コミックビーム2017年4月号

  • 表紙は『地底旅行』。確かにカッコよい。

●おくやまゆか『むかしこっぷり』/シリーズ新連載。聞き書き、ということになるんだろうか。この絵で描写されるエピソード自体独特のおもしろさであるが、末尾に入る話者と作者のふれあい、その視線の距離感がまたいい。抽象化としての像でもあるのか。
上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/○休SF大会、として『コブラ』『21エモン』『宇宙戦艦ヤマト』『GANTZ』をお題に。それぞれの作品の流儀ふまえたパロディになっているのは流石である、くだらなさの上でな!
ジュール・ヴェルヌ、倉薗紀彦『地底旅行』/解説、もとい演説回。本分なのだねえ。
桜玉吉『二月の静か過ぎる夜に』/読み切り6ページ。街灯のない道というのはあるんですよ。いや、山越えないとコンビニないし兎も猪も出る実家周辺でも、さすがにここまでのドッタンバッタン大騒ぎは見たことないけど。
●conix『青高チア部はかわいくない!』/これも一昔前だと読モというキャラ付けだったのかな、と。振り付け解説は毎回やるのか。
●伊図透『銃座のウルナ』/戦地からの帰還者のフラッシュバックというのは聞く話だが、彼女の存在による見せ方はな。で、女性としてのモノローグ続いたところに、穴姉妹(?)のチュリッカが再登場という。揺さぶってくるね、“平穏”を。
須藤真澄『どこか遠くの話をしよう』/まっさらだったからこそなじめていたわけで、ひとたび異人だと、しかもこの断絶を自覚してしまえばな。チロの過去話は、喋らない意思から生まれた力、という事でもあるか。
おおひなたごう目玉焼きの黄身 いつつぶす?』/ビール後編。世界は広いのだよ、うむ。
●原百合子『とある神様の星』/読み切り前編。誌面的にもSFは珍しいな。須藤→おおひなた→丸尾→これ、という並びで、ファーストコンタクトものと言えなくもない。
松田洋子『大人スキップ』/ほだされ過ぎだよ、店長。こういう人間臭さのぞくキャラが上手いんだよな。いい先輩、だけども同い年か。
●市川ラク『わたし今、トルコです。』/エッセイ漫画からクーデター編に。これもまた“日常”か。
三宅乱丈イムリ』/甘い、甘いよ主人公。とはいえ、この物語がどんな結末迎えるか考えるとな。最終盤の決戦の様でもあるし。ドネークのモノローグ表す黒い吹き出しがはじけたものとぼやけた輪郭のものの二種類あるが、そのぼやけ黒の向こうの自分の前髪の向こうの鉄格子の向こうのデュルクの表情、という視界の絵のコマがおもしろい。また、会話劇から会話劇、イムリ達の状況を描写していき最後にミューバ、とこの切り換えの読ませ方がやはり巧い。
●仲能健児『ニベラ』/読み切り。食し食されるフレンズなんだね、すごーい!…すまん。妖しい少女の魅力。
やまじえびね『レッド・シンブル』/このダメ男感のひりつき具合。女への無理解、という話になってしまうのよな。
山川直人『小さな喫茶店』/タイマンはったら同僚!見世物としての闘いで、その中で。
羽生生純『恋と問』/心理戦というか墓穴の掘り合いというか、おもしろいコマ構成。漫画じゃない、は冒頭とラストでそう重ねるか。
三家本礼『血まみれスケバン・チェーンソー』/最終回。みんな生きてる(現時点ではネロも)、幕が上がる、とこの瞬間でシメか。語られる伝説として。はじけまくった痛快娯楽作品だった。長い間お疲れ様でした!


  • 単行本広告に電子書籍版の値段が並記されるようになった(「定価」と「電子版:希望小売価格」)のはいいことだが、値段の差もまちまちなんだな。
  • 次号より久野瑶子新連載。(以前の掲載は久野酸素名義。)