『たそがれたかこ』2

入江喜和『たそがれたかこ』2巻。日常に疲れ気味の45歳バツイチ女性・片岡たかこが、深夜ラジオでふと耳にした歌。その声との出会いは、歌手の姿と言葉、彼への想いとの出会いでもありました。
その輝きとときめきは、たかこの生き方を少し変えます。これまでと地続きの日常の中に、世界が新しいあり方を見せ始めるのです。

というわけで、きましたよ、「このマンガがすごい!WEB」4月期・オンナ編第3位獲得!入江喜和の作家性への支持がさらなる広がりを獲得すること願ってやみませんよわたしゃ、売れろ!(ストレート)
おかめ日和 (KCデラックス BE LOVE)
前作『おかめ日和』の生活に日常に家庭に人生に愛を見る、その温かさとたくましさも大好きでしたが『たそがれたかこ』もしみじみいい。一見、前作とは描かれる世界が様変わりしてしまったようにも見えるのだけれど、ここに息づく人達の心のあり様は変わらない。喜びも悲しみも味わい生きてきた読者の心に、“リアル”としての感情を立ち上らせる。それを読ませてくれる。
本作は噛み砕けば、若い男の歌手にハマったオバサン、の物語なわけです。しかしこれはわかるはずである、私というマンガ読者は。いい歳をしてマンガ、な身としては。
あるいは人によって、アニメでも小説でもアイドルでもゲームでもいい。いい歳をして、生活があるのに、現実に寄与しないのに、それらのファンタジーを夢を輝きを「好きである」。それらを価値だと思う。日々を生活を何かしらの現実を離れ忘れ捨てて、一時そこへ飛ぶ、心を燃やす。世界をそうしている、私の心の中で。生きていくこと、が自身にとってそうであり、その愛と無関係に世界と現実が進みゆくことも知っている。そんな生身にとって、“リアル”で“わかる”物語なのである、『たそがれたかこ』は。
「好きである」ことはまぶしくて気はずかしくて、時には儚くて脆くて、でも楽しくて力強い。そこには夢も現実も等しくあるのだ。たかこの歩みは美しくも滑稽にも見え、残酷に感じることも応援したくなることもある。それがいいのだ。

しかし前巻の感想でも書きましたが、本当、入江喜和の絵と画面構成はいいですわ。私は『おかめ日和』から入って後追いで過去作品読んだのですが、明らかに今の方が巧い。作家としてちゃんと表現が進化し続けてるんですよ。そこがすばらしい。
でまたその表現の部分と話との合致性が見事でねぇ。2巻だとCD買いに出かける時におめかしするっていうエピソードが、おかしくて泣けていやはやでも気持ちわかるわあ、て感じで、コミカルでかわいくてそこにシリアスが入ってくる、それが全部同じ地平で息づいてるこの光景が見事でなぁ。人の生きざまって感じでなぁ。グッとくるのよ。