コミックビーム2019年7月号

※先々月号です。


  • ビームらしからぬ表紙をめくると、「貞子」広告。

  • 裏表紙広告が3ヶ月連続ギャルゲー、というビーム的には衝撃の事態。先月と同じ広告とはいえ。



音井れこ丸『その時の彼女が今の妻です』/新連載。男女の出会いショート集。

●田辺剛(原作:H.P.ラヴクラフト)『クトゥルフの呼び声』/伝聞という形式も一因であるが、本作は集団なり狂騒なりの描写という点でこれまでの同シリーズとはやや異なるか。

●伊図透『全速力の。』/それのみに生きる人。その結果にあたる一話を思うとな、しかし。冒頭の野球論は、それを立場として語るこの思想が、作品を通じてのテーマになりそう。ラストシーンは関係の破綻としての家出を示してるか。

●十日草輔『王様ランキング』/番外編読み切り。ルールを破るのではなく、Win-Winという情。

猪原賽横島一(原作:H・G・ウェルズ)『宇宙戦争』/圧倒的殺戮。ビームの恐怖よ。

●原百合子『繭、纏う』/ダイヤル式電話というのもらしさかねえ。肉体そのものの継続という脈絡ならば、伝統・未来という概念もまた違ってはこよう。各々の感情をあらわにさせる存在。

●二星まゆ(原作:宮沢賢治)『ひかりの素足』/集中新連載。このかわいい絵柄であの話なあ…。

三宅乱丈イムリ』/上手い逆襲であるが、それ以上にかつての同様の策謀を思えば“進歩”としてある光景だよな。一方でイムリ側の敵意は、はたして。

●河合克夫、市川ラク『猫の色』/読み切り。猫マンガ、一応。作者コンビは合作連載もしていた組み合わせだが、連載経験を経ての作画の自由な飛躍はやはり大きい。

羽生生純『この物語でネコに危害はいっさい加えておりません。』/かわいいネコ、プラス籠城一家。いやな予感しかしないよ。

●うすね正俊『砂ぼうず』/生きる目的が見つかった!ていいんだか悪いんだか。

いましろたかし『未来人サイジョー』/雑踏の中でエロ劇画誌を高々とかかげるジジイ、カッコよく見えちゃうよな。なんせ「希望」なわけだし。

近藤ようこ(原作:澁澤龍彦)『高丘親王航海記』/冒険譚だなあ、楽しい。こうして読むとメタギャグ感もあるけど。

中野シズカ『てだれもんら』/BLに富豪はつきもの。(そうか?)

●植田りょうたろう『うたちゃんの宿題』/シリーズ読み切り。なんか涅槃みたいなイメージがふらっと入ってくる作風でもあるのよな。

週刊少年チャンピオン2019年35号

●実樹ぶきみ『SHY』/新連載。チャンピオン連載作家でいうと木佐貫卓あたりもそうだったが、同人出身作家に見られるこの世界観なりディティールなりの全体的なふわつき・寄る辺なさは一体なんなんだろうな。物語とその駆動力という概念が、俺とは根本的に異なるって感じ。

板垣恵介『バキ道』/親子そろって右腕復活展開、ていやいや。隻腕というオリジナリティとかあれだけぶっといてなんだそりゃ。ノリノリの金竜山がある意味癒し。

細川雅巳『逃亡者エリオ』/ハルタ連載の歴史物でもよくある、作品設定を結局は扇情性としてしか機能させられない空虚さ。

渡辺航弱虫ペダル』/作者はこれ描きたかったんだろうな、というのは伝わるが、いかんせんマニアックな“感動”である。

板垣巴留BEASTARS』/山本英夫の『殺し屋1』と『ホムンクルス』のあわせ技みたいな文脈の出血シーン。ある意味作風の目指す所としては近いかもしれない、異形で身体性で内面で。リズもそうだったが、内面を写さない黒丸目の怖さがよく出た新キャラ。ヒキもすごいけど。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/エースも一人で勝つわけではないという。前回ラストの先生はあくまで“初戦”、“初勝利”であったからこそで、今回は抑えてるな。

西修『魔入りました!入間くん』/唯一のトリックプレイチームが真っ先に退場するあたり、作者が展開を作れなかったのだろう。

高橋ヒロシ、鈴木リュータ『WORST外伝 グリコ』/共闘展開は原作の方では燃える要素だが、こう性急にやられてもね…。

桜井のりお『ロロッロ!』/SFオチだ!

