週刊少年チャンピオン2018年53号

  • 『バキ』新装版の最終巻表紙、梢江なのかよ…。一番活躍したシリーズではあろうが。結局『刃牙道』には出てないよね?





板垣恵介『バキ道』/最大トーナメント編でも力士の指の強さは言われてた(本部敗北)が、背筋つかみとはまた強烈な。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/おお、国松とバトルか。アニメ直近の千葉繁補正入ってるとはいえ、これは嬉しい展開。作者は『疵面』までは読んでいないのでは?あるいは読んだ上での意趣返しなのか?というのはともかく。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/センターカラー。トレーニング中の談笑、帰りにファミレスと青春だな。氷浦の背景が語られるか。画面構成の技術で場面を作る、という内容でもあり。

→例:追い抜く側・追い抜かれる側を、読者の視界においていかなる構図・順序で読ませるか。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/↑とも重なる話だが、アクションを見映えさせる構成は、作者にロングショット使いこなせる技量あってこそなんだよな。この世界においてパロディキャラ(大福星子)の方は偶像化、イコール全盛期の姿ということではある。

板垣巴留BEASTARS』/魚人も存在するのか。というか、まんま魚だな。言語の差で表現するあたり外国人的な概念になるのかね。生態上の未発達種族ととれなくもないが。
人は海辺で進化した―人類進化の新理論
桜井のりお『ロロッロ!』/友情だ…。それでも信じてはもらえない。

桜井のりお『僕の心のヤバいやつ』/出張掲載番外編。↑が中二病ネタなのはこれつながりか。こっちも友情だか青春だかをテンポよく。

●ニャロメロン『ベルリンは鐘 ヤッホー!』/昔はTVでもドミノ特番とかやってたけどねえ。このスラップスティックとしての連鎖反応を概念のそれとして見せるというやつ、うん。

●中村勇志『六道の悪女たち』/満を持してチャイナドレス姿のヒロイン1ページ大で登場!どういう御膳立てだ。

平川哲弘『ヒマワリ』/まあコイツが加入するのはいいとして、リーゼントやめたらますますキャラの見分けつかなくなりそうな。

●灰谷音屋『ジュニオール』/センターカラー。開放。何より個人として同じ気持ちである、という意味での同志ね。

荒達哉『ハリガネサービスACE』/なんか刃牙と弱ペダのノリまざってる感。

西修『魔入りました!入間くん』/とりあえず、チート展開でのらりくらりやってきた作品が今さら主人公に弱者ぶりっこさせた所でさあ…。

佐藤健太郎魔法少女サイト』/イカれまくってるとはいえ、↑の場当たり的な展開と後付け設定の山に比べれば、まだこっちの世界法則と行動原理の方に分がある。もとい、作者が自覚的に物語構成できてはいる。移動能力便利すぎ。

●瀬口忍『ボスレノマ~「囚人リク」外伝~』/月による演出、こいつの心象風景ではこう使われるのね。谷村は番外編にてこんな株の下げ方されるとは。

●水森崇史『マウンドの太陽』/慌ただしい展開も仕方ないんだろうけどさ。こういう内容になるってことは、本当に野球しか描けないのかってのがさ。

●大江しんいちろう『今日こそデスゲーム』/読み切り。この手のシチュエーションギャグ、ストーリーギャグタイプの作品が、連載により長期化したらキャラ押しものになってしまう(そしてその方が人気とれる)のがおじさんはつらくてねえ。まあ、好きなタイプのギャグです。


  • レジェンド作品は『ゆうひが丘の総理大臣』『シュガーレス』。
  • 次号より、『足芸少女こむらさん』連載化。

  • 別冊チャンピオンは『レイリ』完結、福地カミオが読み切り掲載か。

稲山覚也『アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover』

http://genbara-k.hatenablog.jp/entry/2018/08/01/231538
かつて、物語として拙いのれない部分あるの認めつつ、絵なり構図なり構成なりでの巧さと挑戦は見せられ続けたわけですよ、読者として。テンプレとサンプリングの小器用さで展開だけは回してみせる芸風と違って、自分なりの作品を表現を描く見せる意志のぞく点が、俺には読者として好ましかったわけですよ。その姿勢がちゃんと才能としての着地を見せた、稲山覚也の最新作はおもしろい。
アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover 3 (電撃コミックスNEXT)アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover 3 (電撃コミックスNEXT)

