アニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ」第7話(後半)

●花屋の店先、雨の降る外を頬杖ついてぼんやり見つめている凛。アイドルになる前の第1話、同じく頬杖ついている描写にて画面外で見えなかった表情が、これなわけです。
●島村家客間、卯月とプロデューサー。「すみません、こんな大事な時に風邪なんて」と卯月。紅茶とゼリー?を出して去る卯月母。
●「プロデューサーさんも風邪なんですか?」「なんだか、元気ないような気がして。」と彼の態度を気づかう卯月。目が泳ぐプロデューサーは、テレビ脇に並んでいるニュージェネレーションズのCDに気づく。16枚中1枚が開封済み、とこれは本人か親が買い集めたものかな。気まずそうにそれを見つめるプロデューサー。ニュージェネ組への不安。
●「私達、この先どんなお仕事するんでしょう。」と明るく言う卯月。プロデューサーと同じ方向を向き、同じくデビューCDを見つめて笑顔でそう口にする。「島村さんは、今後どうなりたいと思いますか?」と尋ねるプロデューサーに、はきはきと夢を語る卯月。見つめるプロデューサーは、やや驚きの表情。これはでも性格の素直な明るさもあるだろうけど、アイドルとしての自覚にも見えるんだよな、私には。
●「あの…」とやや言葉を濁らす卯月。「実はこの間のミニイベントなんですけど。」プロデューサー、緊張の顔。「ちょっと、心残りがあって。」息を飲み、膝上で両手握る。「私、せっかくのステージなのに、最後まで笑顔でやりきることができなくて。」つらそうな顔だったプロデューサーは、「え?」と意外そうな、拍子抜けした顔で卯月を見る。
●「だから、次はちゃんと最後まで笑顔でステージに立ちたいなって。凛ちゃんと、未央ちゃんと一緒に!」あっけにとられたプロデューサーの、正面からの顔。卯月にとっての失敗とはそれであり、“次”も見据えている。やっぱりアイドルだよ。
●島村家の外、去るプロデューサー、見送る島村母子。「プロデューサーさん!明日からもまた、よろしくお願いします!」と言う、卯月の満面の笑顔を回想するプロデューサー。雨の中歩く、その真剣な表情が傘の下からのぞき、走り出す。アイドルから頼られた、と自覚できたならば。
●雨の中の346プロ外の時計、15時25分。傘を置き、机上のライブ写真を手に取り、ドアを開けたところでみくとぶつかりかけるプロデューサー。写真上部はラブライカ数枚の上に凛。
●事務所内、ニュージェネレーションズ以外のアイドルとプロデューサー。作中における“集合場所”であるこの部屋に、ここまでは卯月と凛しか出てこなかった。未央から、凛から、イメージでシルエットから立ち去られたのと同じ体勢で、シンデレラプロジェクトメンバーと向かい合うプロデューサー。
●プロジェクトの将来への不安を口にするメンバー達。真面目な顔と声で「なんだか大変なことになってるんだね」と言う杏は進歩として、蘭子の「終焉の始まりか…」はおいお前、いいギャグ。
●「やっと…やっとデビューまで信じて待っていようって思えたのに…みく達どうしたら…!」というみくの叫びに「大丈夫です。」とプロデューサー。注目する一同。
●「ニュージェネレーションズは解散しません。誰かがやめることもありません。」伏し目がちのプロデューサー、正面からのカット。「絶対に――」目を閉じ、彼は前を向く。「彼女達は絶対に、連れて帰ります。」彼を見つめるアイドル一同。「だから、待っていてください。」
●ドアの前にたたずむ部長、出てきたプロデューサーとぶつかりかける。プロデューサーは一礼、決意の表情で走り去る。廊下に美嘉の姿も。雨の中を傘もささずに走る、のはどうでしょうか。若さか。
●入室し、不安げなアイドル一同に話を始める部長。「男はいつもまっすぐに道を示した」という言葉に重なる、ひた走るプロデューサーの姿。前回のペンライトの扱いに割かれた描写もその象徴であり、アニマス24話エンディング「まっすぐ」にも合わせた光景でしょう、これは。「シンデレラ達をお城へ送る無口な車輪」て喩えは上手くて、つまり引く馬でも指示する御者でも飾られた馬車でもない、てことですからな。そこに判断をはさまず、機械的に慣性で動いていた彼の「魔法が解けるのかどうか」。時計は15時12分。
●未央のスマホ画面。卯月からのメッセージが並ぶが、勧誘から「私ももっとがんばって、未央ちゃんや凛ちゃんに迷惑(以下は画面外)」と変化しているのが興味深い。プロデューサーに言った通り、卯月もまた自責している。
●そのスマホを軽く放り出し(プロデューサーからの着信時はベッド下に投げ捨てたので大分軽い)、「しまむー、ごめん。リーダー失格だよ…」と呟く未央。前回ラストの「私がリーダーだったから!?」はヤケになった発言ともとれましたが、彼女は実際にその責任を重くとらえていた模様。前半でプロデューサーから、あなただけの問題では、と言われた時の「そんなのわかってるよ!」も、そういう意味での糾弾と受け取ってしまったのかもしれない。
●プロデューサーからのメール(?)。雨の中たたずむこの覚悟は青臭い、がそれが彼の本質かも。不審者扱いされるプロデューサー、降りて来てフォローした(模様の)未央、ここは律儀。警官と通報者に頭を下げるプロデューサー、といつも通りの丁寧さですが、あげた顔の上がりぎみ眉と引きしめ口元に意志がのぞく。
