週刊少年チャンピオン2018年12号

  • 表紙が弱ペダ10周年で、表2広告がクラシックモーターショーという。巻頭カラーもずらっとペダル企画の中。

渡辺航弱虫ペダル』/色紙集、この前の浦安での同企画に比べると常人揃いだな。(そりゃそうだ。)/カラー袋とじ、OB頼みになっちゃうのは仕方ないのか。本編、脱落が有終の美として機能するという意味では先輩陣から切るのもありなのか。しかしなあ。

板垣恵介刃牙道』/タイトル通り、近代格闘技の“道”としての話が主眼となる最終戦、てことかしらん。なら本部も前座だけども。

板垣巴留BEASTARS』/ネットにあげる動物の写真なあ、と言うと意味異なるが。いかにもな笑顔で筆文字「後光!!!」の逆に嫌味な感じが、女の描く女って感じでもう。ファッションについての会話のディティールの面白さ、こういうのを世界観と、SFと呼びます。いい友情回だ。あとナマケモノかわいい。

荒達哉『ハリガネサービス』/まあスポ根ものとしてはそれなりに目にするパワー型無謀キャラだが、決勝戦の勝負セットで出すあたりがこの作品の異常性。

●ニャロメロン『ベルリンは鐘 ヤッホー!』/メタファーって単語おもしろくなってるだけだろ、でも好き。普段はメタネタばかりで、夢の中では生理的ネタというのもなんつうか。

浜岡賢次毎度!浦安鉄筋家族』/ジブリネタにしても、この作品で紅の豚のそこやる?というね。あと作者が嫌いなカリオストロの城キャラを蹴り飛ばして最後はルパンネタ、て結局好きなのそっちじゃん。/浜岡賢次古谷野孝雄米原秀幸による鼎談掲載。石山東吉の所が関西人ばかりだったというのは、石山氏が車田正美の前にどおくまんの元でアシスタントしてたのと関係あるんだろうか。

増田英二『週刊少年ハチ』/ヒロインの服、こういうのが本来の意味での童貞を殺す服ってやつでしょ?いずれ彼女の内面も掘り下げられるとは思うが。読み切りの原稿料なら、これでアシスタント確保できれば安いものかねえ。

●瀬口忍『囚人リク』/最終回。センターカラー扉の顔群が愛あっていい、しかし鬼道院(笑)。畜産上手の高木さん。/各々のハッピーエンド。あえてすっ飛ばした面もあろうが、こいつらなら大丈夫、という信頼の形としての幕引きだな。これまでの物語を背負っての。熱い、いい作品だった。お疲れ様でした。

平川哲弘『ヒマワリ』/デレアニ3話ですね。それはともかく、ライブシーンどう描写するかと思っていたら、パンパンの歌詞表示の方が特殊なのか。歌う側になったらまた違うかな。神楽のシーンといい、決めポーズのモンタージュだけではねえ。

桜井のりお『ロロッロ!』/みつどもえでは字面のみでセーブしてたレベルの危ないネタも、中学生&ロボ設定ならビジュアル化OKということだろうか。陰キャラにからむうざキャラ、という行動の形になるのも設定的には然り。

佐藤タカヒロ『鮫島、最後の十五日』/親父…。

●盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ』/ディティールのリサイクル感。

西修『魔入りました!入間くん』/ディティール皆無の雰囲気テンプレでなんとなく読み飛ばしてくれ感。

●重本ハジメ『逆襲インフェルノ』/怒りで発動する手か。造形的に自分に伸ばされる手というイメージも入ってる?