というわけで、稲山覚也の構成力はよいなあ、と宣伝画像で思わされた一件。








①モブ(観客)→主役(壇上)、読者と作中キャラの視線移動方向の同期、高位置→低位置、アイドル→観客席→セリフ
②セリフの分節、上段キャラの背面→下段キャラの背面(反発)、読者と作中キャラの視線移動方向の同期
③セリフと表情の同調
④前コマからの拡大
⑤高位置→低位置、読者と作中キャラの視線移動方向の同期
⑥セリフと表情の同調、上段からの反転(背中→顔)
⑦セリフと表情(反応)、アイドルと観客の正面顔(対面)、上段からの反転(表情の変化)
それら絵としての演出を読者の視界内でスムーズに認識させるべく、上手く構成がなされている。





また、この場面を試し読みにて見開き単位で見たところ。
「アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover」立ち読み



この場面では一貫して、ステージ上の発話者は上方向に視線を向け、観客席からそれを見る側は下方向に視線を向けている。(中継で見ている側の視線は横方向、かつ右ページ最下段のコマであることで、左ページへのスムーズな接続になる。)それが見開きの最後のコマにおいて、話者が異なる感情を見せると同時に、互いに正面からのショットで“向き合う”(=それぞれの視線が反転する)こととなる。上手い演出である。





読ませるマンガ、であることは、例えばこういう技巧により成立しうるわけだ。
(了)

週刊少年チャンピオン2018年52号

安部真弘『あつまれ!ふしぎ研究部』/巻頭カラーで人気投票結果発表。でもこいつら全員中身は同じでしょ?(真顔)あと、こういう時に作者の獲得票数公開されるのって、もうちょっと票集めてこそじゃね?(5票でブービー。)コメント掲載等はなし。/本編、縄跳びの縄をこんな渡し方するわけねえだろ&大祐の持ち方ありえねえだろ&形状記憶素材かなんかですか?(こええよもう。)

板垣巴留BEASTARS』/尻尾も武器になる。『真・異種格闘大戦』のセイウチみたく、巨大チンコで戦う種もいるのかな(ロマン)。祖父としてある時の方がいい顔、というのが何より真理であろう。レゴシは一歩目からまあ見事なつまずきで。

渡辺航弱虫ペダル』/回想でも登場して役に立てれば先輩として御の字…というのはハードル低すぎるか。

佐藤健太郎魔法少女サイト』/チャンピオン掲載分から読んでると、この死は笑わせにきてるとしか見えんのだが。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/ウンコも遊具になる(ならない)。くだらなさの段階ふんだバリエーションよ。視界から消えたらコマの外(上方)にいた、と視線の下への移動で見せる構成がおもしろい。

●盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ』/『将太の寿司』バズったの見て描いたのかな。

西修『魔入りました!入間くん』/おお、これは想定外の奇襲、とちょっと感心した。で、いやいや、少し前に別能力として「翻訳」出してきて、魔獣の言葉を解するのは特殊能力=本来は魔獣に言葉通じない、言葉通じる能力により別種でも「統率」が可能、とやってたのにその辺の能書きもうチャラかよ、と思い直した。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/マスター国松、アニメだとチョー(訂正:千葉繁。なんで間違えたんだ。)の声演がドはまりなんだけども、この作者もノリノリでセリフ書いている印象。

●中村勇志『六道の悪女たち』/大仏にメイク…スペックが自由の女神割ったようなもんか。

桜井のりお『ロロッロ!』/ホモを感じ取るのが第一な読者もいれば、劣った絵にこそ萌える読者もいるし、視線誘導の構成技術に発情する読者もいる、それらすべて性癖なのです。

●瀬口忍『ボスレノマ~「囚人リク」外伝~』/大ゴマと表情の変化で、相手が焦燥をつのらせてゆく=内面もれ出させる様子をじっくり見せて、ラスト前の見開きで主人公の居姿登場と。ようやく同じ土俵に立てたか。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/南雲~。こちらも表情と構成で、内面の変化を読ませるのが上手い。ラスト前のページで一人異なる角度を向いている、その内実。作者ツイッターによると今回までが1巻収録だそうだが、1話とのその差異。
第6話 第1話
→「たった3年間」と「生徒たちに(…)教えられた」、これを両方言えるのが子供と向き合う大人の役割だよな。投げの動作を分節して、視線移動が縦方向になってから畳へ落とす描写に入るのが効果的。

