ハルタ 2019-JULY volume 66

※先月号です。



福島聡『カバー・ストーリー』/ラスト1ページ大ゴマのガジェット集積かつ抑制ぶり。こういうのが上手いマンガ家の絵の密度と提示までの構成よ。

大武政夫ヒナまつり』/未来改変云々の展開になってから、未来へ帰還する線は完全に消えてるよな。元からなかったか。

長崎ライチ紙一重りんちゃん』/新連載。四コマギャグ、子供目線。そうそう、このセンス、と思うと同時に、やっぱり前連載終盤はきつかったのかなあ、とも。

西公平『九国のジュウシ』/新連載。山田芳裕を彷彿とさせる戦国スラップスティック、と思ってたら何その理由付け。

佐野菜見『ミギとダリ』/洗脳されたフリ。誌面で直前に載っている新体操マンガが構成力不足なもので、動きとその主体の内面とそれへの反応、というシーンをギャグタッチとはいえしっかり読ませる今回のクライマックスが、より引き立つという。

佐々大河『ふしぎの国のバード』/本邦乙嫁語り、いやいや。

森薫乙嫁語り』/嫁同士ではあってもキャラクターとしては異質である、という点には作者も自覚的で、それを共存させるためのメタエフェクトでもあるよな。

●大窪晶与『ヴラド・ドラクラ』/感想書くの遅らせてたらアニメの方のヴィンランド・サガと船の山越えかぶっちゃったよ。まあこっちは遠景一コマでナレーション処理なのだが。

九井諒子ダンジョン飯』/パーティー内人間模様チルチャック編。概説なり図示なりを物語の層として描写する構成力がキレキレである。惚れた腫れたと無縁の面子ってのは確かにね。まあダンジョン探索RPG×恋愛要素で頭に浮かぶの、主としてエロゲーだけど俺。
/魔物=食材の捕獲から描く展開はひさしぶりか。“設定”によるコメディ調で引き寄せ純粋アクションで仕留める。この辺の読ませ方・分節の巧さが、“解説”の描写力にも通ずる。結びとしては、種族による年齢の概念の差というオチに。(SFチック!)マルシルはいまだ恋に恋する乙女、てことだよな。

●鶴淵けんじ『太陽をおみやげに』/読み切り。あらためてアニミズムとキャラ化の別次元感というかなあ…。

●宮永麻也『ニコラのおゆるり魔界紀行』/占い師に変装して知人をはげます展開といえば、はだしのゲン

樫木祐人ハクメイとミコチ』/追跡行。自然の中を行く展開や道具の背景譚もひさびさに見た気がする。個人的にはこういうテイストの回が好み。

→自然物背景から、めくって右ページ1コマ目で空中へ、コマ進行と共に描写の体重移動の方向も左、左下、下へ、という構成がいい。

近藤聡乃『A子さんの恋人』/SNSやってると、「しんどい」という語義自体だいぶぐじゃぐじゃ、というのはあるんだが。自分だけがしんどいわけじゃない、という慰め。あいこのあの回想がきっかけだった、というのは割と衝撃である。/チクタクバンバンは昔実家にあったが、まともに遊べた試しがない。

●空木哲生『山を渡る─三多摩大岳部録─』/同調行動は命取り、喧嘩稼業でも描かれてた(おい)。自分の山、という表現がいいね。試行・足慣らしの場としての向き合い包まれるべき自然、ホームと呼べる場所。

●設楽清人『忍ぶな!チヨちゃん』/そっちの道を選んじゃうかー。その切り換えもまた忍びらしさかもしれんが。

福島聡『バララッシュ』/蓄積と模倣という形の才能なればこそ、凡人として凡人の先達にもなれると。宇部が三沢の助けになれなかった事との対比でもあるよな。受け継がれる帽子といえば、ONE PIECE

山本ルンルン『サーカスの娘オルガ』/最終回。こういう幕引きか。あらためて“夢”である、その中に生きる身であることを示して終わる。そのハッピーエンド・ショーマストゴーオンは希望か宿命か、キャラクターと時代背景を思えば因果の物語でもまたあって、それが人生、か。面白かった。お疲れ様でした。

