BSマンガ夜話「井上雄彦『リアル』」感想、プラス未放送ネタ。

えー、まず始めに。今回の日記の題材は、NHK-BSにて不定期放送されているマンガ評論番組、「BSマンガ夜話」です(現在休止中)。一つのマンガ作品を取り上げて生放送で1時間、なんだかんだと語り合う番組です。個人的に、めちゃくちゃ好きな番組。私の目と心持ちは、間違いなくこの番組から甚大な影響を受けております。「見方」の存在と技術は、この番組から教わった。
さて、今回それがしが感想したためてみようというマンガ夜話『リアル』回の放送日は、昨年の12月22日です。約1年のタイムラグおいて、テレビ番組の感想書こうってわけです。俺のブログの辞書に、速報という文字はない。まあだいじょぶでしょ、ネタ元の質が質だし。あと、この回は公開収録であり、観覧に参加できた私は未放送ネタも書いてやろう、という目論見的計算もありますよと正直に。
実際に放送のビデオ見たのが(ビデオテープだったんだよ)、今年の1月下旬。そっからすぐに書き終える予定、だったんだけどなはずだった。最新刊発売も間近だし、アップするなら今だ!と、元のファイル開くのも7ヶ月ぶりだったという体たらく。それでも火種だか執着だかは消えずに。こんなブロガーでも、受けた熱は吐きたい衝動というか業。現在マンガ夜話の放送は二度目の休止状態にあるわけですが、さ来月からの新年に向けても、今こそ一発、言祝ぎと書いてコトホギたい。
やっぱりおもしろいのだ。まったくもってすばらしいのだ。


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番組データ
BSマンガ夜話」シリーズ37弾・第1夜
放送日:2009年12月22日(公開収録日・11月28日)
作品:井上雄彦『リアル』
司会:大月隆寛笹峯愛
番組レギュラー:いしかわじゅん岡田斗司夫夏目房之介
ゲスト:石井正則アリtoキリギリス)・柴田淳

※以下、個人的に気になった発言内容を、放送の時系列順に引用し、感想を併記してます。引用記法されてない収録内容の記述については、あくまで私の記憶にたよった内容です。(一応それらの点については、番組のビデオ見終わった直後に、2ヶ月前の記憶たどりながらメモしておいた内容ではあります。)


  • 番組オープニング・各人の一言

岡田:「もうね、今ね『リアル』のね、あの井上説教にドハマり中だから(笑)。普通のマンガ夜話的に、こうはこうで、ていうような分析的に語れるんじゃなくてね、井上先生のお言葉、みたいに自分がなっちゃいそうなのを立て直すのが大変。かなりね、説教ワールドに入ってて。俺ね、こういう汗くさい説教って嫌いなはずなのに、なんかね説得されている。うん」
大月:「体質的にはあるんだよね、きっとそういうのがね」
岡田:「体質的にはある、だって、もともと高校のとき応援団だもん」
大月:「そうだよね」
笹峯:「へえーっ。(一同驚きの声)知らないですよねぇ」

「嫌いなはず」と言っている岡田氏ですが、同番組のつの丸みどりのマキバオー』回で話振られた時も、のっけから以下のような点を魅力として語っていたのでした。

「ネズミ一番カッコいいでしょう、親分(笑)。チュウ兵衛カッコいいんだ(笑)」

「やっぱね少年マンガでああいう、ちょっと格上の先輩みたいなやつって憧れじゃないですか。ひっさしぶりにね、男気のあるヤツ。でおまけに、内容のある説教するヤツを見た(笑)」

好きなんじゃないか!あれだな、ツンデレってやつだ。(えー)
あと忘れてても無理ないけど、笹峯氏はマンガ夜話に初登板した『嗚呼!!花の応援団』回のオープニングで、岡田氏が応援団やってた事実は聞いているはず。もっとも岡田氏はこの発言時にカミまくり、「直前のいしかわさんが漫画にぜんぜん関係ない話して、気そらされた」と、ネタにしてまとめてましたが。


石井:「僕が子供の頃読んでたマンガって、毎週次が楽しみだったんですよ。で、そういう意味でいうと『リアル』って、もう次が楽しみでしょうがないんです。そういう意味で言うと、すごいマンガ然としたマンガだな、っていう。僕が子供の頃から読んでたマンガの感じを、井上さんがもう一回やってくれてると。あのアートの方に行っちゃった、なんか、だって美術館とかでなんか展覧会とかやって、ねぇ?だからそういうふうに行かれるのかな、と思ったら、僕らが思うマンガ然としたマンガの方もちゃんとやってくれるんだ、っていう。そのために始められたのかしら、ぐらいに勝手にファンは思ってしまって」

私はこの公開収録に先がけて、『リアル』全巻レンタルしたんですけれども、実際2巻まで読んだら止まらなくなり、一晩で当時出てた8巻まで全部読んでしまいました。(収録2日前に発売された、9巻はマンガ喫茶で。)
そんなわけで、会場でこの発言聞いた時は、わかる!いやー、石井正則いいこと言う!と。俺の思いを代弁してくれてありがとう!的な。一気読みしたから、てのもありますけども、本当、あれはひさしく味わってない興奮と快感だった。
あと“美術館でやった”「井上雄彦 最後のマンガ展」ですが、個人的には、あれも帰結点としては、やっぱりエンターテイメントだと思ってます。(「井上雄彦ぴあ」*1掲載、尾田栄一郎との対談でもそういった内容、エンターテイナーとしての美学について話してましたし。)そこがいいのです。
(※という風に、収録時に話聞いてた時も、放送をビデオで見た直後も思ってたのですが、その後、内田樹のブログで読んだ「最後のマンガ展」楽屋での井上氏との会話の様子見ると、やはりそれのみでここまで大それたことはやれない、“表現者”としての意識もかなり含まれるようです。
とはいえ、これは私実際に「最後のマンガ展」見に行った時に感じたのですが、やっぱり一枚絵として見るものじゃあない、絵単独としての完成度を求めるものではないだろうと。マンガにおける絵的な構成の巧さとは、視線の方向・速度といった「読み方」を操ることなわけですが、それを“体感”として味あわせてみせる、その意味においてこそ「最後のマンガ展」はかつてない、卓越している、すばらしい、というのが私の認識なのです。(実際のところ、来館者の多くは、(私が見た限りでは)「一枚ずつじっくり見ていく」という鑑賞の仕方をしていたわけですが。ある程度の速度持って「マンガ」として読んだ方が楽しくね?て違和感が、私には強くあった。)それは分野として“アート”に落とし込めるものなんだろうか、という懸念がある。「おはなし」あっての世界ですからね。『黄色い本』(高野文子)だって、生原稿1枚とか展示されたって困っちゃうでしょう。)
ちなみに夏目氏は「最後のマンガ展」について、このような感想を書かれています。海外で行なわれた日本マンガ展監修の際に、原稿のコピーを並べて実際に作品を読ませることにこそこだわった、という夏目氏のスタンスは、実に正しいと思う。*2