(引用元:https://twitter.com/ipponagain/status/1065190552075874304)
●いづみかつき『鬼のようなラブコメ』/桃太郎アレルギー。昔話いろいろ持ち出せば弱点設定どんどん増やせるのでは。

●灰谷音屋『ジュニオール』/強者二人、メンタル強度の差でもあるわけか。杉浦の爆発が待たれる。内容に同調してか、絵柄も硬軟織り交ぜこなれてきた感。

碓井春佳『助けて!!除霊委員会』/読み切り。コメディ。

増田英二『週刊少年ハチ』/最終回。途中でも言ったけれども、この作者の本懐である“愚直”であることの美と、作品設定上の到達点として目指さねばならない大衆的・社会的な承認・肯定が、本来おはなしとしては噛み合わないんだよなあ。“無垢が強い”な少年マンガイズムが海外編突入して崩壊しちゃうようなもんで。最終的に友情・(作品の)多様性に帰結するのは作者の資質的には必然だけども、それは学園マンガの世界の中にしかないわけで。まあでも、作者が「楽しい漫画になればと思っています」とコメントして始めた前作がヒット、「この作品は挑戦だと思っています」とコメントして始めた本作がこの結果、というのは、もういろんな意味で仕方ないかな、と。ともあれ、お疲れ様でした。


  • レジェンド作品は『月とスッポン』『ななか6/17』。86年書影は『本気!』。ところで『本気!雑記』続編は…。

週刊少年チャンピオン2018年51号

板垣巴留BEASTARS』/ジジイかっけえ…。この祖父にしてこの孫ありでしたか。じいちゃんの理屈はもっともで、例えば、いわゆるトロフィーヒロイン描ける力量の作家がいないだけの誌面を、ジェンダー的に進んだ少年マンガ誌!と強弁するとかどんなギャグだよっつうね(何の話だ)。

桜井のりお『ロロッロ!』/めんどくさいオタクの自意識なあ。本屋で働きつつ二次創作しながら『重版出来!』に敵意燃やしてるのとか、私達が吸死をホモ消費するのは正義だが販売側がそういうプロモするのは許せん!なのとか、コミケ佐渡川準に土下座したのを武勇伝気取りで言ってるのとか?一般人をチンパンジーと聞き違えるのはわりと絶妙なネタでは。あと、ふしぎ研究部とギャルキャラの登場かぶってるけどこっちが上ですね(素)。

板垣恵介『バキ道』/解説役が光成と護衛だけでは荷が重そう。また休載か。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/天井貼りつき。強いのか、それ。

●中村勇志『六道の悪女たち』/見開きでひさびさにヒロイン登場、なんて絵面だ。梅澤春人の『BOY』も金属バット片手に熊またがってたけど、ある意味近い世界なのかもしれん。『ももえのひっぷ』最終巻みたいな単行本表紙きたりして。
ももえのひっぷ 4
●ニャロメロン『ベルリンは鐘 ヤッホー!』/一コマ、くり返し、メタ、とよいテンポで。

●瀬口忍『ボスレノマ~「囚人リク」外伝~』/結果で力量を示す、いい見開きだな。リクと出会った後だと、もう少し情け見せそうな気もするが。

平川哲弘『ヒマワリ』/作中最大級の急転からさてその後は、と思ったら時間とばすんかい。いやまあ、内面の葛藤とかちまちま描く作風じゃないからこれで正解かも知れんけどさ。作品支持層にとってはこれが、テンポいい!上手い!だったりするのかな。誰かわからないってギャグは、キャラの顔が似たようなのばかりだから、というメタネタだったりしないか。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/自然に乱取り出るのがこいつらならではの日常。割って入ろうとしてた早苗とかほめられてうかれる南雲とか、こういうのぞかせ方が描写の妙よ。

●盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ』/前回からの落差で思うに、ナギリが割と人の役に立ててるのは能力の単純さ故でもあるよな。あと、考えてみたら『団地ともお』作中作「スポーツ大佐」の作り手の存在を一切匂わせない構成すげえ特異だよな、と思った。

●灰谷音屋『ジュニオール』/超技能なれど不慣れな二人で、物語としての展開も作るわけか。対する“自由”の発揮しどころか。/あと、1巻読み返して設定忘れてたのに気づく。以前書いた初戦云々の感想はこっちの勘違いです、すいません。