佐藤健太郎魔法少女サイト』/最終回。作者ユニバースを示してなんだ、実姉妹百合エンド?まああれよ、Bマイナスの作品をAマイナスであるがごとく持ち上げてみせるチャンピオンクラスタしぐさとか普通に寒々しいわ、と思ってるんで、きっちりB級作品としての本懐はたした本作にはわりと好意的なんだよ私。お疲れ様でした。

●樋田和彦『京四郎』/リバイバル掲載。ここで過去編掲載するのはさすがに企画がずれてる。

石黒正数木曜日のフルット』/チャリティーオークションで出演権買われたネコの登場回。名前かぶり織り込んだネタ。


  • レジェンド作品は『泣くな!十円』『4年1組起立!』。
  • 裏表紙広告はチャンピオン作品キャラとコラボしたパズドラ。だいぶ画風変わるもんだな。

週刊少年チャンピオン2019年34号

  • 巻頭グラビア初っぱなの、ビキニ姿であぐらかいて笑顔で手を頭にあてるポーズから、初代林家三平を連想してちょっとおもしろかった。



細川雅巳『逃亡者エリオ』/新連載。元囚人主人公と逃亡者ヒロイン。ヴィンランド・サガの放送開始と時期重なったこともあり、そういう人道主義ノリかあ、みたいな印象。1000人という数字持ち出す時点で、設定はガバガバでいく、という宣言ではあるが。/余談。セリフが3つしかない某『錻力のアーチスト』botをひさしぶりに見たら、フォロー&フォロワー1000越えのスパムアカウントの溜まり場と化していて苦笑い。

渡辺航弱虫ペダル』/むしろ逆に、1年インターハイ時の坂道が溝のふちを走っていく展開は、作者のMTB経験から描かれたのかなあと。

板垣巴留BEASTARS』/集団戦&初手から目潰し、これは強い喧嘩。「心臓のスピードの違い」「人生の濃度」というセリフは生物学的にもまさに、なんだよな。
ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)
佐藤健太郎魔法少女サイト』/魔法少女生まれない以上は管理人も増えないわけか。兄貴はラストバトルのオチ要員かと思ってたらまあ。神と人間とAI、という構造ではある。次回最終回。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/ホラーネタ回、ってそこで作中一番ホラーな笛泥棒ちらつかせるんかい。ネタの構成しっかりした回だな。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/新入りの先達を軸に、前回がチームメイト、今回は師弟の情景と。いつも冷静な先生だからこそ、このまなざしと拳は熱い。相手側の描写もしっかりしていてこその、物語の内圧。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/柳の「敗北が知りたい」に対してプロレスラーとしての勝敗論が語られるが、原作の方はグラップラー外伝を経ての死刑囚編で、その辺のおはなし文脈を切っちゃったわけだよね、まあ。

●灰刃ねむみ『足芸少女こむらさん』/縦ロール金持ち少女がテニス。お蝶夫人オマージュかな。てかアンダースコートはけよ。

西修『魔入りました!入間くん』/作者が女性だと知って、女装だの男同士でベタベタだのの描写がますますキツく見える。せめて職能としての媚びだと思ってたら自家発情だったのかよ、その割には技術もこだわりも全然描写に伴ってないよな(素)。