●伊科田海『GREAT OLD~ドラゴンの創り方~』/触手は便利。

森田将文『出陣★昆虫武将チョウソカベ!』/おお、ちゃんと単行本出るのね。すでに友を掴みにいける少年なのだ、いい話じゃないか。

小沢としお『Gメン』/妊娠なあ…。どうまとめるやら。

週刊少年チャンピオン2018年11号

板垣巴留BEASTARS』/巻頭カラー&増ページ&人気投票開催&作者インタビュー掲載。押されてるなあ。インタビュアーはちょくちょく関心引く記事書いているライターの粟生こずえ、というかそこ外部委託するのか。再利用されるのかもしらんが。発言読んでて、新井英樹に近い作家性かな、と思わんでもない。ミルモでポン!といえば土屋理敬。/パンダという“異種”に生まれた肉食獣の、エゴとしての人道。性分としてはレゴムと通じ合うわけだよな。こっちはこっちでその目的から、手段としての結婚という所に発想飛ぶ暴走&特殊性なわけで。最近見た動物が異種結婚するマンガといえば、ハクメイとミコチ

渡辺航弱虫ペダル』/最高の青空、とこの辺は1日目の独走時と対比してるんだろうか、観客の存在ふくめ。主人公チーム、結局去年と同じメンツが残るのは、うーん。

浜岡賢次毎度!浦安鉄筋家族』/この一ネタのしつこさよ。大鉄相手だと青田くんも大胆に動くってことなのか。/吉田聡との対談掲載。作品の影響という点は言われてみれば納得。吉田聡、ネーム書かないのかあ。

●中村勇志『六道の悪女たち』/温泉旅行…スキーとかじゃないのね。新ヒロインは闇金業者。お前は吸血鬼じゃ、お前みたいなのはソースの血を吸っておけばええんじゃ(はだしのゲン)。

桜井のりお『ロロッロ!』/下着はね、さすがに中学生だからね。しかし、主人公は持ってないらしい、うみこに比べて明らかに知識不足、父親にもはずかしがって言えない、といった描写群は真面目に男親家庭のつらさに見える。故に友情という浄化エンドは正しい。オチが吹っ飛ばすけど。

水島新司ドカベン ドリームトーナメント編』/9回裏2アウトに。以前、ラストページが1ページ大ゴマの電光掲示板の数字に「日本最速だー!」で次週に続いたことあったけど、今回も“数字”のインパクト強い。


→データとしての数字じゃないのよな、球速という概念の攻撃力の絵である。観客席の盛り上がりも民話風味あるし。

増田英二『週刊少年ハチ』/ハチと猿なら猿蟹合戦では、と思ったが忠犬ハチ公か、と今さら。浦安の犬もハッチだけど。作品から見える人格の絵としての表現はおもしろい。普段の人柄と創作(フィクション)に映る別面というモチーフは前作にも通じるかね。最後に登場する新キャラは何をもってNo.2なのか、やっぱりポンコツ化するのか。

●伊科田海『GREAT OLD~ドラゴンの創り方~』/共鳴やら従属やら、ちょっとイムリを思わせるフレーズ。主人公についた口の部位も、まだ本来の能力は発揮してないのかねえ。

佐藤タカヒロ『鮫島、最後の十五日』/しばしば曽田正人作品の熱量に例えてきた作品だけども、この主人公とライバルの関係はまだ信頼であり絆ではあるのよな。少年マンガ文法としての。しかし作劇としてはこの先に、おそらく“神”を見る展開が待っているわけで。

荒達哉『ハリガネサービス』/サービス回に言うのも野暮だが、やっぱり脳筋はチア部なめてるよね。

●重本ハジメ『逆襲インフェルノ』/めでたしめでたし、とはならないか。ダークファンタジー風ロードムービーになるんだろうか。

木々津克久『開田さんの怪談』/読み切り。もろにからかい上手の高木さんフォーマットながら、ホラ話ディティールによる幻惑という点はこの作家らしさか。/そういえば以前載った高木さん作者の読み切り、単行本収録されちゃいましたな。わりと面白かった&続編見てみたかったので、やや残念。

●瀬口忍『囚人リク』/その感情を仲間に肯定され、背景に昼の月を背負って。怒りの拳、と見開きでの泣き顔。ウソで騙して議員達を救ったこととあわせて、無垢な少年であることとの決別が、この物語の終着点に。次回、最終回。

