「アイドルマスター」6話

アイドルマスター 3(完全生産限定版) [DVD]
●「第六話 先に進むという選択」。絵コンテは高雄統子
●スケジュールボードからの導入。横線で上下に区切られて、予定ぎっしりの上半分とすっかすかの下半分。「すごいですね〜、竜宮小町」というわけで小鳥さんと律子で勇ましげトーク。プロデューサーはそれ耳にしながら、所在なさげにすかすかのスケジュール帳見ている。この対比こそがメインになる回です。
●このギャグ的な成金妄想も次回以降は影潜めるのよね。現実につかむべく、実際に走り出すので。
●ショートあずささん、竜宮衣装、と目に見える形で、アイドルとしての“新しさ”、“可愛さ”が765プロに持ち込まれる。
●吹き付け洗剤とタオル持って入ってくる小鳥さん、まだ仕事ないのね。パロディ妄想も、これを最後になりを潜めます。
●プロデューサーのあせりを理解してない小鳥さん、というよりは、比較するという発想がないのだろう。
●「律子や竜宮小町に負けないくらい」では、伝わらないよなそりゃ。視聴者としては気持ちわかるけど。おそらくゲームプレイヤーだった方も。
●戸惑う面々の背景に、ぼやけて見える社長の習字「心」。
●頑張ろうにも仕事がない、と反論されるこの距離感も新鮮だなー、初期だなー。
●春香のキャラメル。リアルタイムで見れてた人には、これ絡めた後半の展開すごかったろうな。
●美希の竜宮へのあこがれ。プロデューサーとの行き違いからとはいえ、ここで美希の才能開花のフラグが立ちます。
●しかし本当、この時のプロデューサーはダメだわ。「いや、今はそれより仕事だ」はないわ。きっかけのみならず、12話の美希回でもこの手の発言で感情逆なでしてしまうわけだし。ただしこの点、俯瞰してみると、という点については後述。
●アイドルを引き連れ、慌ただしく一人で空回り気味のプロデューサー、対して、落ち着いているしアイドルと話し合いもする律子。なかなかシビアな対比。
●貴音…目が死んでる…。まあ、ここで笑い入るのは展開的にありがたい。
●アイドルからも様子がおかしい、と見られてるのはつらいな。でもその点、春香は真っ先にプロデューサーの様子が変だ、と気づいてフォローしてたわけだよな。
●スケジュールボードをよく見ると、春香にキャラメルをもらってからの経過日数がわかる(約2週間)。
●仕事のミス。ここは痛い描写にしないとダメなのである。美希が動く!
●「プロデューサーさん、一人で頑張り過ぎですよ!私たちだっているんですから!」「大丈夫です。私たちを信用してください!」本当、20話・24話・劇場版まで見た今となっては、春香のこのセリフだけでじわっときます、私は。この言葉が、プロデューサーの765プロとの歩みの始まり。
●美希のシャツの柄、ミスタードリラーっぽいね。ここで声と顔つきが明らかに変わるんだよな。美希もまた、ここが始まり。
●タクシー内で焦るプロデューサーが、春香のキャラメルを見て落ち着きを取り戻す、この描写がいいんだ。理解するわけです、一人ではないことを。春香と響はプロデューサーの取ってきた仕事をちゃんとやり遂げたし、真と美希はプロデューサーのミスをフォローした。一人ではないんだ。
●小鳥さんもな、一言も責めずに「大丈夫ですよ」と笑顔でVサインして明るい話題を振ってくれる。いい人だよ。
●歌番組にて「SMOKY THRILL」。初ライブシーンですが、今見てもやっぱりすごい。見せ方のセンスが卓越している。
●茶化そうとした真が伊織の真剣な顔つきにハッとする、この場面はゾクッときます。作品内の倫理の転機、新たな世界への移行を象徴するワンカット。数秒間の動作で、それを見せてくるのよ。
●見とれる各人の反応。アイドル達の背中と共に、前半で反抗したアイドル達の背景ではぼやけていた、社長の習字「心」が、今度ははっきりと見えます。
●そして、それらを視界に入れたアイドル達を支える三人、プロデューサー・律子・小鳥さんが言葉を交わす。「四人で決めていった」と微笑む律子に、「そうか…」とつぶやき、プロデューサーもまた微笑みます。
●小鳥さんのセリフ、「みんなで進んで行きましょう。」そしてエンディング「THE IDOLM@STER」。かぁっこいいんだよ、この流れがもう!何度見返したことか。革新の六話、THE END OF PROLOGUE、前に進むという選択。
●響の予告ナレーションはまたひどいんだけどね…。
●さて。今回美希の誤解を生んだプロデューサーの行動について、である。結果的にはプラスだったと言えないこともない、アイドルの内情より仕事を重要視した点について。
●実際、どうなんでしょうな。劇場版までふくめた全編を見ればわかりますが、アニマスという作品において、“才能”の象徴である美希は“絆”の象徴である春香と、根っこの部分では相入れないわけです、それこそ最後まで。その意味では、プロデューサーというキャラクターは間違いなく春香側なわけです。この回において春香の“絆”に救われてそうなり、劇場版の最後まで(律子に不安を吐露したりしながらも)それを選び続けた。それが彼の信念でした。
●対して美希の“才能”は、この時に仲間の内情より仕事を取ったプロデューサーの過誤から生じたわけです。その後も24話や劇場版で衝突し、結局は“絆”側が勝利する対立……とまで言ってしまうのは乱暴ですが。それらは人の感情である以上、折り合いをつけて共存しうるのですから。
●その“折衷”、まっすぐ進むだけではもう重なり合えない、という描写こそが劇場版のテーマであり、765プロの“成長”であった、と私は目しております。12話では自分、24話では春香、劇場版ではプロデューサーの感情を否定してまでは、美希は進めなかった。そういう女の子、でいいのだと思います。
●そういう仲間達だからこそ、私は765プロメンバーが好きで、その姿に泣かされた生身なのだから。見せつけつつも易々と“対立”の流れに与しなかったからこそ、おはなしとしてその世界と作り手の姿勢を愛おしいと思えるのだ、私は。
●逆に“キャラ”が主体のシンデレラガールズのアニメ版では、美希的な邁進が主題に描かれるのではないか、とも思っています。その点では、劇場版にキャラクターが登場したミリオンライブは、世界観・物語としてはアニマス側の「絆」に近いんですよね。私個人は、後者の群像劇ノリの方が好みなのですが。