●触媒ヒロオミ『どらコン!』/なんかタラタラした日常回だな、と思ったら20ページ連載枠だったのかこれ。

桜井のりお『ロロッロ!』/合宿回かと思ったらカーアクション回。浦安の大鉄オマージュかな。浮き輪が伏線って。

●よこよこ『こびとのつまみぐい』/読み切り。食マンガ寄り。

小沢としお『フジケン』/リバイバル掲載。この日常劇の地平よ。インタビューも、子供の頃に手塚プロへ電話したとか年齢ごまかしてデビューしたとか、エピソードの利きがいい。


  • レジェンド作品は『ロン先生の虫眼鏡』『サイカチ 真夏の昆虫格闘記』。後者の単行本情報、1巻しか出ずのちにタイトル変更して電子書籍で完結、というのはまあ正直ではあるんだが。

週刊少年チャンピオン2019年33号

  • 創刊50周年記念号。連載全作品折りたたみ表紙、キャラにクラッカー持たせてる作家二人がどちらも指をちゃんと描けてないあたりがチャンピオンクオリティというか(おい)。

 



水島新司ドカベン』/リバイバル掲載。カラーページ&二色カラーも再現。赤色のかもし出す灼熱よ。この語りで十分だったということは、それだけ野球が当時の認識としては共通の芸能だったってことなんだよなあ。あと、二色ふくめてフルカラー21ページ描いた次の回は8ページで、そういう調整も許されていたのかと。


渡辺航弱虫ペダル』/ケイデンスふくめ、問われる身体能力はどの程度異なるものなんだろうか。

板垣恵介グラップラー刃牙』/セルフリメイク後編。物語における初戦のディティールを全部すっ飛ばしちゃうのか…。どちらかといえばパロディに近い試みだったのでは。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/いきなりご対面かよ。さすがにここで共闘展開はないと思うが。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/50周年あわせで長州力ネタ、って長州の引退は45年目なんだけども。背景にこまわり君。

板垣巴留BEASTARS』/異種婚がリスクと認識されているのなら、逆に純血種は。歪んでいるが、競走馬の扱いみたいなもんかねえ。それでも好きだと口に出せるのはいいことだろうけど。ハリガネの方の恋バナが、悪い意味でいかにも男性目線って感じなのがどうにもキツくて。

●中村勇志『六道の悪女たち』/これ、雷乃同様に椰子谷にはもう六道の術が効いてないってこと?

●村岡ユウ『もういっぽん!』/受け継がれる意志。いい仲間だ。

荒達哉『ハリガネサービスACE』/いっしょにチアガールごっこした仲なのに…(本当なんだったんだろうなアレ)。

●灰刃ねむみ『足芸少女こむらさん』/別にポールダンス自体はエロくくりじゃないと思うが。足じゃなくてレオタード押しだな今回。

佐藤健太郎魔法少女サイト』/なるほど、自分だけを不幸にしてステッキを集中させると。残り2回。

桜井のりお『ロロッロ!』/ゲロに出血、ネタの幅が広がるな!

●掛丸翔『ナミダドライブ』/読み切り。本作も卓球。この主人公像はどうなんだ、とも思うが、前連載も読み切りの時点では全然ピンときてなかったんだよな、俺。(連載は面白かった。)卓球描写ふくめ、ケレンは上手い。

●盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ』/投票により選ばれた「94回死ぬ」回。まあなんだ、課題ギャグだからと言って、そうそうとり・みき唐沢なをき上野顕太郎のレベルを期待してはいけない(戒め)。あと靴下さん再登場。

●中内祥吾『仁義なきアイドル』/読み切り。ヤクザに売り出されるアイドルという構図がギャグとして成立するかというと、ねえ。ライブシーンの手書き歌詞は、プリミティブ感ある表現でちょっと好き。

