越智善彦『ドロイどん』77

●先々週号。




●はい。早い話、今回は冒頭の画面構成完璧じゃないか(俺には)、という話です。
●一段目、冒頭の四コマ。/まず1コマ目、読者の目にこの「キャー・・・・」という筆文字が、おどろおどろしい感じに描かれたオノマトペが入ってきます。このコマの右上の角のスペースいい感じに利用した文字配置。両脇にちょんちょん、とサインペンで線そえてありますけれども。/で、この「キャー・・・・」という叫び声が、オノマトペだからサイレント漫画でノーカウントってことでね(笑)。「キャー・・・・」と聞こえてきたわけです、この文字の最後の棒線を、伸ばした延長線上の方向から。で、コマの中の子供たちがそろってその方向を向いてみせてます。読者の視線も、いったんそちらに向かいます。縦長のコマの下部で子供たちが横に並んでますから、ここでやや視線の動きが滞留します。/このコマは、この机とイスのガチャガチャっとした描写も、いかにも小学校にあるそれって感じでいいですね。あのネジ付け替えて高さ変えるやつですか。古いね。今もあるのかな?影はおなじみカケアミです。
●2コマ目、さっきの「キャー・・・・」に反応したであろう子供たちが「ひょこ ひょこ」と顔出してます。/これね、コマの高さがさっきのコマから二等分されてます。これ読んでいくと、1コマ目下部で滞留した視線が2コマ目で上方向に向かうことになります。左斜め上に向かう形で視線が入って、その動きにあわせて「ひょこ ひょこ」と顔を出しているわけです。上にぴょん、と視線の進行方向と同化した運動です。それ自体は描いてないんですけど、読み手に意識させてきます。絵としても、この窓の桟を手前にのぞかせて、子供らの顔が来て、この窓の柱がきます。見切れた頭にも動線描いてありまして、左端まで読ませます。視線が向かいます。
●そこから下にいっての3コマ目。「カクカクカク・・」とガイコツが移動してます。これ、2コマ目とアングルが180度変わってます。その意味では、1コマ目から2コマ目も90度変わってます。この辺はマンガの自由さですね、視線の流れの上で意識させずにカットを読ませてくる。/そのアングルの回転を読者に理解させるのが、この窓枠ですね。柱の位置が2コマ目から3コマ目でほぼ変わらない、絵としてほぼ同じなのに、色が黒ベタに一転します。あとさっきのコマの“見ている”絵との関係性、前後関係ですね。読者側でこの変貌を脳内処理できるわけです。/あと、視線の動きも逆になります。左へ左へ、と動く視線がここでガイコツ追っていったん右に向かいます。オノマトペ「カクカクカク・・」も読みますし。だからこれ実際に読むと、ガラッとそれこそ“裏返る”感覚を受けるんですよね。
●4コマ目。この絵は3コマ目でいったん右に向かった視線が、流れをいったん止められてですね、その上で見せてくる一枚絵です。わかりやすい情況描写です、アングル引いて。/「わわわわわ」とまるで校舎に描かれたようなゴシック体オノマトペの上段。からの、漫符的汗をかくマンガ的デフォルメの子供たち描いた中段、トーン貼ってあるし窓枠にはディティール描いてあります。からの、下段ドロイドおいかけっこ、の図です。上から下に視線向かう、それに合わせてこの一コマで絵の部分部分を見せてきます。そして、最下段で視線が左に向かい、そして二段目へ、です。うまい画面構成だと思えます。以上。