映画「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」2回目(※ネタバレ含む)

劇場版アイドルマスターが地元にも公開きましたよ&料金1000円デー、ということで二度目の鑑賞をしてきました。
入場特典も初入手。



(※以下、映画の具体的内容に触れています。)
さて、初回鑑賞時には三回落涙した映画版アニマスですが、今回は泣きませんでした。目うるませる回数はむしろ増えたんですけど。
泣かなかった理由は、最初の衝撃が薄れたから、というのはもちろんですが、構造が見通せるようになったから、というのが大きい。逆に、見過ごしてた描写の深さに気づいて感情移入する、という形でのうるうるは増えたわけです。
初見時に、私が落涙した場面は以下の三点。

  • ハリウッドに出向することを告げたあとの、プロデューサーと春香の未来を思っての会話。
  • 雪歩宅と伊織宅に別れての、先行きの不安と春香についての語り合い。
  • 集合したアリーナでミリマスメンバーの名前を呼んで、自分の意志を伝える春香。

わかりますかね。見事に春香です、またプロデューサーの存在によるそれです。で、これはテレビ版全26話を見た私が、アニメ「アイドルマスター」の核として見ているものは何か、という話でもあります。
端的に言うとそれは「みんなと、いっしょに!」なのですが、それを浮かび上がらせるドラマツルギーは、春香とプロデューサーの関係です。その構成と演出の巧さに、群像劇、青春モノとしての作品の価値を、私は見ています。
その脈絡における重要箇所をテレビ版から抜粋すると、以下の三つの場面でのやりとりになります。これらを物語の中、一つの流れとして見せる構造になるわけです。

  • 「第六話 先に進むという選択」より。

プロデューサー「とりあえず、あちらには美希が行ってくれることになったから」
春香「あの…プロデューサーさん、そっちの現場に行った方がいいんじゃないですか?」
プロデューサー「え…。ああ、でも…」
響「こっちは春香と自分でなんとか出来るぞ。なっ、春香!」
春香「うん!」
プロデューサー「しかし…」
春香「だめですよ、プロデューサーさん!」
プロデューサー「え…」
春香「プロデューサーさん、一人で頑張り過ぎですよ。私たちだっているんですから!
響「そうそう、ほら」(Pの背中を押す)
プロデューサー「わっ…」
春香&響「急いで、急いで!」
春香「大丈夫です!私達を信用してください!
プロデューサー「…そうだな。すまん、頼む!」

  • 「第二十話 約束」より。

春香「私、いつも頑張ろう、頑張ろうって…。千早ちゃんだけじゃなくて他のみんなにも…。
もしかしてそれって、余計なお世話で迷惑だったのかなあって…」
プロデューサー「そんなことはない!」
春香「え…」
プロデューサー「いつも前向きなのが春香のいい所じゃないか。誰かを励ますのに遠慮なんかしてどうする」
春香「でも…」
プロデューサー「あの時のキャラメル、うれしかったよ」
春香「え?」
プロデューサー「もう一度、みんなの仲間として、やり直そうって素直に思えた。春香には感謝してるんだ
春香「プロデューサーさん…」
プロデューサー「なあ、春香。俺は、千早は不器用だけど、ちゃんと人の気持ちのわかる子だと思う」
春香「はい」
プロデューサー「なら大丈夫。春香の気持ちはちゃんと届いてる。思ったとおり、体当たりでぶつかってみろ」
春香「…はい!!」

  • 「第二十四話 夢」より。

千早「どうしたらいいかわからなくて…。ある家族の話です。
いつも一緒で、仲がよくて、誰かが転ぶとすぐ手を伸ばして助け合う。そんな家族が、いつの間にか離ればなれになっていて…。
転んだ時、いつも真っ先に手を伸ばしてくれた人が、一人で悩んでしまっているのに…。それを助けられないほど、みんなが遠く離ればなれに…。
今なら、取り戻せるかもしれない。でも、それが正しいことなのか、自分にできることなのか、わからなくて…。
私は、これまで家族といい関係が築けませんでした。だから、自信がなくて…」
プロデューサー「千早は、その家族のことが大好きなんだな」
千早「…!はい!大切に思っています、とても!」
プロデューサー「なら、大丈夫だよ
千早「…」
プロデューサー「きっと、みんな千早と同じように感じていると思う。家族って、そういうもんだよ。
大丈夫。みんなのこと、信じてるんだろう?
千早「はい」
プロデューサー「家族なら、大切なことはちゃんと伝えなきゃな」
千早「…はい!!」

この流れの結果、については24話の感想でくどくど述べたのであらためては書きませんが、これらを起点にプロデューサー含む765プロメンバーは“みんな”で動けてきたわけです。春香とプロデューサーの恩返し合い(妙な言い方ですが)が、すなわち全員の助け合いと絆の象徴になりえた。私がアニメ版で最も心打たれたのはその点です。その描き方の丁寧さです。だから大河ドラマ新選組!」ファンはこれ見ればいいのに、と言っておる。
その上で、なぜ劇場版アイマスにて私が上記の3シーンで涙したかと考えると、アニメ版で“よきもの”として見たそれが試される、と同時に信頼も向けられている場面だからです。未来と共にこれまでの絆を見、危機を見据える仲間たち全員からいち存在として判断を託され、不安がる新しい仲間達にこれまでの仲間へのものと同じ視線を向けて価値とする。それができる、それしかできないことで認められ歩んできた天海春香というキャラクター。そのことに、その夢の在り方に私は泣いたんだと思います。彼女をリーダーにし、ミリオンライブメンバーを合流させたプロデューサーと同じく、それを大切だし力だと思ってるわけです、腹の内の本気では。
はっきり言いますが、すでに765プロメンバーの内面と価値観はバラバラなわけです。最後の春香の決意表明のあと、みんなで集まりはげまし合うミリオンライブメンバー、あれがかつての、テレビアニメ版での765プロの姿です。それを見ている彼女たちは、今回の亀裂ではっきりと、もうそこを通り過ぎてしまったことを自覚しています。誰もが悲しみ、苦悩し、それでも「みんなと、いっしょに」やるんだという意志を、アイドルとしての笑顔を見せるわけです。何度でも。
最後にプロデューサーを見送る春香が、「心は一つ」だと笑顔で叫びます。そう、彼女たちはバラバラだけど一つになれる。それが、彼女たちの成長。いい映画でした。



あと、ぶつからない春香と冬馬は成長したな、とか、春香を静観し続けていた千早と美希が、春香が決意を固めた瞬間真っ先に笑顔になるのがいいな、とか、テレビでも映画でもラストショットになるとやよいはジャンプ力発揮するなあ、などと思いました。