ハルタ 2015-NOVEMBER volume 29

※いやはや遅れに遅れた。


  • 表紙、カバー・ストーリー、目次カットは宮田紘次。ハレの場で踊るおっさん達。
  • 裏表紙、ハルタカルタはプレステ2の存在になるほどと。

●宇島葉『世界八番目の不思議』/トイレの花子さんネタも様々ですが、携帯トイレで持ち運びって。場に規定される存在ですらないのか、そも伝承の誕生が水洗式への認識による想像喚起とすれば逆行ではないか、なんて話もさておいたキャラ属性化、ですわな。
●二宮香乃『健やかゾンビ・ロメ夫』/シリーズ連載最終回。最後に一発スプラッタ、てなんか浦安鉄筋家族のウンコネタみたいなノリ。いい話っぽく幕。
近藤聡乃『A子さんの恋人』/白抜きオノマトペがその位置取りで語りまくり、箱に印刷された字の記号ぶりまでも。タイルと風呂のふたの描法がいいですね。同じ構図のコマ並べるのも、常にひと工夫がそれぞれ異なる形で加えられてるからこそ表現としてあるわけですね。回想と回想中の回想、そして現在の人物と内面の描写の差異も見事ですね。そうしてA子の一人相撲やA太郎からの一方通行の言葉ののち、A君との対話になるとカケアミと風景が侵食してくると。つまりキレッキレだ今回。
森薫乙嫁語り』/四コマ回ながら描き込みは濃い。カラス集合となると『実は私は』連想する頭にすっかりなっとる。
●サワミソノ『ともえと康之』/読み切り。おお、『ちちゃこい日記』の人か。少年と少女が一夜を共にするまで、と設定的には田中ユタカかがみふみをの風情ですが、一つ一つのディティールに田舎という舞台立て、キャラクターの生活臭がにじみ出ていてよい。人物が、その人生の一コマが丁寧に描かれている。だからタイトルに人物名冠せられるんだよな。
大武政夫ヒナまつり』/いやもう設定の投げ捨てっぷりがある意味爽快。
九井諒子ダンジョン飯』/扉絵に並ぶ三種族三ヒロイン、と造形的にはこういう描き分けになるのよね。続く物語一コマ目は無表情(食事中)、後半は変顔、最後はにらみ合い、というズレで。人数増えて、比喩としての種族名も頻出している今回。治療師のいない主人公パーティーはケガによる損失が長引き、他方では死からの蘇生が描かれ。死を禁じる呪い(魂が解放されない)とは、冒険(プレイ)中だから、というメタ設定でもあるな、ダンジョンという舞台的には。今回は食べることによる廃除だから仕方ない。別れた仲間と今一度の協力、という燃える展開、のはず。
丸山薫『事件記者トトコ!』/キャラかぶりにも程がある、しかし想ってくれる人が一人でもいるかどうかが最大の違いなのだ!(いい話っぽく。)
樫木祐人ハクメイとミコチ』/夜汽車の旅。というか蒸気機関車と紙コップ?もある世界なのか。街灯と時計の動力源は何なのか。まあそういうツッコミより、絵として出てくる揚げ山芋や球茶を満喫するべき、うむ。
福島聡『ローカルワンダーランド』/いわゆるオタクネタだと思った?残念、福島聡作品でした!出会って、同じものを愛して、しかし見ている光景は違って、それでも同士なのだよ少年達は、この瞬間は。手を叩く音が耳に入らなくなったという“断絶”こそが。二人共に成長譚であり自分の世界を教わる、いい話だ。エフェクトとオノマトペ、という“絵”もいい。
●梶谷志乃『想幻の都』/きつい言い方すれば、知人が“被害者”となってようやく、という話であるが。しかし人造人間となることで思い出の中のものを受け継げた、という展開はまた絶妙。普通逆になりそうなものをあえて、皮肉として幸福として。“人間”の果たせなかった、現実として夢として。主人公も背景には同様のものがあるようだが。
●高田築『ひとふとみ』/最終回。浪花節だよ〜、いい話じゃねえか。絵と動きと構成の巧さで語られる、その幕引き。おもしろかった、お疲れ様でした。


  • 次号(もう発売日明日だが)、山本ルンルンシリーズ連載開始、和田隆志読み切り掲載。
  • 宮田紘次氏の訃報掲載。好きだったんだなあ、とブログ内検索して思いました。あの人の作品の安定と安心と茶目っ気の楽しさが、心地よさが私は好きでした。それは誌面のムードメーカーとしてある、大切で暖かな光でした。ありがとうございました。