週刊少年チャンピオン2019年38号

  • 表2が単行本、表3が秋田書店グッズの広告か…。



板垣巴留BEASTARS』/友情の勝利。これはこれで陸上生物における血統主義と相似形な気はするが。ヤクザの方も義理堅いもんだ。

渡辺航弱虫ペダル』/費用の問題はなあ…。オタク趣味のこともあるし。

●実樹ぶきみ『SHY』/ハートキャッチプリキュア!メソッドか。

高橋ヒロシ、鈴木リュータ『WORST外伝 グリコ』/どういう扉絵だ。この辺のノリは本家との差だなあ。

●暦『娑婆王』/作戦の勝利というよりは企画がザルだったような。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/同じ高校生女子。そうはいかない、という前フリのようだが。みんなでソシャゲする想像図に弱ペダ味を感じる。

板垣恵介『バキ道』/主要キャラが超人になり過ぎちゃって本来の他流試合の醍醐味をこのレベルでしか描けない、というのはあろうが、まあかませ感は否めず。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/この辺の格闘&狂気の描写はいかにも夢枕風。

●触媒ヒロオミ『どらコン!』/安産祈願の動物といえば犬だろ、と思ってたが最近はカエルもそういう扱いなのか。なんか語呂メインの潮流っぽいが。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/1ページのプール描写が構成とトーン相まってなんだか印象的。

●中村勇志『六道の悪女たち』/盲従でなくケンカップルな一幕、とこれは関係の深化?

●盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ』/『鬱ごはん』はまだ希望のある話だったんだな。寿司の並ぶコマの絵と字がラフ過ぎて最初読めなかった。あと「フンコロガシがウンコしか食えない」に対して「コアラとユーカリに例えろ」と返すのは、幼少時のコアラは母親のフンを食べるという点まで込みでのギャグなのだろうか。

桜井のりお『ロロッロ!』/四肢断裂!分裂するのはイチカより機能面で単純、という一貫性ではあるのかな。もとより移植されたゴースト(?)だし。

●灰刃ねむみ『足芸少女こむらさん』/能力はよくわからんが割烹着ヒロインな母親キャラ。

田畑由秋余湖裕輝アクメツ』/リバイバル掲載。あらためて見ても、当時のメディア環境下ゆえに成立した作品、という印象は受けるな。/インタビュー、スナック紅の思い出がひどい。

石黒正数木曜日のフルット』/ネコババアロボット、あらためネコ型ロボ娘登場。人間視点だとどういう状態なんだこれ。


  • 投稿コーナーは消えたままなのか…。

コミックビーム2019年8月号

※先月号です。


  • 『生理ちゃん』映画化アピール表紙をめくると、表2の『天気の子』広告(※発売時は公開前)と『生理ちゃん』巻頭カラーでのラブホテル描写が並んでるという。


   

  • 裏表紙は『生理ちゃん』限定版広告。前号までの3号連続ギャルゲー広告からの。





●小山健『生理ちゃん』/モデルと不倫と生理。生身と日常はどこなのか、という。この暴走と虚脱の緩急よ。

●伊図透『全速力の。』/動作をモンタージュ的に並べる投球フォームの見開きが面白い。バッターとしてそれと向き合った際は、流線やコマ構成で表現されるただならぬ感もふくめ。1話で濃厚だった天才の孤独については、早々に現れるのね。

三家本礼『血まみれスケバンチェーンソーreflesh』/仲間を危険に巻き込みたくない主人公とそんなことは察していた仲間達。ベタだ、だがそれがいい。忍者はどうなの、しかし。

桜玉吉『同期の桜』/本当、山の中に住んでると植物の手強さったらないのよ。自然現象に挑発されている感、わかるわ。『嗚呼!!花の応援団』のセリフは団旗ネタかな。

近藤ようこ(原作:澁澤龍彦)『高丘親王航海記』/今時分だとパラレルとか世界改変みたいな言い方になる展開か。あくまでひょうひょうと描かれるのがよい。

●原百合子『繭、纏う』/そして第1話へ。想いをはせる二人とは異なり、主人公は渦中の人と出会ってないゼロ座標でもあるのよな。しかし当初は単巻で完結する予定だったらしいが、どうまとめるつもりだったんだろう。

