入江喜和『たそがれたかこ』1巻

入江喜和の最新作、『たそがれたかこ』の1巻が発売されました。

書影はこんな感じですが、私の行った書店ではこんな感じで陳列されていた。

入江喜和新刊 特典ペーパーが… 中学生女子の着せ替えだとはよぉ〜〜〜ッ
まさか……… 『まさか』って感じだが グッときたぜ!!」(※誤用)





おかめ日和(17)<完> (KCデラックス BE LOVE)
前作『おかめ日和』では、大柄おっかさんのせわしなくて苦労続きで、けれどもおかしくてあたたかな生活が描かれていました。
本作はうって変わって、日々に疲れ気味の45歳バツイチ女性が主人公の物語です。


しみる。
個人的にドキッとしたのは、前作同様ディティールにこだわられた食卓の、主人公のセリフによる意味付け。

『おかめ日和』では、おいしそうだなー、幸せそうだなー、というエンタメ性でもあった手料理が、『たそがれたかこ』では、日々を忘れられる行為の産物、という意味も与えられています。で、これもまた「リアル」「日常」なんだろうなあ、とドキッとしたのです。
西原理恵子毎日かあさん』でも、四人子持ちの母さんがパン生地こねながら「無になれるのよ」と心の叫びしぼり出す場面ありますけど、あちらはさすがのアッパー系だからな。





『たそがれたかこ』は、そんな主人公・たかこさんがふと耳にした歌をきっかけに変わり始める物語です。

家で一人飲み中の深夜ラジオにて出会い。

秋葉原タワーレコードにある直筆ポップを見るため休日に遠出し。(この背景描写、好き。)

ヘッドホンと一緒に買ってきたCDを聞いて、感じ入ります。そして変わり始めるのです、気持ちと世界が。
ちなみに『たそがれたかこ』連載開始時の、掲載誌「BE・LOVE」表紙はこちら。

↑どのような道を歩んでこうなるのか、まだ全然わかんねっす。

↑こちらが連載開始時1ページ目にして現状。



で、私が絵的なおもしろさを感じたのは、別れた元夫と暮らしているたかこの娘・一花15歳の造形。

丸っこい、というか、子供っぽい肉の張りがあります。


母親のたかこと並ぶとこんな感じ。稚児的表象というか、それこそ生命力・まぶしさが異なる、といった雰囲気。女っぽさの出始めというのも込みね、私が言うとなんだけど変な意味じゃなくてよ。
たかこは母親と同居しているのですが、娘とたかこと母、三世代が川の字で寝るとこういう図になります。

この絵は上手いです。体つきの描き分けも、並んでいる構図も、物語の中の場面としても上手いです。こういう地平が描ける、すっと出せるのが入江喜和作品の好きな点です。俺にとっての、作家的な視線の好ましさです。