石井:「このギャグっぽいシーン(※9巻58p)でこれを、この話を終わらせた、っていうことがスゴいと思ったんです。車椅子のバスケットボールっていうハードな題材を扱ってるのに、で、しかも不定期連載。次いつ連載のるかわかんない、一番最後をここでおわらせた!っていう。それがすごく、あ、こういうのってなんか少年マンガとか読んでた頃の感じに近いよなっていう。難しい、泣けるエピソードで終わらせるだけじゃなくて、こういうので終わらせてくれる回もあるっていうのが」
岡田:「こいつの、このふりかえりの目もいいですよね。」
石井:「「キラリ」っていう(笑)」
夏目:「目がいいんだよね。この「キラリ」もいいしさ、その下の目がさ、ただの点」(一同笑)
大月:「対比がいいよね」
いしかわ:「そのページの、左側の設定集(※ナース姉妹の鉛筆画)がいきてる」(一同笑)
夏目:「俺、この看護婦さん大好きなんだよ(笑)」
岡田:「ナース姉妹、すごいいいですよね(笑)。初めて姉妹っていう設定が出た時の、あの揃え方。井上さんはまだ井上さんのままだったんだ!って思ったでしょう(笑)。すっごいうれしくて」

実際は、不定期掲載なのにギャグで終わらせた、というわけではなく、9巻の奥付け確認すればわかるとおり、ここは連続掲載時の前の回のラスト、なのです。次週に続く、な箇所なわけです。
しかし、そんなささいな「正誤」なんざ措いといて、おもしろいやりとりだよねー、いい話だよねー、て“正しさ”をば!てことなんですよ。そのような讃え方が可能な作品であるという、共通理解の発露。それができる価値の宣言。その魅力をこそ推したい引用者の私、なのです。


いしかわ:「『バガボンド』を描いてこれを描くっていうそのバランスがね、本人にとってはすごく大切なんだと思う。描き方が『バガボンド』と『リアル』と、マンガの描き方がずいぶん違うの。それは絵の描き方も違うし物語の描き方も違うし、それからね、あんまりマンガ的な記号がないんだよ。マンガ的な記号ってほら、マンガだとある、たとえば誰かがびっくりするとさあ、(※図を描きながら)こういうのとか、驚くと「ハッ」とかさ、なんかあるとちょっと汗かいたりとか、たぶんね『バガボンド』にはあんまりこういうのないと思う。あと、人間が動くとこういう線入れるとかね。『リアル』の方にはね、それが過剰に入ってるの。読んでて、うわぁ、ずいぶん入れるなぁって」
大月:「言われてみりゃそうかな」
いしかわ:「最近のマンガはね、ここ二十年ぐらい、どんどんこういう描線減らす方向に向かってた。でもね、『リアル』ではかなり意図的に多用してる。それはね、マンガみたいなマンガを多分、描こうと思ってるんだと」
大月:「意思が感じられると」
いしかわ:「そうそう。こっち側で『バガボンド』みたいなアートに向かう方向があって、それと反対の「マンガ」を自分は描こうと、多分思ってるんじゃないかと思うんだよ」
大月:「さっきの石井さんの話と重なってくるんですね」
いしかわ:「そうそう。だから、本当にそのとおりだなぁ、て思って聞いてたんだけど」

未放送部分で大月氏が、「あらためて見たら、『リアル』が『バガボンド』の翌年から始まってたことに驚いた」といった話をしてましたが、私も会場で流れた著者紹介VTRでそれ見て驚いた。(『リアル』の掲載ペースが遅いからそう感じた、ということもあるんでしょうけれど。)そういう意味では、確かに「バランス」はとれているのかなぁ、と。
また、これも未放送ですが、いしかわ氏の話に続けて夏目氏は「『バガボンド』も、マンガ的記号はそんなに少なくない印象」といったコメントをしてました。これは確かにそうです。*3でも、この話し声をバックに挿入されるギャグ顔群の映像見てると、それらが印象的に映えるのは、『リアル』の方だよな、と思える。ていうか、映像スタッフのコマ選択のセンスがすばらしい(笑)。
あと、不定期とはいえ10年以上シリーズ続けてきただけあって、さすがに手錬れだね、司会者・大月氏の相の手は。


夏目:「本当にこの人すごいなって思うのは、あの、『SLAM DUNK』に本当は全部入ってるんですよ。というのは、武蔵はさ、天才じゃん。で『SLAM DUNK』は、凡庸なヤツが天才になる話じゃない。でも、なる前は、欠けてるんだよみんな。で、この人が発展できなかったテーマは、発展させられなかったテーマって「欠けている」ってことなんだよ。で、『リアル』は欠けているところから始まるんだよ。そして、ずっと欠けてるんだよ。これね、作家としての自分の描くべきことを見つける力、はすごい。しかもそれを同時にね、並行してやる力は普通はない、と思う」
大月:「説話論として今の、かなり本質的ですけどね。まあそれ、ちょっと置いときますけども」

この話の内容(大月氏の返しも込みで)、文脈としては後々の内容にも続いてくる点だと思われます。


大月:「99年の時点で『リアル』ってタイトルは、俺はびっくりしたんですよ最初」
夏目:「いや、俺もね」
大月:「おお、そう来たかと思った」
夏目:「(※大月を指さして)でしょ?(笑)」
大月:「うん、こんちくしょうと思った(笑)」
夏目:「それは後でやりますが、本当に『リアル』ってタイトルにちゃんと根拠があるっていうことがわかってきて、この人ちょっとすごいな、って思いましたね」
(※編集により映像とぶ)
夏目:「たぶんそれが、肉体的にあったんじゃないかと」
大月:「フィジカルに」
岡田:「肉体的?」
夏目:「あのね、ようするにホラ、頭で、理念で考えてどうこうって、誰でも言えるけど、そういうことじゃないんですよ。多分彼は、体で感じたんだよな」
大月:「まあそういう人だよね、おそらく」
夏目:「だってね体の描写が、すごくうまいでしょ。普通その、ようするに(※自分の胸を指して)こっから下が筋肉がまったく動かなくなった状態って想像できないじゃないですか。体験できないよね。で、それをたぶんまあ取材されたんだと思うけど、マンガの中でそれがいかに大変かっていうね、克明に描くんだよ。で感じるんだよね。あ、大変だろうなと。 こっから下が石のようになっちゃったのをこう(※イスに)乗っけるわけじゃない。それを延々とその、くり返しくり返し・・・」
石井:「床トラってやつ」
夏目:「うん、床トラってやつ」
柴田:「(※イスに座った状態から)床に手がつけれない怖さ」
夏目:「それをまるで根性マンガの鍛錬のように(笑)、くり返しいくんだよね。あれはすごいですよ。やっぱ、あの身体感覚描く力っていうのは、そうそうないと思うな俺は」

99年に『リアル』というタイトル、の衝撃についてですが、これは言われて気づいた。思い出した。未放送ですが、ここで大月氏は「99年あたりは思想的なものがわやになっちゃってた時期。日本だけかもしれないけど」といったコメントをしてました。(夏目氏の「たぶんそれが〜」は、おそらくその内容受けての発言。)私は99年に大学に入学してますけれども、大月氏の指摘は確かに実感としてあったと思う。で、自分も『リアル』というタイトルに、当初たじろいだ記憶があるのだ。
ゲストの石井氏の前出演回で取り上げた『ザ・ワールド・イズ・マイン』(新井英樹)にしても、そのタイトルの当時はらんでいた意味、内実は、おそらく『リアル』のそれと同質のものだと思うんですよ。その回でも夏目氏は時代性の話に触れつつ、「この話はゴチエイさん(※ゲストの呉智英氏)か大月さんがしなきゃいけないんだよ」といった発言をしてまして、ここでの大月氏指さしての「でしょ?」はそういうニュアンスだと思われます。
で、『ザ・ワールド・イズ・マイン』の場合は、その中の重力は時代背景のカウンターで、より「リアル」なものとして我々の目に映ったんですよね、おそらくは。同じ意味でいえば、たとえば山本英夫殺し屋1』が描いてみせた痛みも。こっそり言っちゃうけど、田中ユタカ『愛人[AI-REN]』の見せた切実さだってなぁ。そこでは作家が体重乗せて、それ感じさせることこそが作品光らせることで、そのありようこそがフィクションに見れる一つの希望だったんだって。少なくとも私にとっては。 *4
ただ夏目氏が言うように、井上雄彦はその時代性を「肉体的に感じた」わけです。*5だからこそ、作品としてのアンサー、『リアル』と名づけたマンガはこのような形になる。それはたとえば、マンガ夜話にて、民俗学者を称する大月隆寛氏が解説コーナー持ってみせた2作品、『みどりのマキバオー』における、ディテールとしての知識を下敷きにした少年マンガ神話の再生産、『ザ・ワールド・イズ・マイン』における、背景の執拗な描きこみが浮かび上がらせる人物と生活像、といった文脈の示す“リアル”とは、微妙に異なってくるわけです。(※続く)


