アニメ「アイドルマスター」11話

アイドルマスター 4(完全生産限定版) [Blu-ray]

  • 第十一話 期待、不安、そして予兆

●鼻歌うたいながら机を拭き掃除している小鳥さん、そこへ「おはようございまーす」と入ってくる春香。何気ない導入部ですが、これも14話、23話と状況にあわせて描写変えながら、くり返される場面です。
●社長の習字「一歩」。大いなる一歩、への準備となる一歩の回。
●試験勉強目的で早めに来た春香(通勤時間が長い)&やよい(家事大変)、見てる響。「テスト勉強かぁ、懐かしいなぁ」と三人にお茶を運んで来る小鳥さん、何の強調だよ!
●入室してきたプロデューサーから、ライブ決定の報告。歓声をあげる四人。
●足をぶらつかせる春香と膝を握る真。ワクワクと緊張。竜宮小町以外の9人を前にするプロデューサー。
●「メインは竜宮小町なんだが…」というPの言葉をさえぎるように「なんくるないさー!自分頑張って、竜宮小町に負けないくらい目立てるようにするさー!」と言い出す響。深くうなずき「真美だって、亜美に負けないくらいチョーカッチョいーダンス決めちゃうもんねー!」と真美。適役の二人。“負けないくらい”という言い方が目標であり同士であり、という位置づけですね。
●他方、「ここで頑張れば、律子さんにアピールできるよね」とつぶやく美希。彼女には、あくまで目的地点の竜宮です。その先、はまだない。
●新曲の仮版を嬉しそうに聞く一同、ここはアイドルらしい場面。小鳥さんは、そんな彼女達の様子に笑顔。千早の聞き入る表情を見て、春香もまた笑顔。春香は4話、5話から千早のことを気にしてるんですね。
●ダンスレッスン。ぶつかるやよいと千早。ダンスコーチから遅れを注意されるやよい、雪歩。早さを注意される響、美希、真。大変だな。
●不安げに見ていたプロデューサーは社長の電話を受け廊下へ。自販機のボタンに伸ばした指が、アイドルの現状を尋ねられて思わず引っ込みます。22話の自販機の場面(スムーズに買えたあと小銭を落とす)と比較する、のはさすがに考え過ぎかな。
●疲弊した一同。ダンスの簡易化を相談するコーチ&プロデューサー。「それじゃ全力のライブにならないって思うな」と反対する美希と、雪歩とやよいを案じる響&真美。ここは説明受けた場面との対比かな。目標が明確なのは美希なんだよな。
●静まりかえる中「大丈夫!まだまだこれからだよ!」と声をあげる春香。彼女の役割です。受けて千早の「そうね。決めるのはもう少しやってみてからでもいいんじゃないかしら」と言う声に重なる、プロデューサーとコーチ。同意する声が出て、見守る二人もほほ笑みます。「よし、わかった!しばらくはこのままで行こう」とP。実は春香もダンスミスってた、というオチがよい。コーチの「はい、みんな。最初からもう一度!」という声で場面転換。
●「はい、じゃあもう一度」と、ボイストレーナーの姿。ボイスレッスンの光景。春香と真美が注意を受けます。「あっちゃあ…」という真美の声で、再び場面転換。
●街並み、信号待ちしている横並びの9人。一斉にため息。不安げな顔がアップになる雪歩&やよいの並びに、「食べる?」と左からさし出されるアメの乗った手、春香。「やっぱ、疲れた時は甘いものだよね」と、これも6話以来か。はあ、と息をついてアメをなめる横並び9人、かわいい。
●試験勉強の話題、ああ、こいつら学生なんだなあ。やよいいわく「伊織ちゃんは、みーんなに優しいですよ」、はい。あわせて同時刻の竜宮小町の様子が挿入され、「まだ、あっちは仕事中かな」「うん、たぶん」というやりとり、おし黙る一同。「よーし、頑張るぞ」という春香の声で、カットは建物のすき間の夜空へ。
●優しき挿入歌「笑って!」。流れる春香の勉強・通勤の映像に、止め絵で挿入されるレッスン風景。やよいの方を見ながら片手は自分の目・片手は前方を指差す響、という一枚絵がいいよ、視線を向ける指導なんだよ。
