コミックビーム2017年9月号

※えーと、イムリの感想ほぼネタバレです。単行本派の為にもぼかしたくなるおもしろさ、なんだけども3話続けてはね、山場過ぎてもう。



唐沢なをき『僕らの蟹工船』/新連載。『蟹工船』パロディ、なのか。なにやら不吉な設定のぞく主人公だが。美青年&BL化は、男の肉体いっぱいな閉鎖空間である意味純真、という道具立てでもうお腐れ様的にも常道だよ、多分。なんか猫(耳少年?)の影あるけど、カレー沢薫の『猫工船』とは無関係だよね?南信長氏がしていた荒れる海の表現ほめるツイートは、確かになあ。


→しかもこれ左ページだから、読者の視線は右下から上方向に1コマ目を見ることとなる。三つのコマで順に、下から上、上から下、右から左と視線の動く方向をバラけさせるように絵と枠線を描いている。巧い。

●伊図透『銃座のウルナ』/ここでサブタイトルに彼の名か。故郷の自然と対比される形での、その姿、戦場の記憶。

ジュール・ヴェルヌ、倉薗紀彦『地底旅行』/窮地、王道、大詰め。

田中貢太郎近藤ようこ『蟇の血』/新連載。カラー扉絵三枚での、女の顔の異相ぶり。陽光と闇夜の差あわせて、風景描写の違いがいい。

●conix『青高チア部はかわいくない!』/運動部マネージャーとチア部の女としての目され方の違い的な、いわゆるスポーツものにおけるヒロインになれるか文脈的な、そういうことですかね?(疑問形)

●H.P.ラブクラフト、田辺剛『狂気の山脈にて』/出た、アルビノペンギン!正気じゃない、はタイトルかけてるのかな。幻惑される展開も、このコミカライズではビジュアルイメージ強いからね、また。

三家本礼『アイアン・ゴーストの少女』/謝罪ひでえ(笑)。前作とはまた別方向に主人公ふっ切れてて楽しい。

新井英樹『KISS 狂人、空を飛ぶ』/イメージ像の話にエアマスターの小西がダブるなど。特権階級つうか、危ない女(の子)だな。

●横山旬『あらいぐマンといっしょ』/さすがにトラックには勝てない、てまた急展直下な。次回最終回。

カネコアツシ『デスコ』/生きてたー!無理すんなよもう。こいつらに備える主人公…ではないよな。

三宅乱丈イムリ』/彼の夢から始まった物語が、今。それをもう映さない瞳と、失われたそれを見る瞳と。人生が物語として視覚化されるというモチーフ自体は『ペット』とも共通しており、もちろんその設定も物語展開も、連載前から作者は考えているのだけれども。10年以上の連載を経て読者に再度提示される物語の、この形ですよ。作家性よ技巧よ胆力よ。ガラナダに委ねられる選択は、彼をイムリとして扱うか、ということでもあり、今回描かれた“ここまで”と合わせ鏡となる思いを問われているわけでもある。

上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/『置き場がない!』という巨大ロボネタエロゲあったなー、BSマンガ夜話の『バビル2世』回で敵役のヨミ様がいないと物語にならないって話してたなー、と思いました。

●うすね正俊『砂ぼうず』/誘い込んで囲い込む。恐ろしい。

須藤真澄『どこか遠くの話をしよう』/捨てたはずが、あらためて得られた人との縁。そして、旅の終わり。

中野シズカ『ななふし』/読み切り。内容的にはホラーなのだが、ガジェットの部分で楽しさを感じてしまった。

山田参助あれよ星屑』/環境さえあれば、容易に人は染まってしまうという怖さ。内面としてはそれが、終戦後のたくましさとも通じているわけで。

山川直人『小さな喫茶店』/山川作品ではしばしば見かける火星人。同時期に掲載の、作者のビッグコミック増刊での連載も宇宙人ネタだったそうだが、共通ネタとかあったのかな。見過ごしちゃったよ。店名のまんまぶりに笑ったけど、二つの店、それぞれの人生ってことなのよね。個別の変わった縁、それのもたらす新しい縁。

森泉岳土『報いは報い、罰は罰』/最終回。内容的には王道ホラーだったが、この絵柄に合致する作風かというとなあ。挑戦作ではあったか。