小沢としお『Gメン』/先生達みんな微妙に小ずるい人間くささがよいね、後輩も馬鹿っぽくて。瞳先生そういう計算かよ、女はこわい。

森田将文『出陣★昆虫武将チョウソカベ!』/三角関係、と呼ぶには主人公のモノローグがまた異層なんだよな。孤独感についての述懐なわけで。最後の身もふたもない殿のセリフには笑ったが。


コミックビーム2018年2月号

●市川ラク『わたし今、トルコです。』/単行本発売記念巻頭カラー、というかカラーで宣伝パート。丸尾末広の表紙絵めくったらこの絵柄という落差、よいな。

→動物パラダイス。体験エピソード重ねて、ラスト1ページにさらっと背景解説のさじ加減。

丸尾末広トミノの地獄』/連載再開、最終章とのこと。再会、嫌な予感しかしないよ。

いましろたかし『新釣れんボーイ』/引っ越し。こっちも伊豆なのか。

三宅乱丈イムリ』/うわ、読んでてまんまと引っかかった(嬉)。物語としてもいい利き。ガラナダの袖で隠す口元に浮かぶ笑みなんて、本当いいところ拾うよね、描いて見せてくれるよね。
/構成面で巧いと思ったのは、(誌面ノドのノンブルでの)12ページ3コマ目。場面としては、こちらに体の正面向けた五人の陣営と背中向けた一人の話し合いで、背中の人物が言葉発した直後。横長コマの右端にて、やや角度ついた正面顔と後頭部で向かい合う二人→その左に、後頭部の人物の方に視線向ける二人→さらにその左に、正面顔の人物の方に視線向ける二人、という図。これはつまり、読者の視界に絵が入るタイムラグと同期して、声をかけた側とかけられた側→声を発した相手側を見る(二人)→声かけられた自陣の側を見る(二人)、という状況が起きているわけだ。瞬間ではなくパンとしての読ませ方をする一コマ。

やまじえびね『みずうみ』(原作:テオドール・シュトルム)/集中新連載。いかにも恋愛古典文学という感触だが、前連載との落差考えるとなかなか。テーマとしては同質なのだろうが。

上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/絵力で笑わせる実直。「知覚の外」で妖怪モチーフなのだから、合ってはいる。

おおひなたごう目玉焼きの黄身 いつつぶす?』/これは自炊にとってはむしろマイナスかもしれんのだよなあ、わりと適当に米炊いてるもので。

●伊図透『銃座のウルナ』/結局逃れられない、という話になってしまうのか。ううむ。

三家本礼『アイアン・ゴーストの少女』/出オチブラフも、この作者ならではの真実味(?)である。

桜玉吉『2017年の暮れ』/読み切り。文春の連載、枠自体をコピーとってるのか。しかもコンビニで。機械オンチはねえ、俺もコンビニバイト時に同僚のおばあさん店員でコピー機も店舗端末も操作一切覚えず他人任せの人いたから、なんかもう頭が拒否してるんだと思うよ。あ、そうだ、ATMで前のババアが操作全然できなくて後ろの行列どんどん伸びてるのに、ふり返って「わからんから手伝ってほしいんやけど、アンタじゃなくて女の人がいい」て言ってきやがったことあったわ、あれよりこのおばあさんの方がずっと健全(?)。

加藤伸吉『永久律動』/読み切り。意外な作家の登場。下北沢を舞台に、相も変わらぬ画力と描写力。混沌を絵にすることで受容する、という表現だよな。

●conix『青高チア部はかわいくない!』/不意討ちのドカベン、は小ネタ。うむ、正直わからん、なのがメインのバストネタ。回をまたいだ&一話中ずっと作業&ディティール解説、で本当にしんどそうな折り鶴ネタ。

唐沢なをき『僕らの蟹工船』(小林多喜二蟹工船』より)/ひっでえなあ、もう(笑)。せんいんのみんなはかにになってしまうのでしょうか。次回最終回。

山川直人『小さな喫茶店』/けもフレネタではない、たぶん。その人が異人に見える、私もまた異人なり。人も替わり場所も変わる、その中でのめぐり会い。マンガ雑誌も似たようなものよ。

