越智善彦『ドロイどん』52

※放置し続けるよりは、やろうと書こうと出そうと。好きだしおもしろいしうまいと思うし。



●タイトル絵は謎のおっさんと黒ロボ。/ヒゲとタバコが吾妻ひでおな造形、格好が作業着風な出で立ちの怪人物、なおっさんキャラを10年代にひょいと出し。黒ロボのベタは端を塗り残し、それを光る目(白)とつなげる、二本のアンテナもベタの影。狭い面積だから光反射してるんですね。手塗り。
●1コマ目のドロイド君が金属ゴミの山を転がり落ちる音「がんごろりん・・」が好き。さかさまドロイドくん。はねるネコ。先週からの続き、導入の1コマ目でこの(ゆるい)アクション。
●で2コマ目は、床を転がる擬音「ゴロリン…」。1コマ目の「がんごろりん」表記が転がり落ちる様子がゆえ右上から左下方向に傾いているのに対し、平らな床を転がる「ゴロリン」は横描き。この描線。コマ上部には黒ロボに囲まれた女の子。影はカケアミ、ロボ群の体はいちいちふち残し黒ベタ。
●3、4コマ目は起き上がるドロイド君に後ろから迫る手。1ページを4段に分けた内の一段をこの2コマでさらに上下に分けて、同じ構図のくり返しでカメラは引く、それで間の表現。しかも起き上がる瞬間の3コマ目は枠線なし擬音なし、このスローからいきなり背後にアームが出てくるこの間。しかも擬音、「にゅいんにゅいん」ですから。さらにそれが見切れてる、コマの枠線で。コマの外からこのアームは迫ってきてる。
●で5コマ目でつかまります、「ガチッ」。このオノマトペが、この作者は擬音の形状にこだわる人なのですが、この「ガチッ」は無機質。さいとう・たかを作品のサインペン文字みたいな形状。
●6コマ目。これは見所ですね、今まで手元しかでてなかったアームの多関節アームっぷりと、この古典的絵面のコンピュータ。「ぐりいいいん」って。機械アームの運搬音ですね、「ぐりいいいん」。女の子、コマの右下で驚いてますね、この気づきの漫符。これ一瞬の行動ですよ、気づくって。それを視線が入るコマの右下部分の絵で見せて、で上部と左は違う時間流れてるわけですよ、運んでます、「ぐりいいいん」と。これよく見ると、ドロイドくんの顔ちょっと回転してますね。今まで正面側にあったのに、女の子の方に顔だけ45度回転させてる、このユーモラスさ。
●で、7コマ目で頭を「プキュウ」と押されて、8コマ目で「し〜ん・・」と停止します。この、今回の1ページ連載の2段目の四つのコマ、一つのコマに擬音一つで計四つ、その手描き文字の字体がすべて異なります。最アップ構図の「し〜ん・・」はバックに網トーン。2段目の終わりってことで、絵的な間にもなってますね。
●9コマ目は大ゴマですね。1ページ連載の大ゴマ、4段分けの半ページ幅。最ロングショットの鳥瞰、てこれこの作品でも結構珍しいな。この謎の地下基地(?)の全体像、全体じゃねーけど、全容ですね。これはでも、この絵は配置けっこう考えられてあるというか、隙間を作りたくない描くのが楽しい人の絵ではないでしょうか。右上に金属片の山、右中に女の子、これ両手上げてるのがさっきの7,8コマ目の出来事にびっくりしている、という表現ですね、ロングショットでコミカル。時間の流れ的にもゆっくりです、コマまたぎで停止しているわけですから。右下がさっきのアナログ風コンピュータ、中上部でアームに運ばれるドロイドくん(ウイイイン…)、中部から左下にかけて謎の飛行機と射出口、左上に床からはみ出たモダンタイムス風歯車、この歯車がこのコマで初登場でなんかよくわかんないものなんだけど絵的におもしろく描きたかったガジェットであろうと、ここは、地下謎施設のイメージ的に。
●10、11コマは、3、4コマと同じ手法ですね。飛行機にしまわれるドロイドくんを同じ構図のくり返しで。「ウイイイン・・」「バタンッ」。これも無機質な、さいとう風描き文字がきいてます。この「バタンッ」のとこの煙漫符がよいんですけど。
●12コマ目は怒る女の子にオッサンが気づく、という絵ですが、オッサンの服の腕にポケットがあってペンが2本刺してあります。これ、機能性やデザインとしてはようわからんが、やっぱり絵としてにぎやかに、てことだとしか思えんのだよなー。そんな作者の描くそんな絵が好き!
●13コマ目はオッサンが「チッチッ」と指をふります。珍しく白背景で、3段目から折り返しての4段目一コマ目でオッサンの姿のみ、これも独特の間になってます。
●14コマ目、コマの右半分でお嬢さん、メガネさん、女の子。このメガネさん、作者がコロコロ伝説で描き下ろした当時のコロコロ編集長に似てますけど・・・。そらともかく、メガネさんとお嬢さんは口あんぐり、女の子は手伸ばしてあせってます、漫符の汗かきと涙目とつり上げ眉と白目。このメガネさんとお嬢さんは今回、このコマで初めて出てくるのか。そのテンポ成立させないと1ページ連載でストーリー漫画にはできんわな。サイレントってのもそこ込みでの企画なんでしょうかね。/で、左上部で「ヒュイイイイン」という擬音が傾けて描かれてます。細かいチリも舞ってます。これは!?
●続く15コマ目。飛行機の先端部が描かれていて、コマ枠右で見切れています。14コマ目の「ヒュイイイイン」から続けざまにこの絵が入ってきて、このコマではまた「キュイイイイイン・・」という擬音がさっきと逆に弧をかいてます。すでにオッサンは操縦士席に座っていて、このガラスの全面窓の形がおもしろいんですが、現実には絶対無理ですが、これが動いている、それを表す、その動作方向にあわせた擬音と角度です。
●ラスト16コマ目、飛行機発射。ついに擬音にトーンが貼られてる、「ドオオン」。これが真後ろからのアングル、で、このもこもことした煙がたなびいているわけですよ、後ろのジェットエンジンから。背景の雲が、なんとも杉浦茂チックなうずまき方で。レトロな魅力です。/で、この飛行機の上部、ちょんちょんと毛が生えてます。これね、飛行機出てきた9コマ目見ると上に穴開いてますね。そんでこの黒ロボットがオッサンと一緒に飛行機に近寄って、つまり、この上に入ってるわけですよ、たぶん。飛行機の屋根から黒ロボットがちょこんと顔出してる、そんな造形ですね。なんだそれかわいいな!おわり。



※1年、間をあけましたが、こういう感じにちょこちょこ書いていく所存。よろしく。




(※6コマ目)