【アイドルマスター】「おんなの道は星の道」(歌:村上巴)
石黒正数木曜日のフルット』/表現や倫理というものは不可逆的に“進化”するわけじゃないんだよな、別に。


  • 高橋ヒロシ板垣恵介浜岡賢次による座談会掲載。みんな大好きどおくまん、なんだけども色紙もコメントも載ってないんだよね…。
  • 現編集長インタビュー掲載。
  • レジェンド作品は『満天の星』『Pound for Pound』。コーナー49回目でまだ読者イラスト募集しているが、あと2回はやるのかな。(誌面紹介も2017年だし。)

ハルタ 2019-MAY volume 64

※先々月号です。



丸山薫『図書室のキハラさん』/帯裏連載。コマ間白なしでの連続構図転換シーン好き。オチも軽妙。

高橋拡那『紅椿』/新連載。世界巡りファンタジー百合エロコメ、か。

かまぼこRED『美少年倶楽部の秘密』/付録冊子からの移籍新連載。

佐野菜見『ミギとダリ』/サイコじゃん…。

●浜田咲良『画家とモデルと魚たち』/シリーズ読み切り。見せ場は魚じゃなくモツ(模型)。あんまり可愛く描いたら面白くなくなっちゃうと思うんだけどな、これ。さらに、扉絵でアンケート好評とアピール、定期連載化を予定と、せっかく面白かったのにいよいよ不安だな。現在の編集体制には作家を育てる能力をちっとも期待できないからです。

樫木祐人ハクメイとミコチ』/飲み屋の混雑。わいわいガヤガヤ16ページを、この作者の構成力で楽しく読ませる。他の凡庸な絵柄頼みのハルタ掲載作家が描いたらメチャクチャ読みにくい、もしくは単調になる内容だよな。絵と物語をいかに見映えよく、スムーズに読ませるべく描写するか。ページのめくり、見開きのノドまたぎ、下段コマへの移行等を意識した上で、どう展開を配置するか。どこに尺を使い、どこを省略するか。異なる大きさのコマをどこにはさみ、複数コマによる連続カットをどこで見せ、構図の切り換えと拡大縮小をどこで行うか。それを技術としてこなせるのが巧さである。

●空木哲生『山を渡る-三多摩大岳部録-』/↑とも通ずるが、こちらの作品は読者の意識の上でのシーン・カットのつなぎ方が面白い。

→冒頭4コマ、三人の体を痛めてる描写は一様さを重ねつつ、続くページ下部の暗転と内面。さらにこれが、ページをめくると待つ急転の大ゴマへの前フリでもある。ラフとも見える絵柄ながら、その効果的な使い方に作者は自覚的である。
/「筋肉の声を聴いて!」(※アイマス曲歌詞より)というわけで、新たな山への挑戦はグッと本格的になりそう。登坂中の足の軽さに始まり、目の前の景色=以前登った山、という成長の実感の描写がいい。おやつは大事。

【アイドルマスター ミリオンライブ!】「スポーツ!スポーツ!スポーツ!」「ENTER→PLEASURE」試聴動画
●原作:百名哲、作画:冨明仁秘密の花園』/読み切り。風俗の女に本気になっちゃいかんよ。『モキュメンタリーズ』序盤を山松ゆうきち的なおはなし文脈になぞらえ楽しんでた身としては、この内容を淡白な絵で抑えて描写してこそ面白いんじゃないか…という感じだが。これも綺麗にすることでつまらなくなるんだよなあ。

●浅井海奈『小悪魔天使ムーちゃん』/読み切り。恐るべき子供の地獄行。淡々と進行するだけにブラックコメディ臭ただよってるのが味である。ラスト前の、右ページ最後のコマ内で左上に飛ばされる→左ページで上から下までの直線的な視線移動の中アングル変えつつ“落下”を読ませる、という構成がおもしろい、

森薫乙嫁語り』/それぞれの会話にも性格、もとい当人の足を着けている世界が出るものだな。

九井諒子ダンジョン飯』/ダンジョン地下一階での戦い。今回はコマ内における右左をやたら直接的に上手下手(かみて・しもて)、作用関係の意味合いとして用いる構成・描写が多いが、ある種、単調なその読み心地が限定空間における移動方向の狭さ(“線”としての動き)にも通じているように思う。つまり演出として意識的なのではないかと。