イシデ電『猫恋人』/いい話続くけど、前連載読んでるといつ闇が出てくるかという不安がなあ。猫いたら大丈夫かな。

近藤ようこ『蟇の血』(原作 田中貢太郎)/最終回。これぞ昔話的な不条理。おどろおどろしいのう。お疲れ様でした。

●仲能健児『ジムリ』/読み切り。便所と女、エロスとまがまがしさ。

山田参助あれよ星屑』/最終回。そうか、父と息子の人物像がそう並べられるのか。最後の酒はいいですね、男でタナトスでちょっぴりエロスで。いい作品でした。お疲れ様でした、ありがとうございました。

●おくやまゆか『むかしこっぷり』/これもまた「家族」なのだなあ。

カネコアツシ『デスコ』/最終回。その中で生きて死んだ、彼女の物語であったか。山本英夫が『殺し屋1』描く為の取材で会ったマゾヒストから、もっとも望まない瞬間に殺されたい、という話を聞いたそうだが、それに通ずる終わり方でもあるな。お疲れ様でした。




  • 公式ツイッターでも画像あげられてたけど、見開き単行本広告が濃い。

  • 最終回の巻末コメントなのにアシスタントの単行本宣伝に活用する山田参助
  • コマンタレビーマーはのぞき魔侍。(打ち首)
  • 唐沢よしこコラムは杉浦茂ゴジラを読む息子。

週刊少年チャンピオン2018年10号

○付録に浜岡賢次高橋ヒロシによる相互作品コラボポスター。高橋ヒロシドカベン刃牙でも記念号要員だな。

○連載作家によるイラスト寄稿。自作品あわせで増田英二のベム、板垣巴留のハッチあたりはいいとして、森田将文の危機、中村勇志のペコは変わった所ついてきた。板垣恵介の垣、桜井のりおの勇はわかってる感。重本ハジメの美女化した仁ママは一体(ちゃんと仁犬までいるし)。

○新シリーズのタイトル公募企画。締切から1カ月後には新連載、て早いなおい。

浜岡賢次高橋ヒロシの対談掲載。クローズからWORSTの間が気が気じゃなかった、てQP連載やサンデーで読み切り出してた時期か。

浜岡賢次の歴代担当11人座談会という謎企画。初代担当の樋口氏の名前はどっかで読んだな。小林よしのりがデビュー前から才能かってたというエピソードはおもしろい。晴郎のモデル編集者は確かに似てるが、これで似顔絵10個しか出てないのは悲しい。あと元秋田書店社員・コミックビーム編集総長の奥村氏も語ってたような話がここでも。






浜岡賢次毎度!浦安鉄筋家族』/全選手入場ネタ、てちょっと前に吸死でやってて、それに対して俺も浦安の場合とは異なり、みたいな感想書いたばかりなんだけども。今号掲載のお祝いイラスト描いてた盆ノ木先生が、昔の浦安は記念回でこんなのやってたな、という連想からのあのネタ、とかだろうか。/ともあれ今回は、初代でやってた○○回記念=選手入場ネタ前提なので、重ねてさらにずらしてとだいぶねじれてる印象。ここはもう観客席のモブ空間に着目して、まんま刃牙たるストレートぶりで笑っておく。狙撃手。/あと、全然覚えてなかったけど過去記事検索したら、浦安20周年号では10年後に続くオチ、刃牙25周年号では柳が登場した所で5年後に続くオチやってたらしい。そりゃ今回は「勝負ありッッ」で出オチ強制終了にもなるよ。

渡辺航弱虫ペダル』/勝っちゃうのか。真波のコメントが聞きたい。

板垣恵介刃牙道』/読み合いで勝てぬのならば、からめ手。前回、本部の語っていた刃牙像、遊ぶ・楽しむに通ずる戦法がこれってことか。つまり“刃牙道”であると。責務として戦った本部に語らせて、殺された烈と同様の武器ありルールで、義で動いた花山と同様に刀を投げつけて、その上を遊ぶと。