岡田:「マンガって、勝ち始めるまでがタメで、勝ってからおもしろくなるっていうか、人気出るようなものですよね。つまり、それまでどんな障害があったり主人公がダメだったり負けてたりするのが、いわゆる『ドカベン』の5巻までみたいな。(一同笑)柔道やっててなかなか野球やらないぞ、っていうタメがずーっとあって、野球始めた、さあ勝った勝った勝った、でファンのカタルシスがこれから始まって、それをいかに長く続けるかっていうのが、マンガの人気出すようなポイントだと思うんですけども、徹底的に逆やってますよね。あの、いかに勝たないかっていうか、そんなことをやっても俺のファンはもう違うんだと。俺はそういうのは『SLAM DUNK』とかでやってて、なんだろうな、勝つことのすばらしさとか、人間が伸びてくことのすばらしさみたいなものは、もうあっちの方でやっていると。でも、俺のマンガ読んでくれてるファンは現にそんな世界に生きてなくて、ジャンプを読んで一時期心が晴れるかもしれないけど、次の日からまた挫折があったりするような日々だということで、すごいね読者に目線が寄ってるのが僕感動したんですよね、井上さんのマンガっていうのは。そのマンガ家っていうのは、どんどんどんどん、出来るようになればなるほど成功体験積み重ねてきて、いわゆる課長・島耕作から部長・島耕作、社長・島耕作という(笑)、どーっと上がっていくじゃないですか」
大月:「どこまでいくんですかねぇ(笑)」
岡田:「で、この人はそれを下げて、いかに挫折することが多いのが、当たり前なのが人生で、挫折すること込みで味わえみたいなところを語ってるのがすごいなあ、と思ったところへ、今日最初の挨拶の方でいきなり夏目さんが、結局残るのは『リアル』なんじゃないのかと。井上マンガでは。それすごい僕聞きたかったんですけども、なんでそうなるんですか?」
夏目:「あのね、結局この人が描いてる世界の奥行きって、今のところこれ一番深いんですよ。で、こっから先どうなるかわからないけど、あの、この深さを立体的に僕らの体が感じるような形で描けるとしたら、たぶんこの形なんですよね。そういうマンガなのに、むちゃくちゃ売れてるんだよ。(一同笑)普通そんなに売れないって。それだけの読者がコレを読んでるってことはね、これはね、すごいことですよ」

そういえば、マンガ夜話SLAM DUNK』の回では岡田氏、「プロットまんま『ドカベン』じゃないですか、最初えんえん試合やらないし」とか発言してましたね。受けていしかわ氏も「そういえば、最初は柔道部に誘われてたね」と返して(笑)。*6
(※続き)さて。先の夏目氏の「肉体的に感じた」という言葉の主体であるところの“井上雄彦”には、当然ヒット作家である事実や、その自負だって含まれます。で、その実績につながる、肉体描写の技術と資質。くわえて、番組内でここまでに語られている、発展させられなかったテーマの発見、時代性、マンガみたいなマンガへの意思。『リアル』という作品は、それらの集積でもあるわけです。
と、抜粋用いて字面で聞いてた身にすぎなかった私が要約しちまうと、白々しさも生じちゃうわけで。(リアルじゃない!)やっぱりねえ、多元論的「俺のほめ方のほうがおもしろい合戦(※伊藤潤二富江』回で、夏目氏が番組を評した一言。)」、各人のスタンスぶつかり合いライブ、という形での、マンガ夜話という批評媒体の表現力と、それぞれに主体もろ出しなレギュラー陣4人が揃って分担して背負うことの説得力は、たいしたもんなんですよ。そこで展開される“話”の豊かさと価値を解してこその、フィクション嗜好者でございましょう。
あと、岡田氏の作品構造解説中にカットインされるコマがいいですね。あまり使いたくない言葉ですが、泣けます。


岡田:「これなんとなくだけどね、あんまり先考えてないような気がする」
柴田:「ああ、それ思った(笑)」
岡田:「キャラクターの成長に絶対まかせてる、って思ったのはなんでかというと、いわゆる障害バスケット取材の記者というものが出てくる。で、障害バスケットははたしてスポーツか?というテーゼに気がついて、さあ、それをテーマにするんだ!というシーンから、そいつが出てこなくなる。(一同笑)キャラを完全に作者も読者も忘れてる(笑)。で・・・」
石井:「いいですか?僕、スタッフさんに聞いたんですよ。高橋いるじゃないですか。最初、こんなに立てるつもりじゃなかったらしい、っていうことを。井上さんは」
夏目:「いや、そうです」
石井:「まったく最初、1巻では高橋が、ぜんぜんなんかキャラ立ってないと」
笹峯:「そうですよね」
大月:「必要ないよね(笑)」
石井:「で2巻になって、そういう事故にあってから伸びていく。*7話としてキャラクターが生きてくる。そういうのを、(※夏目の方を向いて)先ほどおっしゃった共有というのは、まさに連載マンガの、僕ら読者が楽しみにしている部分なんですよ。むしろ作者もおよばなかった部分を垣間見てるっていう・・・」
夏目:「だから、作者も見てるんだよ。作品の中でそのキャラクターが動いてって、たとえばさ、野宮のさ、あのアルバイト仲間いるじゃん。ね。主任とかいるじゃん。主任の最後の顔すごくいい顔するんだよ。そいであいつらがさ、(※がっくりした表情・ポーズで)あ、もうでてこないんだ、と思ったわけ俺。(一同笑)会社なくなっちゃって。そしたら出てくるじゃないか、ね!あのね、多分ね、作者は自分で読んでいて、こいつの人生、っていうのをもう一回見つけるんだよ。で、そっから大きくなってったのが高橋なんだよ」