西尾雄太『水野と茶山』/↑と並べて掲載されると同じ百合くくりでも落差が。ロミオとジュリエット

●田辺剛(原作:H.P.ラヴクラフト)『クトゥルフの呼び声』/シリーズ読者としては、怪物でなく人間の集団ゆえに怖い描写というね。差別問題的にもデリケートではあるんだが。

●二星まゆ(原作:宮沢賢治)『ひかりの素足』/絶望と……。

●倖田青空『飼い主のススメ』/シリーズ読み切り。犬を飼う。この絵柄での動物表現はメルヘン入ってるな。

羽生生純『この物語でネコに危害はいっさい加えておりません。』/↑と並べてこれ掲載するの、悪意ない?去勢が性格にも影響してるわけか。メスの爪。

いましろたかし『未来人サイジョー』/あっさり成功。編集者とのめぐり会わせ、という話かもしれない。走り出したらもう止まれないんだよなあ。

●谷口菜津子『彼女と彼氏の明るい未来』/いちゃラブにもちゃんと針振れますけどね、というあたりなかなか意地の悪い作品でもある(ほめ言葉)。

三宅乱丈イムリ』/共存関係もまた境遇によっては存在してたわけだからなあ。血で割り切れない心という面は、タムニャドやニコの姿勢とも通ずるだろうし。和解の為の技術提供。イコルの物語も動き出すか。

●坂口心臓『新訳 桃太郎』/新鋭ギャグ読み切り1本目。昔話パロディながらともかくドライ。

●木戸朋生『13日間の森村』/新鋭ギャグ読み切り2本目。死亡ヒロインでラブコメ調。

●黒崎冬子『平成最後の赤ずきん』/新鋭ギャグ読み切り3本目。少女漫画ドタバタ路線風味。


  • 中野シズカのインタビューにて、「松ごっつ」の企画・お笑い共通一次試験の2回目で一位をとっていた、という衝撃の過去が明かされる。
  • 市橋俊介コラム、入院中。

ハルタ 2019-JUNE volume 65

※先々月号です。



丸山薫『図書室のキハラさん』/大きな図書館には古い資料用の殺菌装置もあるそうだが。投げっぱなし壮大オチは絵力あってこそ(連載スペース帯裏だけども)。

佐野菜見『ミギとダリ』/新たに犠牲者が。いや、ガチでサスペンス展開じゃないか。どうなるんだこれ。

なかま亜咲『鉄機のダン』/新連載。下ネタとロボ、相変わらずだ。

九井諒子ダンジョン飯』/扉絵、各々が抱擁する中でライオスお前…。

→毎度本編1ページ目の使い方が導入として上手いわけだが、今回はカブルーとミスルンのやりとりを二人の位置関係は一定のまま(かつ物語の進行方向に視線向けつつ)、アングルの微妙な変化によりメリハリをつけているわけである。
/巨大モンスター登場も、前回のキノコとはうって変わっての迫力。上段見開きコマ(上右左に断ち切り)内、右ページからノド左までに巨大破壊音オノマトペ、左ページにモンスターと破壊された壁。右ページ下段、各々の反応する表情を複数コマで。左ページ下段、下方向に断ち切りの大ゴマでモンスターの胸部より上。その間の表現からページめくると上段、右コマでコマ右方向に枠線からはみ出す巨大足、左コマ内で右上から左下への流線→巨大足、という攻撃描写。
/しかし、他人に意志を託すという情であり覚悟の展開がここで生まれるとは予想外だった。キャラとしての背景、それを包括した世界設定まで描かれてきたからこその帰結・カタルシス・お約束。
/そこから一転、主人公側のパートがノリはコミカル、ディティールとしては同等に濃いというのがまた物語として見事なのだけれども。通信方法は妖精。ミスルンにご飯云々のセリフ、カブルーの足のキノコは布石でしょうな。

