アニメ「ちびまる子ちゃん」1期30話、31話

先日アニマックスで無料放送された「ちびまる子ちゃん」を、字幕付きで見ていて驚いた話。



1期30話、サブタイトルは「「まるちゃんは夏休みも学校に通う」の巻」。前半は夏休み中の登校日、後半はうさぎ小屋を世話するまる子を描く回です。アニメオリジナルエピソードである、という点が重要。
この前半の教室のシーン、がやがやとクラスメイト達の話している、いわゆる「ガヤ」の場面でこのような字幕が登場しました。

(丸尾)ズバリ折原君は1年中真っ黒でしょう。

このセリフに、ほとんど意識されないガヤにまぎれていたそれに、私は大変驚いたのである。
この「折原君」というキャラ、この回ではセリフはありません。というか、1期20話「5月のオリエンタル小僧」に一回登場したきりで、その後一切出番がありません。(と思っていたら、実は2期で15年ぶりに登場していたそうだ。→参照サイト
つまり、アニメでは約2ヶ月前に一度だけ登場したゲストキャラの名前を呼んでいるわけである、準レギュラーキャラの丸尾君は。よく見ると背景にも登場している。
 
赤丸中。背景のモブキャラとしてはちらちら登場しているらしいが、ガヤでの言及、という形はやはり特異である。



で。私が驚いたのは「一回だけ登場したキャラの名を呼んだ」という、その点ではない。「ちびまる子ちゃん」原作における折原君の扱いが問題なのである。
折原君登場回「5月のオリエンタル小僧」とは、原作『ちびまる子ちゃん』の中の話ではない。作者・さくらももこが描いた読み切り短編が元になっている。

(初出「りぼんオリジナル」61年初夏の号・『ちびまる子ちゃん』2巻所収)
つまり、アニメ化の際に作品エピソードとして流用したわけである。エッセイコミックならではですね。
このような形でアニメの原作となった読み切り短編は、「5月のオリエンタル小僧」以外にも「盲腸の朝」「うちはびんぼう」「みんな恥知らず」などがある。タイトル並べると濃いな。そういえば単行本余白ページのエッセイに書かれてた、道で出会った人に「100円貸してくんない?」と話しかけてくる通称・百円おばさんもアニメにチラッと登場していた。あぶねえな。



で。さらにややこしいことにこの折原君、読み切り短編だけでなく原作の『ちびまる子ちゃん』にも登場はしているのである。しかしそれが、非常に特異な形での登場なのである。
登場回は、『ちびまる子ちゃん』1巻所収、第2話「宿題をためたまる子ちゃんの巻」(初出・「りぼん」61年9月号)。夏休み明けの話である。

「おー おまえもやけたなー」「おう どーだ」
「おっ あれは」
「折原クンじゃないかあ 俺はまた「9月のポリネシアン小僧」かと思った」 「オリジナル読者しかわかんないようなマイナーなギャグをつかうために3コマもムダにしたんだね、ん?」「ハア・・・反省してます」

これは何がおもしろいかって言うとね(林家三平)。つまり、りぼん本誌と同時期発売の増刊読んでて同じ作者の作品が載ってると理解している読者のみが、ちょっとくすぐられる担当と作者のやりとり、というメタネタなわけです。初連載の2話目でこんなネタぶちこむさくらももこ、やはりただ者ではない。
つまり、原作『ちびまる子ちゃん』においてメタネタとして2コマのみ登場したキャラが、アニメ版オリジナルエピソードでもまたメタネタに近い形で同じ内容の言及をされてた、という事態に驚愕したのである。いやはや、濃い。



ちなみに31話「「まるちゃん 南の島へ行く」の巻(前編)」も、ネタ的になかなかの濃さである。

Tシャツ柄が「COMIC MARKET」。
  
字幕が、おっさん・ニキビ・メガネ。

原画クレジットに湯浅政明。(濃さの意味が異なる。)



やっぱり「ちびまる子ちゃん」1期はおもしろいなあ、というお話。