「Angel Beats!」最終回放映日に購入していた『正義隊』3巻に、偶然にも内容の一致を見た

ような気がしないでもないと言えないこともないような、とどのつまり今回の記事は与太話であると認めるにやぶさかでない。

(※アマゾンは、書影来てないんですね。正義隊 3(正義革命篇)



そんなわけで先週25日、「Angel Beats!」最終話放送の約14時間前、ひさびさに遠出していた私は『弱虫ペダル』『みつどもえ』『鉄ヲタ少女』の単行本(いずれも店舗特典ペーパー付き)等と共に、近場の店ではまず売ってない、青林工藝舎発行『正義隊』3巻の存在をも新刊の棚に認め、購入したのでした。
ちくしょー、購入特典ファイル、エンターブレイン版の絵柄は『テルマエ・ロマエ』だったのかぁ。選ばせる際に、なぜ裏面まで見せない!なぜ俺はっ……『おまもりひまり』絵のファイルなんかをっ……!
(答:全裸に黒髪ロングの獣耳っ娘が胸に挟んだバナナをなめていたから)



…あー、そう『正義隊』だ!後藤友香の描くマンガ、『正義隊』はスゴいのだ!
内容は、有志による「正義」を信条として掲げた団体・正義隊の闘いの物語。破壊活動をおこなうなんかよくわかんない面々、爆弾魔とか魔女とか妖怪とか祈祷師(大雨を降らせる)とか金星人(名前・オーソン人間を食う。)とか正義隊本部を襲う手からビームを出す人(名前・ジョー正体も目的も最後までいっさい不明*1。)とかと、正義隊はひたすら闘い続けるのです。構造としちゃ『サクラ大戦』みたいなもんですな、いやマジで。
水戸黄門やらウルトラマンやらの例に漏れず、『正義隊』も勧善懲悪バトルもの、ではあるのですが、すごいのはそこに何の物語性も存在していない点です。正義隊は、突如現れた目の前の脅威に対して、純然とシンプルに、走り、叫び、殴りかかり、蹴りつける、それだけです。感傷など一切存在せず、しかし、それでもそこには熱が見えます。実直なんです、構造のみであるからこそ。(だって、バトルしてなんか解決して物語が進むとか、“嘘”なんだもの!)
本作では、そんな世界、あるいは即興劇が、日本マンガ史上かつてないほど下手な絵と構成(バランスが狂っている、という意味で)により展開されるのです。福本伸行プリミティブアートで、さくらももこナイーヴアートなら*2、後藤友香のこれはアール・ブリュットでしょう。たぶん



えーと、実際ツッコミ所満載の作品なんでゲラゲラ笑いながら読めるんですけれども。でも同時に、やっぱり感心している自分がいるんですよね。トバしまくってますもん。唯一無二ですよ、この作家性。
ちなみに、2巻帯には大竹伸朗(!)が賛辞をよせています。

コレ、合法シャブでしょう。
妙にファンキーな闇がウネるんですよ。

わかる!みんなも『正義隊』でトリップしよう!



…あー、そうそう、「Angel Beats!」に関する話でしたね。名目だけは。
だからさ、なんかたまたま「AB!」最終話見るのと前後して『正義隊』3巻読んだら、両者のイメージがダブって非常に楽しかったんですよ、俺。(これがトリップ?)そんなわけで、『正義隊』の魅力の紹介を主眼に、「AB!」解釈(ははは)の一助になんてまるでならないこと請け合いの一席を吹いてみようと。個人的体験に基づき。
間違ってようが無茶苦茶だろうが、手前の語りに話としての魅力、熱だか体重だか感じさせればこっちのもんじゃん、と思うのよね実際。*3


  • 設定

(正義隊本部)
まず前提として、「よくわかんないものと闘うのが目的」という点において、正義隊とSSSは共通しています。
で、この場合の動機づけは必然「相手が悪いからやっつける」という、ただそれだけになります。これはあらゆる戦いに通じる普遍的な理由づけである、と同時に極めて浅い。物語としちゃ脆弱にすぎるが、しかし構造としては原理的である。いずれにせよ、なにもない以上は掘り下げようもないし、追求するだけムダなレトリックですな。
ともかく、その設定であり基盤であり構造であり結論であり、が「AB!」と『正義隊』の最大の共通点であります。というかハッキリ言って、『正義隊』の方にはその設定以上の内容はないです(あらすじとしては)。だから強いんですよ、こっちは。