●「じゃあ…」と去ろうとする未央。呼び止めるプロデューサーだが、「やめるって言ったよ」という弱々しい声に苦悶の表情。それでも未央の後ろから一歩踏み出す、その靴音と共に雨音が止む。「本田さん!」閉まりかけた自動ドアが音立てて開いてゆく、ということは扉の間にプロデューサーは体挟み込んだわけで、未央もたじろぐ。「もう一度、ちゃんとお話をさせてください!」ちゃんと、というか初めて、ですよね。
●花屋の店先、入り口にもたれている凛。彼女の“何もない”描写が挟み込まれます。あるいは、待っている?
●マンション廊下の二人。ライブの写真を未央に見せるプロデューサー。「先日、あれが当然の結果、と言ったのは、失敗して当然、という意味ではありません。あれは、成功だと思っています。」「…どこが?お客さんだって全然…。」写真に映る観客の笑顔を指さすプロデューサー。「いい笑顔だと、私は思います。」前半でラブライカも言った「一歩目」を成功とした理由ですし、前回、ライブ後の観客の映し方の違いにより、認識の差として示されていた点です。
●また、笑顔に価値を見る、という視線は、ニュージェネ組をアイドルに誘った時といい、プロデューサーの中で一貫している模様。自らの原点、をここで示しているのだろうか。
●自分はお客さんの数ばかり見てて、と悔やむ未央。「私の勘違いでみんなのステージ駄目にしちゃって!私、逃げ出しちゃったし…リーダーなのに、全然駄目じゃん!」ここで声の震えだけ聞かせて、落涙は映さないようにするのが上手い。自分のせいで駄目に、と考えている点は卯月もまた同じなんです。
●戻りましょう、と告げるプロデューサー。迷惑をかけたからこそ、このままはいけない、というのはプロデューサーの自戒でもあり。うなずき、泣き止む未央。雨がやみました。
●876プロだ!(看板)
●持ち歌を口ずさむ凛、1話で卯月と座った公園のベンチ。「しぶりん!」駆け寄ってくる未央とプロデューサー。謝罪を口にする未央に無表情なままの凛だが、「一緒に、アイドル続けさせてほしい!」という叫びに表情がゆれる。前に歩み出るプロデューサー。「あなたの言う通り、私は逃げていたのかもしれません。あなた達と、正面から向き合うことから。あなた達を混乱させて、傷つけてしまいました。」
●語り出す凛。「よくわかんないままここまで来て。でも、もうこのままは嫌。迷った時に誰を信じたらいいかわかんないなんて、そういうのもう、嫌なんだよ。」苛立ちの理由、信じさせてほしいという思いをぶつける言葉に、手をさし出すプロデューサー。「努力します。もう一度、みなさんに信じてもらえるように。」車輪以上になる心構えが、ようやく出来たと。
●見つめ、いったん伸ばすもとまどう凛の手、それを横からプロデューサーの手とつなぎ合わせる、未央の両手。「もう一度、一緒に見つけに行きましょう。あなたが夢中になれる何かを。」三人から星空へのパン。
●事務所内。「ごめんなさい!」仲間たちに頭を下げる凛と未央。その二人に飛びつく卯月の涙声、背後で笑顔の面々。「皆さん。待っていてくださって、ありがとうございました。あらためて、シンデレラプロジェクトを進めたいと思います。みんなで一歩ずつ、階段を登って行きましょう。」「はい!」プロデューサーの言葉に返事する一同。全員リスタート。時計が15時42分に。
●少しだけ微笑むプロデューサーに、丁寧口調をやめてみたら、と提案する未央、わきたつ一同。「努力しま…す…する。」脂汗で、今回初めて首元に手をやるプロデューサー、いつもの調子に。事務所内の喧騒を聞いている美嘉とちひろ。
●ニュージェネレーションズ、初ライブ会場。たたずむ卯月、凛、未央と背後にプロデューサー。やや固い顔の二人に対し、笑顔の卯月。「次のステージ、楽しみですね!」卯月の言葉にきょとんとし、表情をゆるめる凛と未央。3話、6話のライブ前とあわせて、三人はすでに支え合う間柄になりえている。
●並び、手をつなぐ卯月と凛と未央。背後で少しだけ笑顔になり、プロデューサーもうなずく。「フライ・ド・チキーン!」階段に足を踏み出す三人。ようやく踏み出された、ニュージェネレーションズの第一歩目。



●というわけで。うまく作ってある、という点においては文句ないのですが。個人的な好みで言えば、今回の内容は正直ピンと来ませんでした。その大きな理由は、私にとってアニメ「アイドルマスター」中で最もグッときた場面が24話でプロデューサーが千早に告げる「大丈夫」だからです。今の段階で比較しても詮ないことだと理解はしております。しかし、やはりアニマスでのPのあの言葉の重みに、そこに至る積み重ねに心うたれた身としましては、デレマスでのPの「大丈夫です」とそれ以降発される言葉は表明のみ、立場としての発言にしか私には映らないわけです、今はまだ。物語の終わりまでにはそこに内圧が伴っていることを、それを象徴する光景を私は見たいのです、心から。



※とりあえず、6話の落とす展開にのみ土屋理敬を脚本起用したのはもったいない…(もちろん、その展開においてあれだけ“豊か”なのが土屋脚本真骨頂なのですけど。)と思っていたら、9時間半後に放送された「プリパラ」は土屋脚本でプロデューサーの中の人が歌ったりしてた。アシカ役で「ア〜シ〜カ〜」って。(数秒間のみの出演。)最後には「約束」したしね。土屋理敬で約束といえばアニマス20話だよ!