当ブログで定期感想を書いている、「週刊少年チャンピオン」誌の2014年をふり返りたいと思います。
当ブログの感想記事は掲載作品のうち、私があえて言祝ぎたいと思ったものについてのみ言及する、批判しか浮かばない作品については基本スルー、という体裁をとっております。つまり言及回数が多い作品こそ、私の評価は高いわけです。
以下、2014年に出た全48号(2014年6号〜2015年4+5号)に掲載された連載作品(短期集中連載ふくむ)を、感想記事中で言及回数の少ないものから順に並べ、感想を述べております。基準となるそもそもの掲載回数自体、時期により異なるわけですが、その辺はご愛嬌。
なお企画の性質上、基本的に賛辞しか載せない定期感想とは異なり、批判的な私見も多数ふくまれております。批評という形になるよう心がけてはおりますが、露骨な否定的物言いを嫌われる方は、以下読むのをご遠慮ください。
(※短期集中連載タイトルは青色表記。)
言及回数1回
『テツねこ』、私からは特になし。『ムーメン』は新年発売1号目で完結。さすがのギャグクオリティと構成でおもしろかった。作者はその後別冊少年チャンピオンで別連載を開始、うれしい。
『バーサスアース』はキャラ萌え作品で、またそれも流れもへったくれもない状況ぽっと出し設定掲示のみの属性反射読者向け、としか私には映らず、物語求める身としてつらかった。連載終了後、原作者がPixivで描いてるという続編についても未読なわけだけど、Twitterのタイムラインに、その続編のキャラの内面描写ほめるコメント→リツイートした作者の、連載中は編集からキャラに魅力ないと言われてたから嬉しい、というコメント→リツイートした作品信者の、編集者を「ふしあな」呼ばわりするコメント、という流れ出てきた時には地獄絵図だと思った。 今はその「ふしあな」さんからもブロックされてるので大丈夫!(吐血)
2回
『UNI』はBoichi系の絵柄で、SFアクションとユーモアが楽しかった。『めいきんぐ!』はつまらなかったけれど、作者の現在の連載はわりと好きである。『青果人』は正直すべってたが、不器用にバット振りまくってたのはわかる。
『最強少女さゆり』の2回は、連載初回の「連載化。」の一言と、あまりにもうんざりした回のぼやきなんで、実質言及数0である。集中連載の時点でうんざりしてて、いまだ手先が器用になった以外、何の向上も感じられない。ラウドマイノリティ好みの空間維持にのみ注力してるようにしか感じられず、外側の読者にもなにか見せよう届けよう、とする意思を読み取れない。
3回
- 小沢としお『777』(8号で連載終了)
- 円山晃『放送部なかじま!』(12〜15号掲載)
- 盆ノ木至『マリリーン大魔法研究所』(36+37〜39号掲載)
『放送部なかじま!』、私からは特になし。『マリリーン大魔法研究所』は濃密なギャグ空間と突っ走りぶりがよかった。期待株の作者である。『777』はテーマの重さと場面の見せ方にしびれてたんだが、残念ながら打ち切り。
4回
- 天山まや『チカカラチカ』(42号より連載開始)
- 小沢としお『Gメン』(52号より連載開始)
- 車田正美『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』(8号掲載から休載入り)
- 丸山哲弘『3LDKの花子さん』(15号で連載終了)
『チカカラチカ』は、元から作者にセンス感じたことないし、こんなもんでしょう。『3LDKの花子さん』は女の子キャラはかわいかったのだが、うーん。
『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』はとにかくデストールさんの立ちっぷりがハンパなかった、ドカベンキャラばりのバイプレーヤー。『Gメン』は楽しくなりそうですね。
5回
- 木々津克久『兄妹 少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿』(50号より連載開始)
この筆致でホラー&ミステリ。前作の良さもあり、当然期待。
6回
- Applibot・桑原真也・ニシカワエイト『ギャングロード』(33号より連載開始、休載期間あり)
- 沼田純『行徳の漫画家とイトの日記』(48号より連載開始)