増田英二『週刊少年ハチ』/そういう結果かあ。まあ賞とるにせよ編集つくにせよ、掲載されない内は始まってもいないとは言えるわけで。(コミックビームだって新人賞あたえるだけなら、石黒正数とか三島衛里子とかいてですね…。)柴田ヨクサルの場合は、編集から新人賞もらうか即連載するか選ぶよう言われて、即断で『谷仮面』始めたそうだが。次回最終回。もうちょっと尺あったら落選展開もあったかな、と思わんでもない。


  • レジェンド作品は『エコエコアザラク』『学校怪談』。後者の紹介文は、もうちょっとこう、作者について触れるとかさあ。
  • 85年チャンピオン書影は『Let'sダチ公』。現コミックビーム編集総長・奥村氏の初担当作品、だったはず。
  • 編集後記、10年ぶりに頭金髪にして娘が口きいてくれなくなった来年40の編集者って…。

月刊コミックビーム2018年12月号

  • 『生理ちゃん』のポップ(?)な表紙めくると、とじ込み付録の生理ちゃんステッカーと、表2のホラー映画『来る』広告並んでる絵面がなんというかだな。


    

  • 付録により今号は80円値上げ。本当、ビームといえど昔は余裕あったんだな…。



●小山健『生理ちゃん』/新連載。生理のキャラクター化。のっけから苦い、無理解であることのつらさ。意外と、と言っては失礼だが、この手の叙情を上手く見せてくる作家性なんだよな。

いましろたかし『未来人サイジョー』/かつてのモラトリアムも今や搾取される側というかね。主題となるタイムスリップのきっかけが嫌すぎる。

●作:狩撫麻礼、画:いましろたかし『平成地獄ブラザーズ ハード・コア』/第1話特別再録。落下の夢からの幕開け。雰囲気から連想したのだが、掲載時期的にも『宮本から君へ』と重なるんだよな。

松田洋子『父のなくしもの』/新連載。その人の死を描いた読み切りから、こういう物語に続くのか。松田節がエッセイにおいてもより重く切なく。

三宅乱丈イムリ』/細緻な内面描写の回が続いたが、今回は設定にまつわる内容。ラルドの意志はこのような形で継がれるか。イムリ達のこの光景も、出てきたの1巻以来になるのでは。壮大な円環の落着に感嘆。

●田辺剛(原作:H.P.ラヴクラフト)『時を超える影』/出現。次回最終回。

●伊図透『銃座のウルナ』/修羅の姿ながら、描写に矛盾が見られるあたり幻想なのかな。背景からするに前回の終盤から。

三家本礼『血まみれスケバンチェーンソーreflesh』/特攻開始、にしてもどういう絵面だ。『土竜の唄』の獅子舞バイクにも近いものを感じる。

桜玉吉『財布がぼろい』/確かに物との縁を感じる瞬間というのはあるよね。

丸尾末広トミノの地獄』/大見得切って決着ッッ、という感じだが。次回最終回。

●原百合子『繭、纏う』/断絶を示す笑顔がつらい。前回で“誰か”のものだからこそ願いの象徴とされた制服が、ここでは明確な相手がいるからこそ束縛としてあると。今、繭を纏っているのは彼女の方であり。

新井英樹『KISS 狂人、空を飛ぶ』/ただただ地獄の日々。悪意や悪ふざけとしての描写の内は、まだ作為、メタとして読めてたわけだよな。

●谷口菜津子『彼氏と彼女の明るい未来』/この追い詰められ方はアカンわ…。

羽生生純(原案:片桐健滋・梅本竜矢)『ルームロンダリング』/最終回。おっと、シリアスな危機感出しておいてそっちに落としたか。ハッピーエンドである。縦長コマ連続による、スピード感と異なる構図の接続が秀逸。作者の旧作を知っているからこそ翻弄された感はあるが、楽しめた。お疲れ様でした。

上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/小学館学年誌の70年代投稿コーナーのパロディ。これが意外なくらいに「わかるか!」とはならないというか、自分が読んでた80年代の学年誌にも残ってたんだよな、このノリ。プレゼント品集め行脚とか(笑)。ただ作者の回想とは逆に、私の場合は5年の時に学年誌から学研の「科学」へ移行しており。/中身は前半が夜千的にもなつかしいノリのルポネタ。後半は漫画家や編集によるネタを受けての投稿コーナー体裁。さらに読者からも同様のネタを募集。このアドリブというか生の筆致の面白みは、やはり愛だね。/あと、この企画に関してか、巻末コメントで西尾雄太がビームにおける懐かしの読者コーナーネタを。はわわモリオカは現在ハルタ誌で福島聡を担当中です。