- 作者: 田中ユタカ
- 出版社/メーカー: 蒼竜社
- 発売日: 2014/05/24
- メディア: コミック
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タイトル通り、なんだよなー本当に。短編集で、どの作品でも違う男女が出てきて、セックスして、愛を確かめ合う、ラブラブ。それらがちゃんとハッピーエンド、あたたかな光景、幸福な瞬間に至る、その鉄板なおはなしぶりにじんとくる。「好き」「愛してる」という言葉に泣けてくる。ぶっちゃけこれじゃあヌケないよ!(ごめんなさい。)
田中ユタカ作品では、近年『初愛』も巻を重ねています。『初愛』も『好きでいっぱい▽』と同様の構成をとったエロマンガであるけれど、あれはもう「愛」の描写を追求し続けて、えらい領域になってしまいました。男が死んだ恋人との逢瀬を回想する、という内容の話まである。それはもちろん田中ユタカの作家性、情熱ゆえで、ファンたる私が好きな一面では間違いなくあるのだけれど、でも!エロマンガは!甘いのが好きなんです僕は!ポプリクラブとか。(やめなさい。)
で実際、昔の田中ユタカ作品はその“甘さ”を描くことに情熱が注ぎ込まれていたのです。その心音と体熱をともなう幸福な光景の固まりが帰ってきたぞ!と私は本作を読んで思ったのでありました。喜びました。これもまた、田中ユタカの覚悟と共にある「甘さ」「幸福」なのです。
ちなみに、どちらも携帯コミックを初出とする『初愛』と『好きでいっぱい▽』の作風の違いについては、前者がコマ表示、後者がページビューであることの影響も大きい、と私は考える。個体に迫る、瞬間の絵としての激情と、ロングショット、流れる時間の描写としての幸福。