  • 新メンバー

さて、『正義隊』3巻では隊に新メンバーが加入します。何の脈絡もなく、いきなり主人公側に新キャラ現れたんでちょっとびっくり。いやいや、そもそも『正義隊』という作品には伏線なんて野暮なものは(ほとんど)存在しないのだった!*4全編これライブ状態な作品なのです。
隊員が立ち去る時に野次馬が「正義隊よ!」とささやいたり、追跡中に乗り込んだ電車の運転手に隊員を名乗れば、電車のスピードを上げた上、前を走る列車には駅に停車しないよう連絡してくれたり*5、存在自体は有名らしい正義隊ですが、メンバー募集とかかけてるのかなー。

いきなり宇宙人の隊員に出迎えられ、面接まで始められて嫌じゃないのかなー。
その机の向かいには、美人設定の秘書(人間)だって座ってるのにさー。

いやいや!それでも平然としている点が、さすがは正義隊入隊希望者、なのでしょう。あれだ、「AB!」初回で似たような状況におかれた音無のテンパりぶりとはえらい違いですよ、と、こんな感じの我田引水で進む記事です。
でも、このシーン読んでて、音無入隊場面のイメージダブったのは本当だよ?あの時握手したのは、松下五段だったのになー。(※見返したら、ゆりっぺ&大山とも握手してた。忘れてた。)



そうそう、音無といえば。

正義隊リーダーの名前はケズルです。(おしい!)


  • ギルドっぽい

我々は敵を目指して 地下道を疾走した

敵が出たという電話を受け(誰がどうやって連絡してくるのか、3巻になっても一切わからないんだけど。)、メンバー四人で*6丸ノ内線を走る正義隊。
右下の犬はぬいぐるみじゃない。(おしい!)
その先に待つものとは……。


  • 天使っぽい


闇の中たたずむ、和装姿の老婆。なんか白装束にも見えますけど。
で、どうです?ちょっと天使ぽくないですか?



そして戦闘へ。なぜなら襲ってきたから

直接攻撃。

飛び道具。

攻撃回避。
戦闘能力に長けたあたり、ますます天使



そして、いったん逃げ出した老婆を追う正義隊が見たものとは。

それはこの世のものとは思えなかった

これはもう、どう見たって天使、だったの、初見時、俺の中では!ビジュアル的にまさしく!酔ってはいなかったが眠かったの
ちなみにコレ、どういう状況かといいますと、追う正義隊鉄道のヘッドライト*7に照らされた中に浮かぶ、前方を走るロッコ*8の上で仁王立ちした老婆、という図。次ページにはこんな絵が。

この構図の切り返し、落差ぶりは、ちょっとどおくまんっぽい気がする。


  • 戦闘描写

さて、天使の話題をしたからにはこの場面を出さなくてはなりません。
正義隊の戦い方は、これまで主に殴る、蹴る、だったのですが、3巻目にして初めて銃撃が行われます。しかも行なうのは、これまでついぞ戦闘というものに参加したことのなかった、秘書のスージーです。
おそらく初めて目の前で繰り広げられた蛮行に、我慢がならなかったのでしょう。

再掲しますが、これが普段の正義隊本部の光景です。やぁSSSぽい、ていうかベタな状況ですね。
その場で悪役(駅で寝転んでたんだけど、正義隊にどかされたので、復讐に来た)が、こんなことを!

ゴロゴロ。

そりゃ撃つしかないぜスージー!

しかし。

!?

止めた!!

そんな!!