- 佐藤タカヒロ『鮫島、最後の十五日』(50号より連載開始)
- 林屋源之介『突発!コハルの武技』(12号まで連載)
- 川地和樹『オーマガ町の怪』(23〜28号に掲載)
『ギャングロード』はメディアミックス作品で、特に語ることもなし。再開したらしたでお色気要素消えてるしなー。ハッ!普通のマンガ雑誌でアイマス漫画とか読まされる読者はこういう気分なのかしら。
『鮫島、最後の十五日』は連載開始直後で、すでにとんでもない熱量。対して『突発!コハルの武技』は間違った熱量の愛すべき馬鹿マンガでした。全話言及した『オーマガ町の怪』はライトなホラーとコミカルなノリで、毎回楽しくオチつけた作風が大変よかった(原型の読み切り含めると、言及数プラス1)。『行徳の漫画家とイトの日記』はちょっと視線の向け方がつかめない状態。
7回
- 櫻井あつひと『辻浦さんとチュパカブラ』(47号より連載開始)
- 滝口翔太『喧嘩村』(39〜46号に掲載)
『辻浦さんとチュパカブラ』は読み切り版の記憶はあったが、全然期待していなかった。しかしいざ始まると、このベタなノリが案外誌面でほっとする地位。『喧嘩村』は荒唐無稽なギミックと暴れぶりが楽しかった。
9回
- 鈴木快『黒虎』(29号より連載開始)
“普通”のマンガ、キャラを立てようと頑張っている、という印象かなあ。
12回
- 反転邪郎『思春鬼のふたり』(11号〜47号まで連載)
第1話の私の感想は「死が軽かったら必然、生のよろこびも軽いわな」というわけで、まずとりあえず強烈な嫌悪感抱いた。この設定下でこんなシリアス“ノリ”やってくらしい、なんちゃってで物語ってみせるらしい、というその腹づもりにイラッとカチンときた。しかし途中から作風がスラップスティック、バカミスへと明らかに路線変更。そこからは作者の自覚的な割り切りを、創作姿勢として楽しめた。
14回
- 陸井栄史『いきいきごんぼ』(51号で連載終了)
この作品も初期は心底嫌いだった。パロディのおもしろさを、あー知ってる知ってるw、なのだと思ってる読者を脊髄反射で発情させるようなサンプリングの群れが、それを文脈も作法もなく羅列して「ネタ」だとしている作者の姿勢がたまらなく嫌だった。でまあそんな偏屈な私の好みとは関係なく、それを価値として単行本1巻発売前に巻頭カラーに押し上げるのが(※以下、“読者”への罵詈雑言171文字省略)。
しかしそれも連載続くにつれ、暗さと下品さという男子的情けなさに内圧生まれてきたし、パロディもそれとして機能するようになったし、作家性として成長見られてよかったな、と。サービスシーンは正直どうでもよかった。
15回
熱い2作品。『雨天決行』は今年に入ってからは毎回言及。重本ハジメ作品はカッコよくて優しくてよいなあ。『真・餓狼伝』は男の、そして情の世界でした。どちらもいい作品だった。
16回
- 平川哲弘『クローバー』
1/3言及か。まあ日常モノの風格だし、そんなもんか。
17回
これも約1/3言及。これくらいのゆるさでたまに強いネタ入るってのが長持ちする作品なんだろう、とは。
19回
手堅いノリではあるかな。王道スポーツはやっぱり強い。
20回
- 中島こうき『極悪バンビーナ!』(30号より連載開始)
ちゃんとギャグを作っている、見せようとしている、という一点で第一印象からあれとかそれより明らかに上だった。画面構成も、正直上手くいってるとは言いがたいけれども、工夫する意志が見える、表現を模索している。その作家性が好きである。
22回
- 村岡ユウ『ウチコミ!』(1号で連載終了)
これまでの作風からしてもっと泥臭いノリになるかと予想してたんだが、意外にも“普通”で王道の口あたりだった。その分インパクトには欠けてたと思うが、熱い場面はきっちり楽しめた。
23回
- 古谷野孝雄『ANGEL VOICE』(42号で連載終了)
単行本全40巻の長編もついに完結。描ききったな。泣けた。
26回
- 細川雅巳『錻力のアーチスト』
前作から熱血とキャラの濃さで大真面目に針ふり切っちゃう、という暴走具合が個人的には魅力なんで、なんか最近はネタがあざと過ぎてのれない。「にゃあらー!」とか、あの寒い芸風のコミックナタリーがハッシュタグ化してる時点でオワコン(死語)でしょ。
