月刊コミックビーム2015年5月号

  • 表紙は逆流主婦ワイフ、エグい。付録は春山町サーバンツクリアファイル、かわいい。

●サキ・二宮亜子『クローヴィスのクロニクル』/新連載。これもまた古典文学のマンガ化ではある。人間模様のおもしろさの中でこそのキャラ立ち。
イシデ電『逆流主婦ワイフ』/ダメでありたくないのに、というエレジー。いい話なのだけれども、これまでに描かれてきた今回の脇役達の闇を読者は知っている。それらも今回の“美談”も同じ地平で並ぶ、その構造自体もまた、おはなしでありまして。
おおひなたごう目玉焼きの黄身 いつつぶす?』/剥がし魔。一人で食べる時と人前で食べる時、とやっぱりコミュニケーションの話なんだよな、ギャグとはいえラブストーリーだし。食べ方を遊ぶのも私情の領域であり。
やまじえびね『レッド・シンブル』/小玉ユキもだけど、黒ベタの瞳の見せる内面ってのはあるね。
●うすね正俊『砂ぼうず』/オーラ。小砂も砂ぼうず化しつつあるってことか。
●横山旬『変身!』/若人の抱える鬱屈。オチのずらしっぷりがよい。
朝倉世界一『春山町サーバンツ』/狸と地蔵。ああ、年齢的にこの狸はもののけか、て普通の動物なわけないか。そんな設定ツッコミ(?)入った所で、次回最終回。
カネコアツシ『デスコ』/吹き出し入りオノマトペ(描き文字)の、アクションシーンでの見せ方の巧さよカッコよさよ。
山田参助あれよ星屑』/死んでも別れても、残るのは気持ちの部分。
須藤真澄『庭先塩梅』/幻灯機シリーズ。こちらも記憶の話で、でもみんなといるからこその。
松田洋子『私を連れて逃げて、お願い。』/星の王子様パロディの扉絵。追われ、帰る場所も失い、先行きも不明な中、寄り添う二人。
三家本礼『血まみれスケバン・チェーンソー』/次回より刑務所編…。元々1クラス分がゾンビ化って話だったのに、何人いるんだ今。
森泉岳土『ハルはめぐりて』/シリーズ読み切り。この画風で描けるものがどんどん増えてるな、今回は風景描写メインだし。上手くなっていく作家は見ていて楽しい。
上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/(マンガ作品をパロディ)落語(にして演じている様を描写する)マンガ第2弾、寄生獣(子ほめ)。こう描いてネタとして成立させる、というのがパロディの本分、批評性。表情の演じ分け(描写)といい、笑わせほろりとさせる噺の内容といい、完成度すばらしい。
河井克夫・原百合子『米の回路』/シリーズ読み切り。舞台劇のような運命、そんなものが垣間見えることもあろう。
唐沢なをき『まんが家総進撃』/なんにせよ家族ネタは重い…。
●おくやまゆか『しりこだまラプソディ』/読み切り。幽霊もといおばけ、かわいい。絵本的なノリでユーモラス、楽しい。
山川直人『小さな喫茶店』/喫茶店でトイレ借りてヒロインウェイトレスと出会う、という展開にかがみふみをの『きみといると』連想するのは仕方なかろう。お婆さん店主は小粋だな。
●肉柱ミゲル『喫茶ニューポプリ』/読み切り。私が誌面で見たことないってことは、十数年以上ぶりに載ったわけだな。(作品自体はアンソロジーで読んだ。)ドライな不条理だがノリは日常モノ、か?
●市川ラク『白い街の夜たち』/えー。その場所が失われ、次回最終回。
羽生生純『ジュウマン』/分裂、というより孤立だな。鉄の折れなさが能天気ゆえならば、“シリアス”にミッション抱えてるのは阿枯側なのだろうけど、さて。
古泉智浩『悪魔を憐れむ唄』/最終回。叙述トリック(?)、そして決別。情けなくとも応用できる人生抱えた生身と、つながり持てない超存在の間の溝で、だから「憐れむ唄」か。おもしろかった、お疲れさまでした。しかしクレジットは「未完」と。


  • 竹本泉画集刊行、コラム「コマンタレビーマー」書籍化の告知あり。