月刊コミックビーム2016年4月号

※先月号の感想です(遅)。



●伊図透『銃座のウルナ』/表紙&巻頭カラー。カラーページで設定解説&自己ツッコミは荒木飛呂彦っぽくもあり。わざわざ耳飾りして捕獲を鑑賞する悪趣味さ、もとい覚醒者ならではの意識か。
ジュール・ヴェルヌ・倉薗紀彦『地底旅行』/冒険行では危機こそが見所とはいえ。闇の怖さだな、これも。
朝倉世界一『おれは たーさん』/室内での運転練習にて、チープかつ細々したディティール、妄想、記憶、アクション、と面白い絵だよなー。動物がヒト化する世界なのか…。たーさん、人間の生き直しについても、という話なのだが。
新井英樹『SCATTER-あなたがここにいてほしい-』/逆襲の始まり、と言えば耳触りよいが、実態はオカルトを道標に、当初からの主要キャラを口封じであっさり殺すという。狙ってる暗黒ぶり。で、その中にあっての情けなくもいじましい別離の感傷というかで、ね。
須田剛一竹谷州史『暗闇ダンス』/須田ゲーモチーフ色々、というかそれで埋め尽くされとるがな。好きだけど、ちゃんとアレンジになってるけど。
三宅乱丈イムリ』/再生は自動的に働くこともあるのかね。雪国出身作家の描くこの辺の描写はな。
山田参助あれよ星屑』/女に顔でだまされたよ、読者として!時代劇的ドラマの味わい。
唐沢なをき『まんが家総進撃』/その栄光に狂わされた周囲、というのは確かにありえるだろうな。うーん、地味に苦い。
イシデ電『逆流主婦ワイフ』/最終回。関係が終わり他人事ゆえに、という通じ合い。こんな話でしめる、という辺りが作家性ですな。お疲れ様でした。
上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/ショート集。○休シリーズはラブロマパロディ。ちゃんとラブコメフォーマットになるのが元ネタの、その文脈の理解者の強みよのう。
●横山旬『変身!』/最終回。最後までオチつけるのかよ、もう!運命は匂わせつつ、という幕引き。やはり読み切りとも世界観つながってたか。おもしろかった。お疲れ様でした。
山川直人『小さな喫茶店』/おしかけヒロインだ!人は去り、物は残り、で人生に与える影響は別の側面なのね。古本が人の匂いというのは、うむ。
森泉岳土『ハルはめぐりて』/シリーズ連載最終回。温泉回(一応)。描法ふくめ風景に現れる作家性でしたな。お疲れ様でした。
折口信夫近藤ようこ死者の書』/最終回。彼岸へ。ある種“マンガ家漫画”だったのかもしれない。お疲れ様でした。
●H.P.ラヴクラフト・田辺剛『闇を這う者』/最終回、76ページ掲載。とらわれる闇と現れる者。絵力。
須藤真澄『庭先塩梅』/最終回。この短編連載形式で約12年。最初の物語それ自体が、歩んできた道程こそが“虚偽”だったという、ああ、でもそれこそが物語の力なんだ。ファンタジーという救い、人の見ることができる夢なのだ。そこへの歩みが、また、始まる。ありがとうございました。長い間、お疲れ様でした!


  • インタビューはセキネシンイチ。装丁家に!
  • 次号、山本健太郎新連載。よろしく、南信長!(気が早い。)