石井氏の言う「先ほどおっしゃった共有」というのは、放送の時系列ではこの後のコーナー、「夏目の目」での発言じゃねえのかな。順序変えてる?覚えてねえですけど。
それはともかく、俺も忘れてました、この記者(笑)。野宮の後輩二人とかも、どこ行っちゃったんでしょうね。キャラ設定として『スラムダンク』な枠だった、というのが出てこない理由かもしれませんが。(※と、7ヶ月前に書いてたら、ああ!)
なお、ここで夏目氏が言ってる「そしたら(また)出てくる」場面が描かれるのは、番組公開収録日の前々日に出た、ヤングジャンプ最新号に掲載された話において、なのです。単行本未収録でも、ちゃんとチェックしてるんだぜ!公開収録時には誌面映せなかったスタッフも、番組放映時には、ちゃんと雑誌から引用してきてるんだぜ!(先述の絵の話題のカットインでも、この号の話から1コマ、ギャグ顔を引用してます、と7ヶ月前には書いてたんですが・・・。あれ?最新10巻では修正されてる?)もちろん俺も、ちゃんと読んでから行きました。会場入り前に並んでたら、「最新巻と最新号(どちらも収録2日前発売)の話は、さすがに出ないよねー」みたいな会話も聞こえてきましたが、甘いです。その程度の番組と出演者ではないのです!
しかしまあ、やっぱり夏目氏はじめ出演者のテンション上がるのは、この手の愛情表現の時ですな。見てるファンも嬉しいし、描いてる作者だって楽しいはずなんですよ、こういうほめ方ができる部分って。その表明ですよ。
あと、この時出演者背後のプラズマビジョンに「あとーんす!」のコマ(※7巻126p1コマ目)が映ってますが、大月氏がそれ見てすごくうれしそうな顔してました。隣の笹峯氏に「あれ、あれ」と指差してみせるぐらい。ま、気持ちはわからんでもない(笑)。


岡田:「話は、でも進まないですよね。まだ野宮君、あの自分が障害おわせた女の子、なんていうんでしたっけ」
柴田:「夏美ちゃん」
岡田:「夏美ちゃんに、たしか3回しか会いに行ってないんですよ(笑)」
石井:「で、そのたびにおみやげ持っていく。母親の韓国旅行*8のおみやげとか(笑)。あそこもちょっとしたギャグで楽しいんですよ」
岡田:「長野で一番おいしいミルフィーユ(笑)」
石井:「(※すばやく)二番目においしいミルフィーユ!(笑)」
大月:「そう、二番目においしい(笑)」

会場で笑いながら聞いてた俺ですが、まさか放送時に「おみやげ渡してる絵」→「ミルフィーユの絵」(※それぞれ別の回)と、該当コマが二つとも流されようとは夢にも思わず。映るの一コマ数秒ですよ!何この労作ぶり。(←ほめ言葉)


いしかわ:「プロレスマニアとして言わせていただければねえ、ちょっとプロレスラーの描き方がもう一つだよなぁ(笑)」

いやー、このシリーズ三日目に取り上げられた志村貴子作品が、『ラヴ・バズ』じゃなくて本当によかった!もっとも(以前も書きましたが、)岡田・大月両氏は、『青い花』よりは『ラヴ・バズ』(もしくは『どうにかなる日々』)のほうが、絶対語れたはずだと思いますが。*9


柴田:「9巻の最後の方で、先生がでてくるじゃないですか(笑)」
岡田:「そう!これすごい!」
石井:「原先生!」
岡田:「原先生が、実は女だった」(一同笑)

未放送だった岡田氏の発言によれば、この場面、出演者ほぼ全員がふせん付けてきたそうです(笑)。


(※画面に映る注釈テロップ)
大友克洋 代表作:「童夢」「AKIRA」など」

今回の放送、他の作家名も発言には出てきてるんですが、わざわざ注釈テロップ出されたのは、大友だけなんですよね。
同じく公開収録の『ハチワンダイバー』(柴田ヨクサル)回では、けっこうバンバン作家名の注釈テロップが入ってました。代表作が併記されているだけだし、正直あまり必要性は感じなかった、『ハチワン』回では。今回は、こういう話題で大友のテロップを!というユーモアが感じられたんですね(笑)。だからよし。単に、大友は今マンガ描いてないから当たり障りなくてOK、てことかもしれないけど、あえて、だったらたいしたもんですよなぁ。


大月:「柴田さんあたり、ストーリー的には気になる部分ていうのはあるんですか?」
柴田:「あのですね、ちょっと自分で気になってこうやってふせんをすごい付けてるんですけど、7巻には一つもないんですよ」
(※一同驚きの声&7巻めくりだす)
岡田:「7巻はね、案外バスケシーンが一番多い巻ですよ(笑)」
柴田:「そうなんですよ」
岡田:清春中心の話だからないんじゃないですか」
柴田:「あの、というかみなさんのお話の中にも、障害者バスケについての話があまり出てこないですよね。で、私の中でも、戸川の試合シーンとか、正直記憶にあまり残ってないんですよね。試合はどうでもよくなっちゃってるのか・・・(笑)。それよりも人間の、そういうドラマの方が興味があって」

ここでの柴田氏の発言には、けっこう共感しました。私も連載で見てたはずなのに、今回(※1年前ね。)再読するまで勝田虎のキャラクターとか完全に記憶から消えててびっくりした。なんだ俺。
対して床トラの場面は、すごく印象にのこってるわけですけどね。ヤマも。


  • 夏目房ノ介による解説コーナー「夏目の目」

(※壇上に歩いていく夏目氏)
大月:「長い指し棒だね」(一同笑)
(※指し棒持つ夏目、会場拍手)
夏目:「別にこれから討ち入りしようってわけじゃないですけどね(笑)」
大月:「ここで拍手くるのか」

いや、あの指し棒会場で見たら本当にデカかったんだって。夏目氏の身長の倍くらいあるんだもん。そりゃ拍手するよ、ていうか俺も、誘おうと頑張って手たたいた一人です。ごめん。


夏目:(※4巻191p)少女たちが、これはまた別の人物に対して、「何かが欠けてるからこそ前へ進めるってのはあるよね」。で、「完ペキに満たされたなら そこから先の人生にどんな意味があるっていうのよ」っていう、日常会話で出てくるんですよ。これ見逃してる人もたぶん多いと思う。でも作者的にはコレがテーマなんです。だから、さっき言ったことがテーマだってのは、もう最初からあるんです。つまり『リアル』という、え、今なぜ『リアル』?っていう、しかも車イスバスケで、ていう理由は全部ここにあります」

こういう語り方でテーマとか示すのは、あまり好きではないのですが、*10間違いなく一つのポイントとしてある場面だ、と私も認識してるので引用。いいシーンだし。年上のおねーちゃん達からかわいがられるとか。(えー)←ああ、今回の記事ではこのノリ封印するはずだったのに!


夏目:「図の9(※1巻19p)。僕は野宮が一番好きだと言いましたが、最初、登場時はこの顔です。ま、非常に『BAD BOY』的な。いい顔ではあります。ふてぶてしい。これがしばらくすると、図の10(※5巻40p)になってきます。だいぶかわいくなりますね。それで、この辺になると、作者も野宮にかなり入ってるんですよ。野宮は「見る者」(※この前段として、野宮というキャラクターを、高橋・戸川それぞれの物語を見つめ繋ぐ役割であり、また自身の物語の中では、夏実のことを見守っている存在である、と解説。)だから、作者と非常に位相が近いんですよ。つまり、作者、野宮になってるんです。誰かに似てます。井上雄彦さんに似てるんです。で、これはですね、さらにこの次、図の11(※5巻1p)で見ていただくとですね、えー、そっくりです。(一同笑)で結局ですね、たぶんこの後、井上さんも気づいたんでしょうね。ちょっと、軌道修正していきます(笑)」

この指摘には会場大ウケ。いやー、感心しましたね。夏目房之介、真骨頂。
ちなみに、会場の笑い声等、観客席の音はあまり拾わないようにされてる(消されてる?)みたいですね。前回の公開収録、『ケロロ軍曹』の時のいしかわ氏の「パンツのうね」発言なんて、(放送ではだいぶ音おさえられてましたが)会場のわき具合尋常じゃなかったんだから。もう。