入江亜季『北北西に曇と往け』/動物の描写が上手い。話は引き延ばし感ありありだが。

近藤聡乃『A子さんの恋人』/そこで憧れを捨てられないのは美大出身者という内面ぽいよな、とも。

→ノドをまたいで左ページ上段。電話しながら向きを変える、通話相手以外の人に話しかける、という吹き出しと動作の表現。

→めくって右ページ。LINEを打った側と読む側、という吹き出しと視界の表現。

樫木祐人ハクメイとミコチ』/虫キャラの感情描写。設定的にはだいぶツッコミ所だが、まあ溶け込んでいる。

●設楽清人『忍ぶな!チヨちゃん』/告白からこの扉絵への落差はひどい。色恋がバトルにどう出るやら。

森薫乙嫁語り』/お伊勢参り…とはだいぶ違うものか。未知の文化への反応もまた文化。

八十八良『不死の稜線』/ですよねー。

福島聡『バララッシュ』/達成と虚脱感からの導入、そして承認。クリエイターとしての“できるようになる”という感慨は、案外こういうものかも。回想内容はひどいというか、その動機を知っててビシバシ鍛えてくれた上司がえらいよ。
宇部の手叩き、真相、別の道へ。宇部にとっては「俺らの出した企画」で、すでに共同作品でもあったのだよな。実作者と監修者という意識の差でもあろうが。「感謝してるんだよ」のコマが、『ローカルワンダーランド』中にて初出のコマのアレンジというのが、局面としてはまた効いている。
/PIYOPIYOエプロン姿で最大級に物騒なセリフを吐く宮城さん、これが萌えってやつか。(そうかな?)

週刊少年チャンピオン2019年36+37号

●暦『娑婆王』/新連載。バイオレンス。初期衝動叩きつけられた迫力は感じる。

渡辺航弱虫ペダル』/頂点同士だったか。出会いは偶然?

●実樹ぶきみ『SHY』/先週終わった魔法少女サイトの方と、部分的に絵面と設定かぶるような。敵役はこれから出現し始める世界観か。

板垣巴留BEASTARS』/現実・生への実感を持たぬが故にモラルもない、というタイプの悪だよな。内面的にはリズとも彼岸の差というか。ヤクザこわい、てこのヒキで次号巻頭カラーとは。

細川雅巳『逃亡者エリオ』/逃げるんだよォ!なんかキャラ全員淡々としてる印象だが、美形設定のために表情くずせないってことかな。

●カワバタヨシヒロ『魔法少女フラグレス』/読み切り。魔法少女加齢問題というネタが、延々続いてる刃牙の代原として掲載される、先週魔法少女サイト終わったばかりである、作者はアニメ化あわせでブギーボップ旧作をコミカライズしている、といった脈絡あわせてギャグの強度増している。エロメインかと思ったら、ちゃんとネタの転がし方と読ませ方上手いじゃん、面白い。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/強豪。相手チームの見せ方、キャラづけも上手いもんだな。全国大会3戦目の相手ともなれば、こういうしっかりしたレベルの描写を気合い入れて出してくれていいと思うんだよ。(他作品を見やりながら。)

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/映画チャイルド・プレイのリメイクあわせでチャッキーならぬジャッキー人形ネタ。無機物&損壊ネタは楽しいわ、やっぱり。

桜井のりお『ロロッロ!』/水着回であるが、作者の描きたいのは運動少しとメインのちんこネタなんだなっていう。いや、女子の男体への興味(欲情でなくてな)をこうほのぼの描けるのは、それはそれで健全だと思うよ。前回に続き尿キャラかと思ったら実は友情だった、からのデンジャラス(エロじゃなくてな)オチ。

●中村勇志『六道の悪女たち』/こういう、“馬鹿ゆえに追える幻想”としての熱量は好きですね。師匠越えなるか。

西修『魔入りました!入間くん』/伝説のアイテムの手がかりとして歌聞かされたらその歌詞が暗喩やヒントといったレベルじゃなく目印と道順の直接的説明だった!て、このクソ展開はさすがにブラフだよね?

高橋ヒロシ、鈴木リュータ『WORST外伝 グリコ』/学校の外観、もはやどおくまん世界じゃね?

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/プロパフォーマーたる、底の見えないことの怖さなあ。

牛次郎、神矢みのる『プラレス3四郎』/リバイバル掲載。ヒロイン回というかリョナ回というか、人気で選んだらこれだったんだろうか。


  • レジェンド作品は『未来警察ウラシマン』『新 仮面の忍者 赤影』。コーナー最終回で浦安最初期の小鉄のイラスト載るのはなんか良い。
  • チャンピオン感謝祭レポ写真、正面から笑顔の面子の中、山口貴由だけちょっと視線そらしてる所がいい。巻末コメントでは板垣恵介もイベントに明るくふれてるが、原稿の方は落としちゃったんだよな。