27回
- 藤近小梅『ペーパーブレイバー』(39号で連載終了)
これは個人的に気に入ってた作品。今“おはなし”をどうやればいいかわかんなくなっちゃってる少年マンガ界で、「萌え」で隙間埋めちゃおうてな物件広がってる中、ギャグでパロディで日常でそん中で意地でシリアスのぞかせちゃうぜ、とある意味作者の若さで蛮勇でやっちまったのがよかった。徳弘正也なんだよね、芸風としては。
いや、ぶっちゃけクオリティ低かった面もあるよ、実際。でもそこは勢いで許せるんですわ俺。それが馬鹿話愛せる了見で、だからこそシリアス展開も同じ地平で消化できたんですわ。おもしろかったです。あととらのあな特典ペーパーの無理してお色気出してる感がなんかエロくてよかった、AV女優のデビュー作品っぽいというか(最低)。
28回
- 佐藤タカヒロ『バチバチBURST』(36+37号で連載終了)
今やってる続編、最終章(?)が激熱。相撲という題材を、バトルと群像劇に見事に落とし込んだ傑作。
30回
これも今年に入ってからは全話言及。一話完結ミステリ、内面描写、人間悲喜劇。秀作でした。おもしろかった。
33回
『木曜日のフルット』はやっぱりうまい。『刃牙道』はなんだかんだ言って看板だし、引き寄せる突飛さは間違いなくありますし。
35回
今年でシリーズ20周年。ネタ自体の強さもあるし、構成技術の高さという点からも語りたくなる作品。
37回
我ながら意外な位置につけたなあ。やっぱり特殊な作品ですよ。貸本マンガ文化出身の民話体現者だもん、いまだに。そら性分として言葉と情引き出されるわよ、私は。
43回
今や名実ともに看板作品。今年1年でアオリの部数報告も「700万部」から「1200万部」へ。キメる展開の多さが流石ですな。
ぶっちゃけアニメ化は表現としてうまくいってないんじゃ、と思うんですけれど『まじもじるるも』のアニメ版が輪をかけてひどかったので、もう渡辺航作品の文法自体、映像化に向かない気がしてきた。あとはもう『ゴーゴー♪こちら華咲探偵事務所。』を大地丙太郎か太田雅彦に監督させるぐらいしないと、もう。
44回
- 瀬口忍『囚人リク』
熱い男たち。今年はついに脱獄編が本格始動で否応にも盛り上がっております。何がすごいって、この極限状況下で掲げるべき正義が“男の子”の純真なんだよな。少年マンガとしての、その本道ぶりがすばらしい。
48回
- 増田英二『実は私は』
全話言及。これはもう、前作『さくらDISCORD』でこの作家の姿勢にほれ込んだ身としての業です。馬鹿にもシリアスにも全力投球、青春ラブコメ。叙情読ませる際にさえまくる絵とネームと構成が、たまらん。
読み切り群
シリーズ読み切りという形ですが、今年完結を迎えた宮崎克・吉本浩二『ブラック・ジャック創作秘話』(27・28号掲載)はやっぱりすごかった。あれを、美談じゃなくブラックだ!て批判する向きは根本的に勘違いしてるんであって。あれは業の話ですよ、間違いなくそう描いてますよ。でもそれが人間に宿って周囲まで動かしてみせたら、という夢の成り立ちえた、いち時代の証言なんです。それ批判する向きは、ここで描かれる人間存在の内圧、“歴史”をどんだけ軽視してるんだっつう。
その他、作品としてよかったのは、橋本健太郎『最終兵器ロボ少女ちゃん』(31号掲載)の笑い、春日井明『ブレイブマンと王女様』(19号掲載)のケレンと話運び、集中連載もよかった盆ノ木至『吸血鬼よく死ぬ』(41号掲載)川地和樹『深夜の魔女』(9号掲載)のセンス、あたりか。
5週連続読み切り(43〜47号掲載)の鈴木優太は完全に荒木飛呂彦フォーマットではあったが(ジョジョと言ってる人いたけど、むしろ短編ノリだよな)、トリッキーな物語の将来性には期待。3回登場(14・19・25号掲載)の福地カミオのてらわないピュアさ、2回登場(24・44号掲載)のしまだの異様なハイテンションも悪くなかった。これまでかったるさのぬぐえなかった鈍速毎日の『まじかる☆とらんすふぉーめーしょん』(15号掲載)はショートでエロかわ押し、ちとブラックで印象変わった。
あとは瀬口忍・野部優美・佐藤タカヒロ『3マッスルズコラボ漫画』(11号掲載)のインパクトがやっぱり強烈。すばらしい馬鹿馬鹿しさでした。さすがチャンピオン!
以上。