夏目:「結局ね、作者が、これだけ作品の中に入ってしまう。それと同じように、読者も入ってしまう。これは日本のマンガが持っている一つの特徴です。これは連載形式というものが生む、一つの特徴なんです。作者と読者が共同体のように連結するんですね。これを持ってるから、どんなにアートになっても、この人の作品が娯楽としての共同性を保つ、ということだと思います。以上のようなリアルと重さ、そしてその楽しさがあってこそ、図12(※7巻180〜181p。バスケットシーンでのチームメンバーの表情。)、結局はこの場面が生きてくる、ということなんだろうと思います。以上です」(※コーナー終了)

で、こちらは番組「BSマンガ夜話」としての真骨頂といいましょうか。構造・技術の解説、作者・読者の分析を経て、着地点は「おもしろさ」への帰結。拍手。
“読まれ方”も込みで語る、というのは現在のマンガ評論では常識かもしれませんが、その先達の一つは間違いなく、この番組だと思います。


いしかわ:「たぶんね、井上雄彦は『SLAM DUNK』の頃もそうだし『バガボンド』もそうだけど、努力したから上達する、ていう世界は描いてないんだよね。努力すればしただけのことはあるけど、それは成果として出てくるかどうかはわからない、ていう世界をちゃんと描いているから、一生懸命トレーニングはしてるけど、あれでプロで成功するかどうかはまだわかんないよ。」

いしかわ:「今の日本の、トップクラスのマンガ家の中で、演技が好きな、演技がうまいマンガ家ってたぶん、井上雄彦浦沢直樹なんだよ。二人ともね、登場人物にものすごい演技させるの。マンガって当然絵があって、キャラクターがあって、それを補助する符号だとか背景とかいろんな効果とかあるんで、そんなに出てくる人間が演技しなくても話進んでいくんだよ。なんだけどね、ものすごくね、細心の注意をはらって、一コマ一コマものすごい演技させてるの。細かーい表情、ちょっとした動作みたいなのに気をつかって、本当に演技させてんの。まあ、それはそれだけの絵が描けるからなんだけどね。『リアル』見てるとね、性格俳優、演技派俳優が演技してるような。ずーっとね、息詰まるんだよ。見ていくとね、こんな所にこんな力入れて、こんな小さな絵なのにこんな工夫して、っていう、そういうのが全コマにあってね、もうね、やんなっちゃうんだよ」(一同笑)
夏目:「感心しろよ(笑)」
いしかわ:「この密度で、このテンションで、全コマは描けない」

富江』の回で大月氏も言ってましたが、いしかわ氏の批評は基本、才能主義(※創作姿勢や内容のくだらなさに価値を見ている作品でも、その点を作家自身の資質や能力という文脈に還元して褒める、という意味に私は解釈しております。)ですので、それを受けてさらにこっちが感想はさむ余地というのも、あまりない。というわけで、「さすが、うまいこと言うな」と思った発言を、すなおに紹介。


大月:「これ仮定ですけども、変な仮定だけども、女の子だけが主人公で、あるいは女の描き手で可能ですかね、こういうリアル」
夏目:「あのですね、逆に言うと、井上さんは女の子が描けないんですよ。『スラダン』でも、途中でいなくなっちゃいましたからね」(一同笑)
柴田:「安積ちゃん、かわいいですけどねぇ」
夏目:「すごく描きづらいんです、この人は。描きづらいな、っていう絵なんですよ」
岡田:「微妙な距離をおくことで、描いてますよね(笑)」
大月:「中心に入ってこないでしょう、話の」
夏目:「これはね、あの、井上さんとしては最大限の努力をして、女の子を描いてます」
(※プラズマビジョンに映る、高橋を見舞う少女)
石井:「あ、(※指さして)ふみかちゃん(笑)」
夏目:「この、あ、俺この娘好きなんだ」
いしかわ:「これはでも、女じゃないんだよね。女じゃないから存在できるんだよ」
夏目:「そう。こういう顔はむちゃくちゃうまいんだ。でもね美少女はね、みんな同じになってしまうんだわなー」
大月:「おそらくね、目線が行ってないんですよ。」
夏目:「そう。かわいいと自分が思い始めると、みんな顔が似ちゃうので難しいんですよ」
石井:「文香ちゃんが出てきて、犬の話をして、去っていった後にまたあの看護婦さんが、私という女がありながら、っていう話があって(笑)」
大月:「必ずオチがつく(笑)」
石井:「そういう、美人じゃない人の方がうまいってことですか?」
夏目:「そう、うまい。でさっきの、あの女の子もちょっと感情移入してくる部分ではかわいくなってるんです、実は」
いしかわ:「そうそう」
夏目:「あわてて戻すんだ(笑)」
いしかわ:「いや俺途中で、え、これ誰?あ、これあの娘じゃない、って(笑)」
夏目:「違うんだよね(笑)」
いしかわ:「あの表情してないし(笑)」
大月:「いわゆる恋愛とか、なんていうのかな、性的対象につながるような女性ってのがこん中ほとんどでてこないんだよね。この段階ではね」
岡田:「だから、距離が近くなりすぎるたら描けなくなるから、いかに距離を離すか、もしくは、ずけずけ入ってくる女をちょっと突き放すっていう形でずーっと――」
大月:それで今、世界もってるんですよ」
岡田:「寸止め感で世界もってるんですよ」
大月:「入ったら壊れるんじゃないかな、もしかしたら」
岡田:「いやでもね、親子関係、だから母親との関係描かざるをえないな、て思ったら、うまいこと間に父親入れるでしょ。やっぱ女描かずにこう、そこはスルッてぬけてく」
夏目:「本当は、描くべきなんだと思うよ。ただまあ描かなくていいのかもしれないけども、この世界だったら本当はあるべきものだよね」
大月:「あって自然ですよね」
夏目:「だからそれは一生懸命、やろうとしてるんだと思うよ」
柴田:「すごい女の子かわいく見えるんですけどね」
大月:「あ、そうですか?」
岡田:「でも青春スポーツモノみたいなもので、親子関係描いてるだけでも大したもんですよね。普通、親子描けないもん、入んないもん、こういうのに」
いしかわ:「そこで親子とか、女の子の、つまりセックスっていうものを描いてくと、ここでもう一段二段深い話になってくと思うんだけど。ただ、この世界だと難しいだろうね」
石井:「でもそういう意味で言うと、もともと描かない、あまり描かれてないから、山内が一回こわれるというか、戸川につらく当たるシーンの時に、俺はセックスをしたことがないままどうやら人生を終えるらしい、ていうセリフがあるんですけど、あのセリフがすごいセンセーショナルにひびいたんですよ。逆にそういうのあんまり描いてないから、言葉として出てきただけでもかなり衝撃があったっていう、効果としてはあったんですけどね」
いしかわ:「俺もね、あそこでね、ついに描き始める決心がついたかな、と思ったの。でも、あそこだけだったね」
岡田:「あの後なんか二人の関係が、ちょっと顔が赤くなるとか、そういう感じで終わっちゃいましたもんね」
夏目:「そうなんだよな」
大月:「あの、古谷実はそっちがわかるから、こっちに行けないんですよ、きっと。僕の解釈ではね。あの人、わかり過ぎちゃってるから。そっち気になってるでしょ。だから、それ入れるとこういうリアル、話としてまとまらないんだと思うんですよ」

