コミックビームの今年1年をふり返る

当ブログで定期感想を書いている、「月刊コミックビーム」誌の2014年をふり返りたいと思います。
当ブログの感想記事は掲載作品のうち、私があえて言祝ぎたいと思ったものについてのみ言及する、批判しか浮かばない作品については基本スルー、という体裁をとっております。つまり言及回数が多い作品こそ、私の評価は高いわけです。
以下、2014年に出た全12号(2014年2月号〜2015年1月号)に掲載された連載作品を、感想記事中で言及回数の少ないものから順に並べ、感想を述べております。基準となるそもそもの掲載回数自体、時期により異なるわけですが、その辺はご愛嬌。





言及回数1回

死者の書』は連載1回目ながら重みある、強い。『とりあえず、畑で暮らしてみる。』はエコ&ロハスという題材が個人的にピンとこないんだが、この体験解説マンガとしての細やかさは確実に読者獲得するかと。
『黒い川』はライブ感あふるる執筆体制とった結果、3.11のビビッドな影響で迷走だか狂奔だかえらいことに。体感としてはおもしろかったけど、単行本はどうするんでしょ。いしかわじゅんひさびさのマンガ誌連載作品、『吉祥寺キャットウォーク』も浮遊感あふれる人生模様がよかったけれど最終巻出てないぞ、おい。でもいしかわ&ビームだ、いつかは出そうな・・・。



2回

陳腐な言い方になってしまうけれども、完結した『五色の舟』『ラチェット・シティ』『赤パン先生!』どれもいい作品でした。で、三作品ともノリがまったく違ってそれぞれにキワキワの所攻めている点が、読もうコミックビーム!なのです。幻想も、暴力も、童心も、我々読者をその世界に入れ込ませつつ、疾走の終わりまで見せてくれた。
『春山町サーバンツ』『悪魔を憐れむ唄』も言及少ないけどつまらないわけじゃないのよ、というか他が濃すぎるのよ。この2作はひょうひょうとしたたたずまいだからこそ、描けるメルヘンとリアル、語れるドラマなわけです。『小さな喫茶店』も人格あって楽しみ。


3回

『夜よる傍に』は作者の絵の表現技法が、おそらく唯一無二。決め絵がすごかった。『変身!』は作者の初連載。ちょっと乗れないノリもあるけど、絵の巧さでホラ語れるのがよい。
トミノの地獄』『ワルキューレ』『永遠のケツ』は重い。読んでてちょっと言葉選んでしまう、と言ったらどの作品だってある程度そうだけど。道行きのスリリングさ、てのはあるなあ、作品として。



4回

隔月連載2作品がここに。ともに、追いつめられた者のレジスタンスの光景ではある。



6回

竹本泉作品、以上。(わかりやすい!)わりと今作品では萌え要素見ること多かったかな、と思ったが、考えたらいつも見てるな!



7回

一話完結連載『逆流主婦ワイフ』は、毎回アイディアと構成が光っていて楽しい。期待株である。『私を連れて逃げて、お願い。』は前作『ママゴト』から一転ダーティーながらも、その内実おはなしとして描くことでキャラクターとしては折れない、となりそうな。まだ先行き不明、て『ママゴト』の時もみんなそう思ってたよね、それまでの作風あるし。『鼠、』は赤川原作・時代劇設定に、鈴木マサカズの作風がマッチしていてよい。ドライ&ウェットの話法といいましょうか。



8回

『わがままちえちゃん』はミスリードかあやふや持ち味かわかんなくて翻弄されてんなあ。『デスコ』は近作から一転、割り切ったエンタメアクション見せてきて、ちょっと驚いた。カッコいいし、楽しい。『血まみれスケバン・チェーンソー』はある意味男塾の領域に入ってきた感。



9回

目玉焼きの黄身 いつつぶす?』は今年アニメ化!余計に盛らない原作どおりの雰囲気とか、実写パートのピタゴラスイッチぽさとか、NHKで正解だったなと。エンディング歌うの作者本人だし。作品自体はひとつ山場こえて、さてどうする。
『白い街の夜たち』はこの雑誌にしては異色な題材だけども、描写の巧さと深みでビーム作品として読ませる。ananやBAILAという女性誌にも書評掲載されたそうで、そういう読者も獲得しえてるのはいいことだ。表紙飾った時も異色かつ美しくてよかった。(森薫入江亜季を思い出した、とも言える。)
『まんが家総進撃』には相変わらずひきつり笑い。今年新装版の出た『漫画家超残酷物語』は同じ路線なのに微妙にウェットで、なんかくやしい。



10回

ウエケン、ますび姫はまあそうだろうな、というショートの名手ぶり健在。(これだけ長年にわたって!)『夜は千の眼を持つ』は11月号の落語ネタがすばらしかった。『庭先塩梅』は今年「グッデイ」シリーズメインでしたが、やはりよかった。しばしば表現技術の面からも語りたくなる、『浦安鉄筋家族』みたく。(あえて並べる。)『あれよ星屑』は今年評判よかったのも納得。戦後に生きる敗者、生きれば光も闇もある。
『ジュウマン』は、俺の求めていたハニュニュウが帰ってきた!という作品で毎号大喜び中。巨大化ヒーロー戦隊VS災害としてのよくわからない敵、てな骨格に世俗と業という人間味たっぷりまぶした、趣味性時代性にガチンコ仕掛ける「物語」となっております。



11回

気になる作品、ではあるからなあ。情報解説マンガとしての魅力はもちろん大きいけど、人の立場の内面映す、未来の希望を志向して創造する、その物語りっぷりが強いんですわ、やはり。
あと今月号の感想で書き忘れてたんですけど、あれモデル山本直樹ですかね?



12回

全話言及、必然。12月には連載100話目を迎えた骨太・濃厚なファンタジーサーガ。今年も一年通して興奮と衝撃のつるべ打ちでした。単行本新刊買うたびに「今一番おもしろいマンガこれじゃね?」と思う作品、の内の一つです。
イムリ 16 (ビームコミックス)


読み切り
新連載攻勢のぶん、今年は読み切り少なかったような。
筆頭にあげるなら、シリーズ読み切りとして開始したカリブSONG・田辺剛『サウダージ(6月号より掲載開始)か。狩撫麻礼の苦味ある原作、田辺剛の魅力ある絵、ともに楽しんでおります。作品の方向性としては、たなか亜希夫作画の『リバースエッジ 大川端探偵社』に近いんだけれども、こちらは原案あり、舞台を中世西洋としたことで、民話的な内圧が高まっている。
おくやまゆか『オスカーは毛並みのいい馬』(5月号掲載)『OVERFLOW』(7月号掲載)も、かわいらしくも切ない、すてきな作品でした。


以上。