ハルタ 2016-AUGUST volume 37

●高橋那津子『昴とスーさん』/新連載。彼氏がショタに。
九井諒子ダンジョン飯』/復活の儀式。ラスボスの巨体も、マルシルのバックボーンと歩みも意味があったと。今回はしかし、人の解体を描ける方面のマンガ家と同じ資質と技量を感じたよ、やはり。それをグロくは生かさないのが受容される才能だろうが。とまれ物語はハッピーエンドへ、という事でいいのよね?
入江亜季『北北西に曇と往け』/いきなり日本へ。いいよね、ガラス製の丸型茶器に氷入り茶。
●冨明仁『ストラヴァガンツァ〜異彩の姫〜』/やはり戦闘描写になると画力が映える。
●浜田咲良『マシュマロメリケンサック』/新連載。荒れた高校でケンカにあけくれる学生達、その中にあっての異物。噛みつき&よだれって。妙なねちっこさによるズレで、柴田ヨクサル谷仮面』的なノリにも通じる印象。メガネ拭き探す描写とかね、このプリミティブ感。
●宇島葉『世界八番目の不思議』/一本目が色々と多重構造過ぎて、二本目が霞んでしまうのだが。こういう文法持ち寄ってのカオスネタ果たせるのはいい。
中村哲也『ネコと鴎の王冠』/タンクひとつ任される、という言い方になるのか、ビール作り。醸造所の中に多種ある内の一つで采配も個人任せ、とこの辺は規模によっても違うのだろうが。機械の大きさといい、少量生産から試せるのね。まずはタンクの洗浄描写と、作る種類の選択から。
森薫乙嫁語り』/類型としてはこの距離感も、野良仕事中の旦那と家事中の嫁、なのよな。
長崎ライチふうらい姉妹』/アルパカがいるのはおかしい。その通りだ!
樫木祐人ハクメイとミコチ』/廃墟での一夜。一宿一飯の恩だな、まさに。蹴破って入ったものの世話になり、「家」として触れるように。それも職能あってこそ、という構成なのがこの作品の内圧。
西公平『ゲス、騎乗前』/努力が実っての勝利、ではあるんだよなあ…。
●犬童千絵『碧いホルスの瞳』/つがわせたり産ませたり、権力者も大変ね。
山本ルンルン『サーカスの娘オルガ』/シリーズ連載。マンガの衣装は生活の表象、というわけで主人公も芸が上達し、人気も出て、かわいい服を着るように(猿も)。彼との再会を胸に頑張る日々、と。物語においては、明解に描写される階層差とあわせてイコンにあたるのかもしれないが。周囲とのコミュニケーションも増えての、サブキャラ回とも言える今回。このペンタッチでシリアスとコミカルの表情描き分けられ、そこで地に足着いた人間くさい内面のぞかせる姉ちゃん達、よい。その中でなお、主人公のすわった目力というのも。
近藤聡乃『A子さんの恋人』/アメリカ人は足長いし部屋も広いよな、うん。A君の記憶として語られるA子との馴れ初め。存外普通に恋物語しているというか、ほほ笑ましい進展の形なのだが、今目の前に迫ってくる女との対比という形で描かれるのがなんとも。Bちゃんの迫り方、像の見せ方もいちいち構成で読者の不意をついてくる巧さがね。で、Bちゃんの現状を聞いてても、ずっとA子の話としてとらえてるA君、という恋愛状態ではあるのよな、ちゃんと今も。で、そりゃ嫌われるよ、Bちゃん退場のスピーディーさが好きです(2コマ、描線、吹き出しにかかるオノマトペ)。となれば最後のコマ、ワールドワイドな女達の罵倒の情景も摂理なのか。フランス人女性の背中首元に見える蝶のタトゥー、うん。
佐々大河『ふしぎの国のバード』/え、諜報活動としての背景触れるんだ、と思ったらやっぱりそういうノリかい。原文読んで偉大とまでは思わないでも、ぼやきまくるおばさんへの親しみはわくかもね。
久慈光久狼の口〜ヴォルフスムント〜』/なにやら唐突なナレーションが、と思ったら次回最終回か。逆襲者の平民達による戦争の時代へ。
●緒方波子『モテ考』/いや編集部、作者持ち出しでやらせる企画じゃねえだろ。
●梶谷志乃『想幻の都』/最終回。ビオロイドと人間の少女と。その世界が終わる中での、主人公のこの述懐は、結局わかり合える存在ではなかった、ということなんだよな。異物のまま傍らにいる、それと向き合う世界を描く物語だった。その諦観の上で、あるいはだからこそ、最後にジルとニノンが互いに向け合うのは情でもあるわけで。作品として粗がなかったとは言わないが、その人の感情を描く筆致を内包していたことを、私は買うので。ヒトモドキとしての感動ポルノごっこ見せてSFとか言い募られるより遥かにいいから(何の話だ)。おもしろかった。お疲れ様でした。