まず、女の子の話してる間に後ろのプラズマに映されるコマが、夏美→安積→ふみかと変わっていったのは、スタッフ絶対ねらってるよなぁ、と。また、井上氏の弱点たどたどしい調子で話してた夏目氏が、ふみかの絵見たとたんにテンション上がるんですよね(笑)。柴田氏はがんばった、うん。
さて、ここでの大月氏の観点聞いた時に私が思い出したのは、『みどりのマキバオー』文庫版最終巻収録の、氏の解説文です。*11以下にその一部を引用。

みどりのマキバオー』はどこまでも徹底的に、とことん、どうしようもなく「少年マンガ」である。だからこそ、その限界と可能性とのせめぎ合いの中でギリギリにすばらしい。
まず、オンナが出てこない。世に競馬をネタにしたマンガは多々あれども、ほとんどの作品は必ずこの「オンナ」をテコにしてしまわざるを得なくなっている。そのことで、「少年マンガ」の枠組みにいらぬ制限がかかる。ゆうきまさみのそれ自体はかなりの力作だと思う『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』にしても、立ち上がりは正しく競馬マンガのはずだったのが、じきに『タッチ』以来の「ラブコメ」の枠組みに引きずられてしまって単なるちょっと変わった恋愛マンガにならざるを得なくなった。
マキバオーに恋愛はない。オンナもいない。いてもマキバコだ。性的存在としてのおのれに悩むことなくひたすら友情と努力と情熱と根性とで世界を生きてゆこうとする、その限りで完全に男の子の桃源郷、純粋理念型としての全身「少年マンガ」なのである。

ここで「桃源郷」という言い方用いる、用いざるをえない、元オトコノコたるおっさんの郷愁くみ取って、と私も三十路寸前の男性として言ってみる。生物学的に九州男児だったりするし(苦笑)。別にこのマンガじゃなくとも、たとえば『クローズ』や『ROOKIES』でもそうなんですよ。そういう“リアル”の話でね。もう信者にはなれないけれども、それでも夢を抱きたい、出会えたら酔えたら、最大限それを讃えたい、なのですよ。その手のおはなしに育まれてきた人種で、それに後ろ足で砂かけるようなマネしたくないわけさ。フィクションには“それ”を忘れてほしくない。全部がそうだったらダメですけどね。
ちなみに、以前私が書いた、中村珍『羣青』上巻の感想「今の古谷実が目指すとしたら、こういうのかもしれんね」とは、ここでの大月氏の発言織り込み済みで書いた一文です。


  • エンディング・各人一言

笹峯:「はい、じゃあそろそろお時間でーす。はい、みなさん今日は、いかがでしたか?」(間あって一同笑。会場拍手)
石井:「(※立ち上がって机たたいて)ちょっと!ちょっと!」
大月:「いやでも、これが芸なの(笑)」
石井:「雑!いくらなんでもMCが雑!」
笹峯:「ゲストに怒られた(笑)」
大月:「(※スタッフを指さして)書いてあるとおり読めばいいというね、心のかけらもない仕切りを(笑)」
岡田:「いつもより三倍ひどいよ、愛ちゃん(笑)」
夏目:「あれじゃないと誰も黙らないんだよ(笑)」
石井:「ああ、なるほど。(笑)そこまでドンといかないといけないと」
大月:「だから続いてるんですよ、この人は。ここまで心ない仕切りする人いないんだから(笑)」

あれだ、「これはひどい」てやつですね。でも好き。この場面カットしないスタッフも、わかってらっしゃる(笑)。


いしかわ:「やっぱり井上雄彦は絵が好きなんだね。口絵とか見てるとほんとによくわかる、いろんなテクニック使っててね。いろんな人の影響受けて、いろんな描き方してて、本当に」
大月:「いしかわさん的にはそれは褒め言葉ですよね、おそらくね」
いしかわ「うん。絵に対する興味が本当にあるんだな、て思うよね」

未放送ですが、いしかわ氏はここで「これってゲイ雑誌とかで見る手法だなあ、とか」という発言していて、ちょっと気になりました。そう言われると、一部の絵の彩色やタッチがそういう絵柄にも思えてくる不思議。未見のくせにね、俺。


岡田:「この人、やっぱり僕好きなのは、自分の力に全然満足してなくて、してないというのは上昇志向があるっていう意味じゃなくて、なんかいつも軽く絶望してるんですよ。俺こんなに描けるんだけれども、まったく描けない部分がいくらでもあるよ、て思ってて。それがこの中のキャラクターひとりひとりに対応してるのが、自分の心の中の落とし所をキャラクターに見つけたっていうのが、すごいなあと思いました。ずっとこれからも読んできたいですよね」

中盤の「肉体的に感じた」「あえて勝たないことを描く」に続く脈絡の発言、だとは思うんですが。しかしこういう語り方されると、『東京ラブストーリー』(柴門ふみ)の回で大月氏が言ってた、「勝手に言わせてもらうけど、これ描いてて柴門さんが一番救われたんだと思うよ」みたいなもんか?とも。でも“作家として”という脈絡では皆そう、なのかもしれないしなあ。


大月:「はい。石井さん」
石井:「あの、夏目さんのおはなしで、野宮が井上雄彦にホントそっくりであると。井上さんにそっくりであると聞いた時に、その、8巻か9巻ぐらいで「化学反応」という言葉が僕はすごく印象に残っていて。ポイントガードとして選手ひとりひとりの化学反応を、っていうのも、あ、それ井上さん本人の考えなんだなと。このキャラクター達がどう動くかの化学反応を自分が見たいと思って、それを動かせるポイントガードになりたい!と思いながら描いてらっしゃるのかな、と思った時に、読者が与える化学反応もあるだろうし、世の中の時代そのものが与える化学反応もあって、『リアル』が物語として進んで行くとしたら、もしかしたら1巻を描いた時にある程度のストーリーはあったんだけど、マンガとしてのリアルっていうのは、そういう化学反応、先がわからなくて化学反応で描きますっていう、マンガのリアリティがここにあります、ていう意味で『リアル』って付けたのかな、と今、話してておもっちゃったんです。そういう意味で、これからどうなっていくのか、まったくわからないことを僕も楽しみにして、応援していきたいなと思います」
大月:「ありがとうございます。夏目さん」
夏目:「いや、もう今の話でいいんじゃないですかね(笑)」

石井正則はかっこよかったなー、と。


笹峯:「ということで、今日は公開録画でお送りしましたけれども、明日は生放送でお送りします」
大月:「はい、もうクリスマスも近いというのに」
笹峯:「はい(笑)。取り上げるマンガは高橋留美子作『犬夜叉』です。FAXやメール募集も行ないますので、ぜひ参加してください。お楽しみに」
大月:「はい、今日『犬夜叉』じゃなくて本当よかったと思ってます(笑)。持ってくんの大変だった。はい、それではまた明日、よろしくおねがいします。今日はみなさんありがとうございました」
(会場拍手。番組終了。)

「クリスマスも近い」どころか、イブの夜中も生でやってたわけですしね。しかも、ガールズラブ作品の話をば!
「持ってくんの大変」については、この番組で取りあげる作品は、出演者それぞれで持ってくる&持ち帰るのだ、と前回の福岡での公開収録時に、岡田氏がぼやいてました。その際に取りあげた『ケロロ軍曹』は、全18巻(当時)!


