越智善彦『ドロイどん』80

●はい、今回はドリフ的コント回ですね。一本の中で同じ失態を三回くり返す、1ページ18コマの中で。これはもうサイレント漫画だから、デフォルメキャラだからこそやれる、この作風だからこそ成立するんだって話です。つまりそれがオリジナリティなんですけどね。
●まずタイトル絵、あやしいおじさんと黒ドロイドです。ここで見ていただきたいのは、このドロイドの目が丸いんですね。以前の、側近として引き連れてた四角い目のではなく、神社の地下にうじゃうじゃいた量産型なんです。




●でまあ今回は、くり返しを見せる回なんで場面抜粋するなら全部やらなきゃ伝わらないんですね、おもしろさが。しかしさすがにそれは問題ありますし、第一めんどうくさい(笑)。スキャナー持ってないし。ですから概要的に説明を。
●1コマ目。そもそもこの部屋登場するのが、だいぶひさしぶりですけど。この右側に整列して並んだ黒ドロイドと左側に並んだ、例の足つき箱ですね。その狭間をおっさんが歩いている、そのそぶり描いてあります、俯瞰で。
●この背景。歩くそぶりのおっさんの後方にドアがあり、ここから入ってきたわけです。この歯車とかコンピューターらしきもののね、こういうガジェットがいいんですけど。
●でまあ、この絵だけ見ても状況よくわからないです、おそらく。何が描いてあるのか。その説明としてのタイトル絵ですし、あと今回はわかんなくても、まあ話進むんですね。
●2コマ目。おっさんが「パチンッ」と指鳴らします、いいポーズ。あとこの服のディティールが、なんというかデフォルメと描写力の部分でイカしてます。
●で3コマ目。さっきの「パチンッ」に反応した、したとおぼしき黒ドロイドくんたちがですね、「ワシャワシャ・・」と動き出します。どういう動作だよ、て感じですけど。「ワシャワシャ・・」とみんなで協力して、積み上がり出すわけですね。
●でまあ、読者はこの時点でわかればいいんですよ。ああ1コマ目は俯瞰で黒ロボ並んでたんだ、と。それを説明するための分節といいますか、そうあっても1コマ目のこの絵を、この形で見せたかったという。そういう構成ですね。




●はい、二段目に話は移ります。4コマ目、「じゃん!」です。さっきのドロイドくん達が組み合わさって鳥型になったわけですね。光る目ずらり。左下におっさんがいます。
●ここはやはり、オノマトペが平仮名なのがいい。「じゃん!」と。元気ですね。エクスクラメーションマークの点も丸を書いてますし、背景も集中線と点の混合であると。秘密基地、秘密の会合の雰囲気から、からっと明るい陽気さになります。ユーモラスですしね。
●で5コマ目、この鳥型が「バッサバッサ」と羽ばたき出します。ここはカタカナです。ホコリと砂煙が舞い、おっさんは一時退場ですね。この鳥の動作をピックアップしてます。




●そして6コマ目。「ぶわぁ…」と浮かび始めた合体鳥です。そこで、おっさんが気付き表現の漫符浮かべますす、トーン貼られた。あっ、4コマ目と比べると鳥型の体に凹凸が目立つし眼光も丸くなってるぞ!動作表現する線もなんというか、ゆるい!
●そして7コマ目で「バラバラ…」と空中分解してしまったと。おっさんの吹き出しの中のぐじゃぐじゃ線がいいですね。あとドロイドがあまり重そうでない、軽い感じで描かれてます。コメディ調ですね。



●で、今回は、これのくり返しです。
●おっさん指鳴らし「パチン」、動くドロイド達が見切れて。→次のコマに「でんっ!」巨大イカ型登場。(なぜだ)「ワシャワシャ・・」は、もうやりません。→イカが足動かして「うねうね・・」。ここはふるえる筆字です。→そして「ぐらあ…」と筆字でよろけます。ああ、また凹凸が、丸目が、すでに頭頂部では分離したドロイドが汗かき漫符を。→俯瞰で「ガショッ」とくずれて分解。おっさん吹き出しぐじゃぐじゃ線。
「パチンッ」→俯瞰でクモ型、「ででん!」。→おっさんのみが全身像で入ってる今回唯一のコマです。その吹き出しには音符。満足気ですね。→で、拳振り上げ歩き出したおっさんの背後、今回の巨大グモは「バッサバッサ」「うねうね・・」もせずに、立ってるだけでふるえる筆文字カタカナ「プルプルプルプルプルプル…」。全身に震え線。→「ガショオン」と、今回唯一のトーン貼りゴシック体オノマトペ大きめで崩れさり、おっさん振り返りぐじゃぐじゃ、と。完、です。
●そのように内容としては単純な、でも描写にはこだわられた構成で、その作者の意志がやはり私は好きなのです。はい。



●そういえば前回のオチで空飛んでった主人公・あまねちゃんはどうなったんでしょうか。その投げっぱなし、というかそれがやれる、ある意味世界の安定性ですね、ギャグマンガ的な。その脈絡も含めてのこのマンガの世界観です。以上。