●再びダンスレッスン。居眠りからあわてて立ち上がった春香は足をひねる。真が春香の足をのばす中、レッスンする7名、再び千早とぶつかるやよい。
●疲弊した雪歩は、プロデューサーに「やはり調整が…」と話かけるコーチに狼狽。出るのをやめる、と言い出します。「これ以上みんなに迷惑かけられないよ」というのは3話での恐怖心からすれば進歩かもしれないが、貴音は厳しい顔つきで一喝。「自分の壁を突き崩すという、覚悟を持ちなさい。」
●泣き崩れる雪歩に、「あせらず行こうよ。ね」とほほ笑みかける真。前回、やよいに向けたものと同じ優しさ。そして「わ、私も!私も頑張ります!だ、だから!」と叫ぶやよい。前回、涙から立ち上がれた彼女の言葉。あの時の伊織の叱咤も、優しさだと理解してるんだよな、きっと。
●雪歩は立ち上がり、貴音に謝ります。「私もう絶対、弱音は言いません。」ほほ笑んで貴音、「ともに高みを目指しましょう、雪歩。」お姫ちんカッコいい、みな笑顔。春香もいつの間にか足の傷み忘れて立ち上がってる、というひとオチ。
●レッスン服のままバッグ携える一同、ボイスレッスンへの移動です。「まだあずさ達練習してたよね」という美希の発言を受け、竜宮小町の練習をのぞきに行く9人。そのレベルの高さに、一様に驚き顔です。そんな中、笑顔を浮かべている美希。そして、一人だけ竜宮の見えない離れた位置に立つ千早。
●美希の表情はわかります。彼女は天才型で、目の前の光景に入ることを夢見ている側だから。しかし、ここで竜宮小町を見ない、むしろ竜宮を見ている8人の様子に顔を向け、画面に背中しか見せずつっ立っている千早の、心の溝は深い。3話の雪歩のステージへの反応や4話ラストの別れにもその側面はあったけれど、しばらくなりを潜めていたそれがこんな瞬間にふと浮かんでくる、その描写がすごい。
●ボイスレッスン。一人トレーナーから指導を受る春香、部屋にいない千早、車座で座る7人。美希が笑顔で「あずさ達すごかったのー」と発言しますが、周りの6人は沈んだ顔。次々と不安を口にします。
●「春香はどう思う?」と聞かれ、ふり向いた春香は少し考えて「早くあんな風になりたいよね。」え、と驚く一同。「私達も頑張って、早く伊織たちに追いつこうよ!」と明るく続く春香の声に、皆の表情もゆるみます。決意の言葉が出てきます。春香は手をあげ「よし!じゃあみんなで――」と言いかけますが、美希が手をあげて「竜宮小町になるのー!」と横取り。通常進行だったら初の、765プロ、ファイトー!きてた?この場面はBGM相まってじわっとくるんだよなあ、うん。
●そんな様子を見つめる、プロデューサーと善澤記者。「今は気持ちで乗り切るのも大事だからね」と善澤記者、本当そう。続けて「春香君のいい意味で楽天的なところは、今の彼女たちを押し上げてくれるかもね」と言うのですが、このセリフの言い始めに、脇のドアから場にいなかった千早が入室してきます。そして、耳にした言葉について考えるかのように視線を下げます。セリフ終わりに重なるのは、春香と美希の笑い合う姿。この三人の、これまでと、そしてこれからの重なり合いとズレを考えると、セリフの内容あわせて非常に象徴的な場面です。
●靴箱に一つだけ残る靴、一人でボイスレッスンを続けている春香。そこに重なる歌声。ふり返るとドアを開いて千早が立っています。レッスン室にやって来てドアノブに手をかけるプロデューサーですが、中で歌う春香と千早を確認し、ほほ笑んで廊下の壁にもたれます。待つ身は嬉しい。
●並ぶバッグ、春香の水筒、千早のペットボトル。歌い終えて感謝をあらわにする春香に対し、受けて微笑する千早はまだ表情が固い。プロデューサーの入室により、帰宅不可能な時間だと気づく春香。顔色悪い。
●千早の家に泊まることとなる春香。BGMは「蒼い鳥」ピアノアレンジ。買い物をする春香と千早ですが、7話のそれとの描写の落差がすごい。闇の中のスーパー、冷凍食品、半額の惣菜パン、閑散とした食品棚。重なる会話は、千早の一人暮らしのこと、コンビニで済ませる食事のこと。