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  • 未放送ネタ

その他、会場で見聞きしたけど、電波には乗らなかったネタ群。
重ね重ね言いますが、完全に記憶にたよって書いているので、話半分で読んでください。時系列もめちゃくちゃです。

  • 甲府NHK3体のマスコット

 開場前、長い列をつくっていた我々の前に、三体の着ぐるみ、しんげん君・かんすけ君・ぶど雄が姿をあらわしたのでした。一応、カメラの前で手を振ったりもしてたのですが、全面カット。ちなみに会場入り口前では、この三体との撮影会もやっておりました。

 余談ですが、「○○系」という物言いはこういう風に使うもんだと思ってる私は、「セカイ系」だの「空気系」だのといったテクストにどうもなじめないわ。その語のリアリティを担保する、裏付けとなるブツはなんなの?て印象を受けるわ。*12

  • 最初は野宮が好きだった柴田淳ですが、今(収録時)好きなキャラは花咲さん。

 そもそも村上隆作品は“日本”なのか?*13(“日本人”の作品、ではあるけどね)という話ではありますが、先にあげた内田樹氏のブログ中での会話見ると、井上氏側にはそういう意識もないわけではないのかな。
 村上隆といえば、このシリーズの3日目、『青い花』回の冒頭にて大月氏が、「実は今日、私もせっかく東京にいるからと思って、萩尾望都さんの原画展やってるんで見に行ったんですけれどもね、うん。それ見た後であらためて、もういっぺんあらためてこれを読んでみると、どう言っていいのかというね(笑)。岡田さんがうまいことさっき言ってましたよね。ここを見た後に村上隆見るようなもんか、っていうふうに(笑)、非常にいいこと言ってくれた、そういうことかなと僕も思ったり(笑)」と発言していました。ここでの岡田氏のたとえ、位置づけとしては結構いい所突いてるんじゃないかと思う。

  • 井上雄彦の仕事意識の話→女はついてったら不幸になるんじゃ→九州女・笹峯あい的にはいい男→笹峯:Youtubeで見ました!
  • 岡田:この人の言ってる「化学反応」って、(いしかわじゅんが昔やった)好きな作家集めて雑誌作る、みたいなプロデュース意識もあるんじゃ?→いしかわ:自分の意識はそういうのではなく、おもしろい作家を一堂に集めてみたかった。井上にも、そういう意識はないと思う
  • 大月:恩返ししたいってことで、バスケットボールの奨学金とかやってる人なんだよねぇ。

 感心したように言ってました。わりとそういう発言が似合う人、なのかも。しかし、この奨学生に関するインタビュー記事はなんで掲載誌がビジネスジャンプなんでしょうかね。

  • 質問コーナー

今回の放送では、公開収録につきものの観覧者による質問コーナーが、全面カットとなっておりました。実は私も質問してたんですけどね。初っぱなに当てられたんだけどね。
というかね、前回、福岡で観覧した『ケロロ軍曹』の公開収録では、「質問のある方」と笹峯さんが言ったとたん、会場中でバララララっ、と手が挙がったのに、今回はほぼ無音ですよ、シーンと。(前方座ってたんで、正確には会場の様子わかんなかったですけど。)そこを手あげたら、岡田さんから「お、勇気のある方が」と言われました。勇気じゃなくて業ですよ、もはや。
そもそも司会の大月さんがこのコーナーやる気なくてですね(そりゃまあ番組の内容に寄与するかつったら、まずしませんが)、前回は「地雷と言われる」だの、今回は「やるの?いいけど」だの、いらん前置きをされるわけですね(笑)。でもまあ私、質問自体は来る前から考えてたんですよ。で口ついて出たのは、

「えーだいぶ前なんですが『スラムダンク』を取り上げられた時にゲストだった一条ゆかりさんが「汗臭くない」という発言をされていて確か大月さんがその点にこだわってられてもう少し展開していただきたかった部分なんですけれども今回は岡田さんも大月さんも「汗臭い」という比喩を使ってられてその差異がどこから生じるのかというのをうかがいたいんですけれども」

といったことをろくに読点もきざまずだらだらと垂れ流したのでした。睡眠4時間弱&未見の土地への片道6時間行脚による疲労、おまけに指定された席は前から2列目の中央で出演者陣との距離は6、7メートル?表情、はっきり見えるのよ。視線だってビシビシあうし、緊張だってするわよ。そりゃ脳みそ空焚きおこしたってしょうがないでしょ、フンだ。(逆ギレ)
でもこれ、実際に俺としては、『スラムダンク』の回見た時からひっかかってた点だったんですよ。まあ今にして思えば、10年以上前の放送内容に関する質問なんか放送されるわきゃねーよな、つまり尺のムダだよな、って感じですが。(すんませんねぇ)一応、大月さんが今回の収録にのぞむにあたって、『スラダン』回のビデオ見てきてるのは、いしかわさんに絵の話ふる時、「前に『SLAM DUNK』やった時のビデオ見たら、絵については・・・」といったフリしてたことで(※未放送部分)、確認済みでした。
で、いただいた答えは次のようなものでした。。(※あくまで私個人の記憶に頼った要約です)

大月:僕が当時持った印象としては、まあ一条さんはああいう方なんですけれども、そういう読み方(※称え方として、キャラにきゃあきゃあ言うのがその表現で、物語としての熱にはあまり感応しない、みたいなこと、多分。萌え?)をする読者が出てきてる、ということに対して、不思議なものを見るような印象を持った。*14そういう脈絡での発言。
夏目:「まあ本宮ひろ志みたいなのはともかくとしてだな(笑)」、作品自体が汗臭いかどうか、という話じゃない。僕が、あ、すごい!と思ったバスケのシーンでも、(※柴田淳を指して)全然関心のない人もいる(笑)。それぞれの読み方の問題。
いしかわ:「スポーツ経験あるかないかの差だよ」
大月:「まあ、これ以上は漫画のリアルとジェンダーの話になっちゃうんで(苦笑)。これでよろしいですか」

「ありがとうございました」、と一礼した私は、実際満足していました。やー、口に出してよかった。今考えると、ああいう場に来てあんな質問する人種なんだし“これ以上”聞かせてくれよ、という気がしないでもありませんがね正直うふふ。
しかし、あらためて書き出すと見事に各人の返答スタンスがバラバラでおもしろいですね。案外、いしかわさんの一言が一番的を得てるようにも感じられます。大月さんは、最後の一言そんなワルぶらなくてもなぁ、とも。あと岡田さんはこのコーナー、完全にネタ発言に終始してました。「一条ゆかりさんは不思議なものなんですね!」とか(笑)。
私の後にも二人の方が質問してましたが、さすがにそれは俺が内容書いちゃうのもどうかと思うんで、省略。というか頭ゆだってたんで、よく覚えてねえです。


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さて、7ヶ月前に私はこの記事をどんな風に締めるつもりだったかというと、こんな感じ。

では最後に、3月にならんと出なかっただろうこんな感想を。

いしかわ:「高橋ってずっとほら、ずっともう俺たちは、やなヤツじゃない」
大月:「最初からね」
いしかわ:「ずーっとマイナスポイントを、ずっとどんどんどんどんためてて、それがある日ひっくり返ると、突然プラスになるんだよ、おっきな。だから今マイナスをずっとどんどんためてて、今、カベ見つめ始めたから、そろそろひっくり返ると思うよ(笑)」

サマーウォーズ』の翔太兄ですね。(ラスト7分!)

