コミックビーム2018年9月号

●谷口菜津子『彼女と彼氏の明るい未来』/新連載。近未来が舞台のラブコメ…か?物語の要素的に『ルサンチマン』みたくなりそうな気配も。

三宅乱丈イムリ』/ヴィテジが否定した「高貴な民」のことを思い出す。血でも位でもなく、意志が今。ミューバが自嘲の笑みをもって告げた“真実”に対し、見開きで向かい合うイムリ達というこの構図の静謐、それの示す物語よ。ガラナダが信用される人物だったからこそ、(利用はされても)この綱渡りの状況を生みえたという構成も実にいい。

●伊図透『銃座のウルナ』/ポスターは日本語フォントなのか。国家に包囲される個人という状況を、こういう形の物語で見せてくるわけだよな。暗躍する者の姿も。

丸尾末広トミノの地獄』/ええ、そこで話つながるの?

●田辺剛(原作:H.P.ラブクラフト)『時を超える影』/いわば“設定解説”なわけだが、あくまでそれは語り手個人の認識であり、「話」として描かれるという。再登場するダイアー教授との対比でもあるわけだよな、その点。モチーフの面では、前号で完結した『セリー』とも対比になるのか。

●ハセガワM『マリアの棲む家』/鮪オーケストラから改名し、新連載。館が舞台のホラー。

●小山健『スーパーヒーローになりたくない!』/読み切り後編。意外や、ビターエンド。ヒーローになれない者の物語であったか。呉智英いわく博愛という単語は誤訳らしいが、その正義に至れない・守られる身であることの切なさ。おもしろかった。

●conix『青高チア部はかわいくない!』/無力ではない、と自覚させる為にも返礼は大事。燃えるぜ。No black and white in the blue.次回最終回。

おおひなたごう目玉焼きの黄身 いつつぶす?』/すじこ編完結。普通にグルメ漫画の体になっちゃうのはちょっと違わないか、とも思うが、ホームドラマとしてあったわけだからまあコミュニケーションの一環か。

●原百合子『繭、纏う』/あ、時系列勘違いしてたわ、今は嫌味も言える仲ってことね。それぞれが刻印となる出会いを経験していると。個人的には、このぼかし方もまた少女漫画風と読める。

イシデ電『猫恋人』/毛フェチ。こういうビッチを猫っぽい女性というんですか?(怒られますか?)

磯本つよし『ゆらり埼玉終末グルメ』/読み切り。女の子!SF情景!メカディティール!チェイスアクション!メシ!というわけで『スペースシェフシーザー』ではなく、磯本つよし作品である。ポストアプカリプスな世界観の中、そこで生きるドタバタなりほのぼのなり。連作でいろんな側面読ませて欲しいなあ、これ。好きだわ。

羽生生純(原案:片桐健滋、梅本竜矢)『ルームロンダリング』/声が聞こえないことによるズレの描写も、構成力の高さ故の読みやすさ。そして、急転。

上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/ショート集。やはりウエケンといえばプリキュア!(そうでもない)

●オカヤイヅミ『ものするひと』/字面だけで見るとまだるっこしいくらいの長台詞ながら、これを逡巡でありテンポとして読ませる間と流れの構成がよい。これと新井英樹が同じ雑誌に載ってるのもすげえよな。

●うすね正俊『砂ぼうず』/溜めに溜めてのついに脱出!でありながら、そのカタルシスも薄れゆくレベルの疲弊感と不穏なヒキ。奴らが来る?

●伏見かな子『小野塚、泳ぎます!』/読み切り。厚着で下の服を隠して外出というネタは『るきさん』にもあったが、こちらはかなり“現実”の地平。コメディ調ながら、モチーフを通してさわやかに幕。いい話だけど、ビームでやるのは正解なんだろうか。

中野シズカ『In the Garden』/最終回。最後も幻想譚で。トーンの技巧が圧倒的な作品であったが、「庭」という囲まれた空間を題材に描くからこその表現意識でもありえたのかな、と思ってもみたり。お疲れ様でした。

いましろたかし『新釣れんボーイ』/最終回。伊豆へ。今回は日常描写多めだが、やっぱりそこは面白いんだよな。でも政権批判も同じ地平にあるわけで、そこもやっぱり抜けんわけでな。未完、か。お疲れ様でした。


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