→たとえば扉絵めくっての冒頭。1コマ目「右」側に「外」への出口があり、モブキャラ達は右側=上手(かみて)=物語の進行方向とは逆側、に横移動を続ける。逃避行動の描写である。主要人物のカブルーも視線を右側に向け、しかしコマの枠からはみ出る≒周囲の動きと同期せず、立ちすくむ。さらに彼が押されて転ぶ描写を、読者の視線の上から下へ、かつちょっと右によれる動きと完全にあわせる形で見せてくるのがすごく巧いわけだが。そしてカブルーにはコマの左側から手がさしのべられ、彼はそちらへ視線を向け、物語に入っていくわけである。

→この見開きも好き。右ページ上段の大ゴマから、視線の下方向移動にあわせてのクラウチングポーズ、下段を左方向へ移動=助走。右ページ左下から左ページ右上への視線移動にあわせ跳躍。左ページでの下方向への視線移動にあわせ、下方向へパンチ。この一連の描写は紙の本の形態で、本のノドの存在をあわせて読まないと、その演出の効果は十全に味わえないと思われる。
/さらっとパーティーの人数制限という設定にも理由付けの発言あり。こういうディティールの上手さもまた。

●佐藤春美『つきたて!餅小町』/シリーズ読み切りショート。膨張餅女。

近藤聡乃『A子さんの恋人』/で、↑に続けて餅食回。美味しそうだけど夏場に読むものじゃない、というのは掲載から2ヶ月遅れで見ている自分の責任だが。こたつで餅食いながらたとえ話は海、というあたりが浮世離れ感。それにしても、このたとえ話は秀逸。

→小ネタにも近いが、この2コマでの吹き出しと餅の形状のシンクロ、という表現は描き手の感覚まで考えてみると面白い点。構成において、吹き出しの位置取りにもすごくこだわる作家らしい意識の仕方。

→あと、この六畳間の描写が上手い。

●設楽清人『忍ぶな!チヨちゃん』/ある意味親父越え、からの急に来たな!

山本ルンルン『サーカスの娘オルガ』/おお、終盤にきて思いきりハッピーエンド、メルヘンへと振ってきた。絵を描くことを失い、しかしかつて見たその幻想を忘れなかったことで、また現実の彼女に向き合えたと。サーカス自体も夢、という話だからねえ。

福島聡『バララッシュ』/マンガにおける感情表現の要は目、というのも最近はあまり言われないかな。だったらあえて、というレベルで今回は目の表現とそれのもたらす緊張・緊迫感がすごい。天才であり脅威である人物から「見てるものが何かわかるか?」と問われた、凡人を自認する主人公・山口が、どういう「目」をするか。

→まず対面時。山口は目を閉じている、または帽子のつばに目が隠れ気味。そんな彼に対し、相手の不破はらんらんと光る目を山口に向けるわけである。続く場面で、山口は不破に気圧されまくることとなる。

→不破の指示を受けて重い表情の山口、そんな彼をじっと見つめる友人で同志の宇部。ここで宇部は構図の接続上、メガネごしではない山口の裸眼を見つめているわけである。その目と表情を見た宇部はこの後、「あいつなら心配ない」とつぶやく。そういう信頼であり絆。


→悩める、呆けている山口と、そこから自分の内面を模索する山口。悩んでいる際は影に瞳が一体化したような絵とトーン。そして、あがいている際はメガネを指でずらし、その隙間からトーンの貼られない目がのぞく。この目は、過程を読んでいくと強く映る、光と読める描写だ。終盤の山口と不破の再度の対面も、相変わらず気圧されているのと同時に、山口の意識の上での抵抗もまた読める。“理解”という形で追いすがる描写なわけである。

→その文脈で言うと、先輩・宮城さんの“怖い笑顔”の目の表現の胡乱さもなあ。