いやホント、最後のクライマックス、開戦を告げる翔太兄のアレがもう大好きでねー。ていうか、ハマり過ぎてたんですね当時。



というわけで、1年後の今。1年かけて、ついに高橋が!なのです。
では最後に、先週にならんと出なかったヤンジャン掲載、井上雄彦氏と佐藤大輔氏(※『リアル』プロモーションムービー製作)の対談からの引用を。

佐藤 「リアル」も取材ありきですか?タイトル通り、リアルなんで。
井上 作品によって違いますけど、「リアル」は取材ありき。佐藤さんにとっての材料と同じで、取材して喋ってくれたことや体験があって、その中からどう漫画にするか。僕は自分を通さないと描けないので、確かにその人の真実なんだけど、自分を通さないとその人の真実も呑み込めないいくら真実だからといって、自分が呑みこめない、感じられないことを描いちゃだめだろうなと思うんです。
佐藤 じゃあ、材料をストックして、これだっていうのがあったら、そのままいくとか?あるいはこの話の中に、これが使えるなとか、そういう作業ですか?
井上 それほど頭がいい感じではないですね(笑)。こうだっていうのはあまりないですね。
佐藤 3人にしようっていう設定は、もう最初から?
井上 いや、2人でしたね。戸川と野宮っていうのがいて、高橋っていうのは野宮の嫌いな奴っていうのでしかなかったんですよ、最初。何でああなったのか思い出せない(笑)。今見返すと、最初一回出たらもう出てこないみたいな顔の描き方してるんだけど(笑)。
佐藤 本当ですね(笑)。でも今となっては高橋も外せないですよね。
井上 そうですね。表紙も3人で回してますから。何かそういうのがあるほうが面白いんですよね。予定外のキャラが成長をとげるっていうか、前に出てくるっていうか、主役のように振舞いだすというのが面白いですね。描いてても、こんなふうになっちゃったみたいな。描き始めたときには全く予想もしなかったところにいつの間にか来てるっていうのが楽しいですね。例えば、スラムダンクの三井とか。あれは、ただの不良だったんですけど、実はバスケ部員だったみたいな。

まさしくリアル、ですか。そして、それ体感した各人のリアル持ち寄った場、批評媒体・BSマンガ夜話のリアルさ、でありますか。



というわけで、結局私が何を言いたいかというと、『リアル』、おもしろい!そして、BSマンガ夜話、おもしろい!というお話ですよ、うん。引用してないけど、おもしろいシーンまだあるんだよ。ていうか、実際に番組見る方がずっとおもしろいよ!(それ言うか)そして、他にもおもしろい回がまだまだあるんだよ。ということを、私自身が思い出す一助みたいなことになってきたな、なんだかここに来て意識上。儀礼だか祈りだか。
というわけで、「マンガ夜話、再放送して!」とか「マンガ夜話、新作やって!」というリクエストをNHKに出そうとちゃんと思った。余談ですが、先日の深夜に再放送されていた、実際の車椅子バスケを取材したNHKのドキュメント番組「俺たちのリアル」も、よい番組でした。*15ああ、年末には「ゼロ年代 珠玉のアニメソングスペシャル」もといエアマスター』と『バジリスク』のノンクレジットオープニングも再放送されるんですね、よかったよかった。半年間再放送されないから、やっぱりなのはの裸がまずかったのかなー、と思ってた。・・・これじゃ終われんな。あ、NHK総合で日曜朝やってる連続人形活劇『新・三銃士』、明日のあれはすごいよホント。





※今回の記事さー、会場の写真掲載して終わったりしたら、すごくよかったと思うんだよ。
でもね、それ撮影した(※出演者入場前・退場後は撮影OK)携帯電話は、年末に水没してデータ飛んじゃったの。
茶色いケータイだったんだけどね。水流してさ、立ち上がってさ、ふと便器のぞいて、なんで流れないんだこのウンコ?って・・・あの数秒の逡巡さえなければ・・・100%実話。それが俺のリアルだった。台無し。しかし、それでも書きたい、という心性が私のリアルでして。すいませんねどうも。



※関連記事

*1:井上雄彦ぴあ (ぴあMOOK)

*2:くわしくは夏目氏の著書『マンガ 世界 戦略』マンガ 世界戦略―カモネギ化するマンガ産業を。

*3:そういえば夏目氏は昔、著作で『童夢』(大友克洋)のベンチでチョーさんが震えるコマ引用して、「(多くの人が持つだろう印象と異なり)大友の絵にもマンガ記号はちゃんと使われてる」といった話をしていたのでした。

*4:ま、テレビゲーム業界の方では99年に、須田剛一が立ち上げたグラスホッパー・マニファクチュア社の第一作『シルバー事件シルバー事件やら、ラブデリックの2作目『UFO -A day in the life-』UFO A day in the lifeやら、“もう「恋愛」描いたギャルゲーとかこれ1本でいいじゃん”な怪作『キャプテン・ラヴ』キャプテン・ラヴとかが出てるわけでして。作り手のスタンスと読まれ方、という点ではマンガの方と一致した状況ではあっても、それは同時にコンテンツバブルの中で物語を見せる際、アドベンチャーゲームという体裁をとる際に、いかに屹立させてみせるか、その可能性にどう夢を抱くか、という問題でもあったわけです。あ、ここあくまで“俺好み”という範疇での話よ。いち生身の単なる主観よ。見ちゃダメ普遍性(笑)とか。/で、完全に余談なんですが、近年「マンガのデジタル化で新しい可能性〜」云々言い出された方々は、“TVゲーム”という媒体の存在をどのように意識された上で、そのような言葉を口にされてるんでしょうか。ま、既存コンテンツの再利用しか考えてないってんなら別にそんな物言いも可だけどねー。

*5:ちなみに、武道家でもある内田樹氏による、『バガボンド』作中の身体感覚描写の分析についてはこちらの記事を。

*6:チャンピオンで行なわれた特集企画、水島新司画業50周年記念号(2007年34号)での井上雄彦のコメント「漫画に導いて下さってありがとうございました」見ると、「スラムダンク」回での岡田氏の推測もあながち間違いではないのかな、という気もしますが。あと、寄稿の内容が実によかったですよね。殿馬VS桜木!

*7:正確には、高橋が事故にあうのは1巻収録分の話です。

*8:正確には「台湾旅行」。

*9:志村貴子ファンは誰も共感しないでしょうが、志村作品におけるセックス描写って、いしかわじゅん作品におけるそれと、位相としては近い印象受けるんですけどね俺。まあ、いしかわ作品はそんなに読んでないし、“当時”も知らない若輩者なわけですが。

*10:「テーマ」とは本来、作品全体の文脈込みでそうなる、直に体感した読み手の中で“そんな風”に形成される、という類のものだと思ってるので。(橋本治もそう書いててくれたし!橋本治という考え方 What kind of fool am I)その意味じゃ、「泣きゲー」なんてレッテル貼られて「並行世界」てな構造分析(笑)で済まされた『CLANNADCLANNAD -クラナド- 初回限定版なんて、(ギャルゲーなの差し引いても)かなり不遇な作品かもしれませんな。

*11:この仕事の依頼来たのは、マンガ夜話みどりのマキバオー』回で大月氏が見せた、生放送10分以上使っての賞賛一人語り(夏目氏いわく、「講談」)受けてのことだろう、絶対。

*12:実際に「エヴァ系」だの「サイカノ系」だのと口にしてみた時に感じる“であろう”(←あくまで、genbara-kの想像)違和感から目を背けたいのかな、なんて“邪推”したりもしてますけどね。

*13:むしろ私が“日本”て印象受けるのは、会田誠の作品群からだったり。

*14:なお、1996年のマンガ夜話開始にさきがけて、1993年にNHK教育テレビにて「やおい」を語る番組が放送されていたそうです。(参照→http://slashdot.jp/~SS1/journal/497870

*15:飲み会の一幕もありましたよ、『リアル』然り。