た靴と、それ囲むカケアミの影が私は好きです。またこの気づき線、漫符に幅あるから四角い形状でトーンも貼ってあるんですけど、これが床のラインとそこに立つ主人公の靴のパースからいって角度がついてます。振り返った主人公の顔についている漫符、ですからね。あと前のコマにおいて主人公の手前で倒れかけてたロボが、このコマの後ろでは完全に転倒してます。
  • 続く8、9コマは横長で上下分けで、その上のコマのオノマトペ「バッビュウンッ」。そんな擬音と共に煙たなびかせて、横長のコマのさらに上半分をドロイド君が飛んでいきます。/下の9コマ目はその位置に、このなるとのような煙が浮かんでて、間。この二つのコマは同じ構図くり返す、という構成ですが、下半分に並んでる少女二人のデフォルメもいい。2コマ目で前後に立ってた位置関係が、思いっきり単純化して横から描いたらこうだと。この二つのコマの右下に位置するところで主人公が振り向いてて、読者の視線が最後に見るところにそれ示すキャラの動線が唯一ある、と。この二つのコマで。
  • で、間になってた前のコマからの10コマ目。ちっこい黒ロボがうじゃうじゃ吹っ飛ぶ光景のロングショットが、上半分は横線びっしりと描かれた中に白抜きの「ゴゴオンッ」、コマの下半分は砂煙、というかこれ、漫符としての衝撃あらわすギザギザと煙の質感が融合してますね。前2コマの白背景から一転してのこれは、勢いが出てます。
  • 四段目1コマ目の11コマ目は、倒れた黒ロボ集団の中たたずむドロイド君、煙の中のシルエットで「プシュウウウウ」。これカッコいいんですよね、サインペンの斜線で入ってる影が。初登場の第1話とも重なりますか。/続く12コマ目は、点目と口あんぐりでポカーンとたたずむ三人ですね。ここでちっちゃい「カラカラカラ」という擬音とともに、ロボの残骸ころがってます。これ前のコマの光景が一枚絵としてカッコいいんだけれど、続くコマがすき間大きいんですよ。視線入る右上から左下方向にぽかーんとした顔三つ斜めに並んでて、左上はほぼ空間。ほこり舞ってますが。その絵の対比で、時間的落差として読めます。右下の角にちょっとだけ引いてある斜線が床で、それ示す残骸が「カラカラカラ」と転がってると。一応これ、兄妹が口あんぐりなのに対して主人公の女の子が点目のみなのは、以前もこういうトンデモ状況体験してるからですね。
  • で、13コマ目はドロイド君のポージングです、「シャキイン」と。後光がさすみたいに、周囲が点描で数ヵ所に集中線的な白抜け。続くラスゴマが、白背景で「パコッ」と頭部開き、ネコが顔出して「二ィ〜〜〜」とサインペン字で鳴いて幕と。ネコも片手、もとい片前足上げてんぞおい。オチですね。以前このポーズとった回では全然カッコよくなかったのに、という二重オチでもあります。ユーモラス。以上。


※1〜3コマ目