●ここでの春香の、千早の暮らしぶりを案じるけれど心配を表に出さないようにしている、その声の一本調子さがいい。それに千早は「でも、前の番組で(料理を)作ってからは、時々作ったりしてるわ」と返します。「じゃあ、何か一緒に作ろうよ!」ようやく明るい顔を見せる春香。
●千早のアパート。放置された引っ越し屋の段ボール。室内にあるのはCDとオーディオデッキ、テーブルくらい。写真立ても見えます。そして台所には袋をかぶった鍋とザル。つまり千早の、料理している、という言葉は嘘だった。気づく春香ですが、彼女は何も言いません。笑顔です。
●料理する二人。春香はあえて両親の話題をふり、千早が固くなるとゲロゲロキッチンの話題でそろって笑顔に。近づきたいんだよー、春香は。幼い千早と優、二人の笑顔の写真立てが映ります。
●二人で食事、ともに笑顔。ライブへの意気込みを語る春香に、千早は「どうしてアイドルになろうと思ったの?」と尋ねます。この問いはシリーズ後半に出てくる、アイドルって何?とは意味が異なるんですよね。
●春香は「あこがれだったから!」と語り始めますが、ここでセリフの内容に合わせて描法が変わります。まぶしいステージ・いっぱいの声援・会場の熱気、といった“要素”を語る際は、笑顔の二人が映る夜のガラス。「すっごく楽しみなの!みんなと一緒にステージに立てるんだって思うだけで…」ととろけた笑顔浮かべる際は、春香は実像ですが、千早の反応はガラスに映るぽかんとした顔。さらに千早のぽかん顔(実像)のみが一瞬映り、試験勉強の話題で二人のコメディ的なやりとりになります。
●この場面、単に映像として凝ってる、とも言えます(実際流れとしてスムーズです)。しかしあえて深読みすれば、ライブの「要素」の快楽は二人で共有できるものだが、それが二人の根源(実存)ではない、春香の原点は「一緒に」の快楽で、それは千早とは異なる、という語りにも読めるのではないか、と。
●いずれにせよ、ここで千早は春香の「みんな」への想いを知ったわけです。新鮮な驚きと共に。
●各々の練習風景のカットイン。庭でダンスしているやよい→室内のちゃぶ台上で開かれたノート&お茶持って来た長介、の流れがいい!ただし美希だけは竜宮小町の映像を見ています。ぶれです。重なる春香と千早のやりとり「最高のステージにしようね!」「そうね。本当に…。」洗われた二人ぶんの食器が映ります。居眠りする春香を見て、ほほ笑む千早。
●翌朝、マンション前。「ライブ、うまく行くといいわね」と告げる千早に「大丈夫!きっとうまく行くよ!」と笑顔の春香。そしてダンスレッスンの光景。通しでやり遂げます!
●「自分REST@RT」に合わせて流れる、試験、レッスン風景。おとずれる成功と歓喜。ここはやっぱり女の子キャラの華やかさになりますね。いいんですよ、うん。
●そこから続けて。律子に自分の評価を尋ね、ほめられた美希は竜宮小町に入りたい、と告げてしまいます。彼女の夢が失われる時です。ロングショットで何か美希に告げる律子、表情が見えないまま立ち去る美希が描かれ、画面はブラックアウト。
●飛行機雲。レッスンルームに入ってくる春香。やよいと試験の出来を喜び合う彼女を見て、千早がほほ笑んでいます。この穏やかな、好意ある笑顔は初めてではないかしら。信頼も芽生えている、と思われます。
●美希が来ないことを不審がるプロデューサーに、彼女からのメール。「…うそつき(><)」ということでエンディングへ。
●春香曲「START!!」。やあ、明るく元気でいいなあ。クッキーと弁当の絵からの入りもいい。春香の学生ぶりもいい。最後の笑顔もめっちゃいい。ここまで、この回通して高雄統子の絵コンテです。
●次回予告、不安だね。



よし、あと一話で全話感想達成!今さらながら!