越智善彦『ドロイどん』31〜35話

(『ドロイどん』31話より)
はい、これは1ページ四段構成の三段目を、右端から3コマ。
読者の視線は二段目左から折り返して、このコマの左上から入ってくる。そちらの方向の“何か”を見る、向かい合う形で、ドロイどんとひなたちゃんの頭に、気づきの動作表現する漫符が浮かびます。この漫符の形が異なるのが両者の緊迫感の違いですね。ドロイどんはわざわざ首回した、と動線で表現された上ですから。絵としてのアングルもいい。
で、その二人の視線の先にあたる次のコマでは気づいた対象を、さらに次のコマでもう一度二人を描きます。正面から描いた姿を縦に2コマ並べて、両者が向かい合う形になります。
集中線しょって、「ビュッ」と激しく傾いた描き文字・オノマトペとともに足元の土飛び散らせながら迫ってくるサングラスドロイド。対する二人は白丸目で停止状態、というのを落差で強調します。背景白ですからね。ドロイどんはちょっと構え見せてますが、線曲がって(笑)。



(『ドロイどん』32話より)
はい、これは上の引用と同じ位置にあたる、次の回のコマです。「間」です。真横からのアングル三つ並べてみせる、こののんびりさ加減。



(『ドロイどん』33話より)
しゃぼん玉遊びをするひなたとドロイどん、かわいい。右のコマがひなたの視界、続くコマで見ていたひなた含む二人の様子を俯瞰で描写。



(『ドロイどん』34話より)
はい、これは戦闘シーン(!)です。集中線からの集中線!「どおおん」というオノマトペをも飛び越えるような形で、メーテル(おい)が発射するひも付き玉!ギャグ調でかわすひなたと外見変わんないドロイどんの落差がおもしろい。
これ右のコマで左下に向かって玉発射してますので、それ追った読者の視線は次のコマの下側から入りますね。そこからワンテンポ遅れて、はずれた玉の「ボエン」が目に入ります。集中線も強調の効果はもちろんですが、その向きで視線の動きを誘導しています。



(『ドロイどん』35話より)
はい、これは戦闘継続中の、頭の外れたドロイどん(!!)です。「コトコト……」と揺れてます。静かな、でも不穏なコマです。体は右向き。
続くコマは、やや過剰なデフォルメで集中線の中、お嬢さんが手を伸ばします。行け!の意です。メーテル風ドロイドの足元に砂ぼこりが舞います、向かいます。静かな絵から激しい絵、という落差。二人は左向きで、前のコマで右向いてたドロイどんと向かい合っているわけです。
で、続くコマで対峙する二体。「ビューーンッ」と背景から迫ってくる、メーテルドロイドの全体像を真正面から描きます。「カタカタカタ」と震え続けるドロイどんの背中は手前に、スクリーントーンで影貼られて、ほぼコマの外にはみ出てます。不穏です、緊張です。この二種類のオトマトペ、出している対象による“位置”としての描き分けは、結構なセンスだと思われます。



30年のキャリアで培った漫画技術を、週刊1ページ連載に注ぎ込むとこうなるんだなぁ。越智善彦『ドロイどん』、今月単行本発売!