越智善彦『ドロイどん』53

(※先々週号感想)



●今回のタイトル絵はドロイドくんとネコ。このネコのデフォルメ顔がですね、まん丸な見開き目というのがこの作品では他の人間やロボとの差異になってます、それらの点目との。普通逆だろって話ですが、まあ動物らしき異物感ですね。あとしっぽの先の毛羽立ちぶり。丸っぽくじゃないんだな。
●1コマ目。ジェット機の飛んでる絵から始まります。これ背景無いんですね。飛んでるジェット機の絵、これは前回のラスゴマで飛び立った続き、なわけですね。ジェット機が後ろから煙たなびかせている、という絵に「ゴオオオ」という擬音が、これがジェット機の奥に描いてあります。手前のジェット機で隠れつつ、コマの外側まではみ出している。このオノマトペの描き方が背景代わりであり、状況説明なわけです。
●今回の話はコマごとに状況変わるんじゃなくて、カメラの位置で場面転換する、みたいな構成です。アニメ的なカメラワークといいますか。状況をやや脳内補完しながら読む回ですね。1ページを全部で4段に分けてある内、1段目が状況説明、2段目がジェット機内部、3段目がジェット機の外で、4段目ではさらにカメラ離れてのロングショット、ですね。マンガの構成に対して映画的、という言い方は私あまりしませんけど、今回はカットバックという映像手法ふまえて読んだ方がいいのではないか、と思えます。いや、全然難しい構成じゃないんだけど、分析すればそういうことです。
●そういう意味でいうと、今回はオノマトペの大きさが演出になってます。1コマ目の導入、ジェット機のアップの「ゴオオオ」の大きさと背景としての紋様ぶり、そこからロングショットになった2、3コマ目・・・これ背景が1コマ目の空白から青空になるんでトーン貼られて雲が舞い始めるんですが、その距離にあわせてジェット機自体の絵もオノマトペもちっちゃくなる。2段目、ジェット機内部の描写になりドロイドくんにカメラが寄ると擬音も大きく、コマの上から下までにわたって描かれるんですね。1、3、4段目のロングショットで小さめに描かれてるのはもちろんですが、描かれる場所もいちいちコマの片隅に位置しているんです。
●でまあ、3段目でドロイドくんが脱出を果たしまして、過去に見せた変形姿ですね。あの役立たずだった姿がこの勇姿!「バッゴンッ」「ガッキュンッ」!!
●4段目。これは左右に二分割、かつ左側を上下に分けての3コマ構成です。右側の、この大きめにとられたコマで開放感がきますね、「バッビューン」という今回最大のオノマトペと共に。コマの形も横長で、ここは映画的、という表現がしっくり来ると思います。同アングルのコマを3個続けて、で、ここの背景と手前で飛んでるドロイド君のスライド具合いをですね、脳内で映像として補完してくださいね、遠くの方でやられて墜落している悪役(?)のジェット機とともに。とはいえそれも、この「ぼん」という爆発、「キュウウウン」「ポフンッ」という間の抜け方なんですね。ほのぼのです。雲の山に、目的よくわかんないんだけど目指していた竜の巣みたいなのに墜落したんだから大丈夫だろうと、「マンガ」ですから。描き文字の語りぶりがいい作品ですね、やっぱり。以上です。




※14〜15コマ目