阿部共実『大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集』&『空が灰色だから』4

空が灰色だから 4 (少年チャンピオン・コミックス) 大好きが虫はタダシくんの―阿部共実作品集 (少年チャンピオン・コミックス)

  • 『デタジル人間カラメ』を怖いだのヤバいだの言ってる輩に三好銀の近作読ませたら絵がかっちり描いてあるから大丈夫とかぬかしてくれそうだなええオイ。(挨拶)
  • というわけで、チャンピオンに集中連載『空が灰色だから手をはなそう』第2話が掲載された時点で「怖い、だからこそ悲しい」と読んで文脈としてあすなひろしになぞらえつつ某所での言及のクリシェぶりに業を煮やしたものの、3話目読んで最終的には「全部ぶち込んで『団地ともお』路線目指すしかない」と言いはなった私ですよどうも、それは間違っておらず、つまり今も俺にとってのリアルであり続けるし今も阿部共実好きですともさもちろん、あ、団地ともおアニメ化はすごくうれしいです泣かせてくれたまえ!閑話休題
  • かつて上野顕太郎が『夜は千の眼を持つ』中で「戦後ギャグ漫画家図鑑」というネタを描いた際、あすなひろしの名を挙げたことがあります。それはないよ、とあすなひろしの名と作品を知る普通の読者なら言います。彼は叙情の作家だ、人の抱える根源的な悲しみを描いてきた作家だ、と。
  • でも上野顕太郎はそんなことは当然わかった上で、ギャグ漫画家の一人としてあすな氏の名をあげた、なぜか、それは上野氏があすな氏の描くギャグを愛していて、そういう文脈で宣言することが描く快楽でそう伝えることが作家の矜持でその個人的リアル抜きでは作品が宣言がメッセージが成り立たなかったからです。その熱と重みと意志において、カテゴライズとしてではなく生身の持ちうる価値観・思想として、私は「戦後ギャグ漫画家図鑑」回を肯定します。
  • はい、阿部共実単行本が二冊出ましたよさ。『ドラゴンスワロウ』の話芸&百合ぶり、たまらんわー楽しすぎ!毎回単行本巻末収録作は異形回だった『空灰』も今回のラストは「幸福パンデミック」で、これは雑誌掲載時からいい話だなーだったんだけど、あらためて、この掲載位置で読むとガチで涙腺ゆるむくらいにいい話で言っちまえ、人の、生きることのあたたかみがしみじみしみるんだわさ、グッとくるんだわさ。
  • ダ・ヴィンチ」最新号掲載インタビューで、空灰の転換点となった話の一つにマジカルラブファイターアンの回を挙げていた阿部氏ですが(あああ、あれも好きだあ、いい話だあ、グッキュンジワァとくる)、「幸福パンデミック」もその脈絡としておかれた、はず。本当、まだ若いんだからいろんな芸風に挑戦してほしい、泣きたいし笑いたいし、俺は阿部共実作品に主観で、その期待は作家としての能力に価値を見てるから、まだまだ好きですともさ、これからも。追って蓄えて携え続けますよ、ワーキャーで消費したかあないんだこちとら、咀嚼も消化も頑張ります。前回の空灰はネットの反応見て「しまった間違えてた!」てなったけど。