これはもう完全に、「AB!」1話で銃弾を受け止め、椎名のクナイをはじき返した天使、それ以外の何者でもないですね。もはや彼は人間じゃない、天使レベルですね。正義隊の敵マジ天使!てか、止めた銃弾を「カタリ」と机に立てているのがそら恐ろしい。天使以上
ちなみに、この銃弾を机に置く場面描く妙な細かさって、ちょっと青木雄二っぽいセンス感じる。



また今回登場する強敵、自由老人団(もちろん先述の天使おばあちゃんも、その一員です。)のアジト内では、こんな描写がされています。

武器持ってる!

うーむ、銃器とそれを取り扱う人のギャップ、という描写は、SSSの戦闘そのものですね。ていうかベタですね。



ただ、『正義隊』を読み続けてきた身としてここで指摘しておかなければならないのは、これまで『正義隊』に登場した敵たちとは、もっぱら特殊な能力やひたすらな肉体の強靭さを武器としていた、ということです。それは主人公である、正義隊メンバーも同様でした。

こういう戦闘描写を主としてきたんですね。

また、『正義隊』の劇中でしばしば登場する、こういう分節による“溜め”の描写は私、本気でカッコいいと思ってます。このフィジカルな凄味は、そうは見れない。
ある種、夏目房之介どおくまんを評して言った「この人、ケンカの躍動感描かせると抜群にうまい」に通じるのかもしれません。ソウル的に



で、話は戻りますが、自由老人団は銃火器を用いるわけです。この設定、あまりよくなかったんじゃないかなぁ。正直3巻のクライマックスには、2巻までと違ってあまりカタルシス感じられなかったんですよね、私。
戦闘もこんななっちゃってるし。

正味、先にあげた飛び蹴りやゴロゴロの方が、何倍も迫力あると思うんだ。やはり、この作風で描かれるべきは肉体、生身のぶつかり合いなんですよ。
「AB!」でも、2話のトラップ死のギャグは笑えましたが、8話での眼前の相手に刺されるというギャグは痛々しくて、微妙に笑えなかったもんなー。てアラ、ギャグとシリアス、「AB!」と『正義隊』で期せずして逆転してるわ価値が。


  • あのシーンも!

さて皆様、お待たせいたしました。何も待ってませんかそうですか。ともかく「AB!」と『正義隊』、印象がダブったとまで言うからには、もちろんあの場面も存在しております。

ライヴシーンだ!

唄ってます。

邪魔が入ります。

なんだか「AB!」における岩沢の消失を彷彿とさせないこともないような気がしないでもない場面です。言ってみただけです。倒れて、ギター落としただけです。あと「タクシー運転手」というのはキャラ名です(本名不明)。


  • ギャグ?

あとですね、3巻終盤ではストイックさが売りのこの作品にしては珍しく、あからさまなギャグが登場します。

わたしは美輪子です!!

あなたが微笑みかければ 世界もあなたに微笑みかえす!!

…うーん。真面目にやってるからおもしろいんであって、ギャグをやってしまってはなぁ。先述の銃火器の登場も含め、福本伸行の『カイジ』みたく、いい加減変質してきたのかなー、とも。(『正義隊』連載開始は2002年。)
そりゃ自由老人団だって怒るぜ。

何言ってやがる バカめが!!

という、本記事のシメにふさわしい台詞を引用して、おしまいです。とっぴんぱらりのぷう。



※なお、ここで紹介した場面はまだまだ序の口です。『正義隊』にはさらにとてつもない“絵”がまだまだあります。正義隊メンバー・カルロスの登場、新隊員の唯一の活躍、 美輪子の受難等、すごいマンガ体験を味わいたい方は、ぜひご一読を。

*1:名前だけは名乗る

*2:いずれもマンガ評論番組「BSマンガ夜話」にて出た発言。

*3:だから内田樹のブログ、ブックマークしてるんですよ俺。

*4:3巻目にして、初めて一つだけそれらしき演出を見たので、“ほとんど”ということにしておく(カルロスのあれ)。

*5:なお、この時追跡していた敵は結局取り逃がします

*6:一人は面接中に駆り出された、先述の入隊希望者。その後いつの間にか、なし崩し的に入隊してました。

*7:という呼び方で正しいのか不明だが、作中ではそう記されている。

*8:お爺さんがハァハァ言いながらレバー(?)振ってます。