増田英二『週刊少年ハチ』/これも精神的にはタイマンはったらダチ!展開か。二人とも挑戦者の立場であり、ライバルかつ同志。今時分のマンガ学校はデジタル作画の指導についてはどうなってるんだろう。己の読み方を他人に左右されるのはよくないですねえ、ましてや集団内での承認やポジショニング前提になっちまったら。

板垣巴留BEASTARS』/おのろけもまた胆力、高木さん的な(?)。肉食としての武器よりも精神的適応をとる身体、とこれは進化なのだろうか。すごいね人体メソッドか。

●盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ』/力こそが正義、て大体いつもそうだな。

桜井のりお『ロロッロ!』/内面なくてセリフで幻惑、とまた厄介そうな新キャラ。オチもだが柱アオリもひどい(正しいけど)。

平川哲弘『ヒマワリ』/ベタだなあ、だがそれがいい

水島新司ドカベン ドリームトーナメント編』/静のどアホ、動のうおおおお(162)。
 
荒達哉『ハリガネサービス』/以前の感想で交通事故後に大食いに目覚めた人のこと触れたけどさあ、シラフでやんのかい。主人公も頭打って止まった時の世界に入門するしかないですね、はい。

佐藤タカヒロ『鮫島、最後の十五日』/純粋なバトルの世界には相手しかいらないんだよなあ。滅びの美学に近いんだけども。

●重本ハジメ『逆襲インフェルノ』/主人公格三人、見得切ってそろい踏み。いい絵面だ。

●瀬口忍『囚人リク』/ふり上げた拳は、はたして。残り2話。

小沢としお『Gメン』/因縁の相手を殴り飛ばして決着、はいいんだけども、リクの葛藤とのギャップでちょっと笑ってしまった。そんで警察オチかい。

森田将文『出陣★昆虫武将チョウソカベ!』/いい嫁さんじゃないか…。これは強い目標だわ。

石黒正数木曜日のフルット』/このシリーズの造形はちょっとBEASTARS入ってる気がする。色恋が軸だし。


いしかわじゅんの福本伸行評(2000年2月刊行の本より)

マンガ夜話 (Vol.7) (キネ旬ムック)マンガ夜話 (Vol.7) (キネ旬ムック)
キネ旬ムック「マンガ夜話vol. 7」247ページ掲載、『賭博黙示録カイジ』に関するいしかわじゅんのコラムより一部引用。



 福本を最初に見たのがいつだったのか、まるで覚えていない。
 つまり、その程度の存在だったのだ。
 読んだ時に、特に強烈な印象を持ったというわけではない。すぐメモしておこうと思ったわけではないということだ。
 しかし、存在は、記憶にある。かなり初期から、福本伸行という漫画家がいて、泥臭い漫画を描いていることは知っていた。そのくらいには、どこかに引っかかる存在感があったということだ。

(※中略)

 福本の漫画を読んだ印象は、〈必死〉だった。死に物狂いで、彼は作品に取り組んでいたに違いない。誰が見ても不器用な作風は、きっと、夜も寝ないで推敲したあげくのことだったと思う。洗練にはほど遠かったが、自分の存在できる場所を求め、果てなく広く見えていただろう漫画界という大海原で溺れないように、きっと福本は、必死であがいていたに違いない。
 少なくとも、あの作品にかける必死さだけでも、ほかの退屈な漫画よりはずっといいんじゃないかと、ぼくは思っていたのだ。自分がやっていることが、表現というものだということも忘れてしまった、あるいは気づいていない、日常に安穏としている多くの器用なだけの無能な漫画家たちよりは、ずっと面白いんじゃないかと思っていたのだ。



ここでいしかわの言う“価値”が、現在の福本伸行作品にも認められるかといえば、なかなかつらいものがあるのは否めない。
しかし、だからこそこの文章は、ある瞬間確かに存在した作家性を、その生身を、熱を、実存を的確にすくい取った批評であると、私には思えるのだ。
賭博黙示録 カイジ 1賭博黙示録カイジ(1) (ヤングマガジンコミックス)