ハルタ 2016-MARCH volume 32

※先月号の感想です(遅)。


  • 表紙の紙質が変わってるのだが、巻頭カラー合わせの処置だろうか。

入江亜季『北北西に雲と往け』/新連載。追跡者の男。連載マンガとしての巻頭カラー使用は初か。帯裏連載の相棒が犬なのに対し、こちらの相棒は車。小物色々備えてて、傾いた車の中で野宿して、夢うつつで謎の少女と出会って、とまずは冒険行の印象が強め。この辺の見せ方は、いかにも描いてて楽しそう。
近藤聡乃『A子さんの恋人』/まず、扉絵めくった1ぺージ目でひたすらK子が電話相手に向かって話してて、段ごとにカメラ引いていくとこのタッチで描かれるブラインドの掃除中で、結局1ぺージK子で埋められており、それ含む2ぺージ目との見開きで一貫してK子の顔は進行方向の左向きっぱなしなわけであるが(2ぺージ目では1ぺージ目とは逆にまたカメラ寄っていくのだが)、右側のぺージでのそれが語る・働きかける側の表象であったのに対し、左側のぺージでは挟まれる真正面向いたA太郎の淡々とした反応を聞く・受け入れる側としてのそれでもある。で、この見開きの終盤にK子が左端コマで脂汗顔アップにして吹き出しはじけさせても、ラストのコマのA太郎・電話を通した向こう側には定形吹き出し・ゴシック体でしか聞こえないというこの落差温度差の可笑しみ。その魅力が描かれるから、ほぼ電話での会話のみという「内容」でも“状況描写”以上に読めるからおもしろいわけ。今回は全編通してロングとアップの使い分けが巧み。あと内容は、K子よかったね、でも最後の反応
ひどいよ、やっぱりこのマンガの登場人物だ!(ほめてる)
福島聡『ローカルワンダーランド』/最終回。猛る思春期から自負たる中二病へ。いや、なんだろう、最後の話がすごく“プロローグ然”としていたのが、設定も何もわからないままの“お約束”の提示だというのが意外で。しかし、そのディティールと構成には手練れのセンスと技量が満ちているわけで、その語りにより、人間の衝動の様を描写したこれは「おはなし」たりえているわけです。オノマトペとナレーションという遊びであり挑戦的な幕引きを、最後に置いた端緒でありつつ。そこは俺、コミックビーム先月号で最終回迎えた須藤真澄の短編連作が、最後に「嘘」を描いたことに通ずると感じるのよ、読者の勝手で。短編連作という形式のこれにも、語ることで物語としてある、その信頼を。媒体の受け取り手として、そういう現れに喜ぶ読者なんです私は。だからね、その夢を見られたいい作品・物語達だったと私は思います。おもしろかった。お疲れ様でした。/あと野暮ながら言うけど、扉絵のアオリはちょっと違うのでは?作者としては『DAY DREAM BELIEVER』最終回扉絵のような効果(雑誌掲載時)を狙っていたのでは。
九井諒子ダンジョン飯』/以前絵に入るネタがありましたが、キャンバスがワープゾーンにもなるのか。あるいはダンジョン研究の成果?民族間の軋轢、領有権の奪い合いが背後にある中、探索者支援続行という道をとらせるのは、その冒険の読者として痛快。生き返り可能なRPG世界における、復活場所の寺院は死体安置所、ゾンビは幽霊の憑依と。
西公平『ゲス、騎乗前』/競馬業界でそりゃアカンわ。いや、まだ似たような事やってるけどさ。
●山田果苗『本日の四ノ宮家』/最終回。温泉回に。
●進美知子『のっぺら君』/読み切り。のっぺら女房もとい、のっぺら彼氏。巧い。前回読み切りでは吹き出し、今回は表情と、主題となる表現意識を見せた上でそれの生かされた娯楽性。10ページの中での構成と構図への丁寧なこだわり。そして結論としては、イチャラブかわいい!である、よい。不明瞭さを見る側であり、常に見られる側の彼女が、肝心な場面の見開きでは顔見せないってのがもう、続くページではそれをこそ見て笑顔ってのがもう、キャーッ!ってなって好きだわ。はい。
●田村俊平『十六夜』/読み切り。思考と数字、ぐだる女子。ラフタッチな日常コメディ、とも読めるんだけれども、コマ構成がしっかりしてるぶん妙に印象的。
樫木祐人ハクメイとミコチ』/図書館。分類ラベルは貼られてて欲しかったな。網羅性より書き手の個性、という探し方は確かにある。
森薫乙嫁語り』/ようやっと二人でデートへ。いやお使いだけど。
●長蔵ヒロコ『ルドルフ・ターキー』/意外性というよりは様式美の強さだよな。
●高江洲弥『表裏一体』/読み切り。一つの体に二つの心、プラス触覚であらエロい。今回も身体感覚の描写がおもしろい。ラブコメと青春と友情、ちゃんとしっかりカタルシス見せておいてからのひどいオチ。死人出とるがな!で、このブラックユーモアぶりも込みでの作家性なのよな。こちとら惑わされるばかりですわ、楽しい。
丸山薫『事件記者トトコ!』/幽霊と言うより、先祖返りみたく言った方が世界観的にしっくり来る気がする。これ、象についての無念は孫が果たしたって話?食事による和解はいいものだが、物は選ぼう。
伊藤憲一『雪国叙景』/読み切り。上に伸びる巨大つらら、ラーメンによるシメ、と絵面的に好き。
なかま亜咲健全ロボ ダイミダラーOGS』/敗北、次回は戦闘内容、て、これは調整ミスでしょ…。
●梶谷志乃『想幻の都』/病気で性格変わる、というネタもお約束だな。人造人間の人間らしさがそれ、という意味では皮肉だが。初体験、それ自体が変化の上だから、結局はあずかり知れないわけか。


  • 色紙やグッズプレゼント告知、とまあ明日が次号発売日ですけど。
  • 次号、サワミソノ作品掲載。