越智善彦『ドロイどん』110

急展開ぶりに、このまま終わっちゃうんじゃないか、と思わせつつも続いております1ページ連載『ドロイどん』。がんばれ!(そういう問題じゃない)
ドロイどんがいなくなった日々、という状況からの転換の回です。






●5〜7コマ目。二段目における1〜3コマ目になります。この前段で、お姉ちゃんと共に歩くメガネさんが、連れているドロイドから電話に出る場面が描かれます。
●5コマ目。電話中のメガネさんを「……」というオノマトペ(描き文字)、沈黙という背景(絵)を背負って見つめるお姉ちゃん。白地の背景に「……」で、吹き出し内のそれと同じ意味が表現されています。
●あとこれ二段目の右端のコマにあたりますので、読者の視線は一段目左から折り返して、このコマの左上から入ってきます。コマの左側一面で断ち切りのメガネさんの絵が、まず視界に入る。で、大きさからいってメガネさんは、画面の手前に位置しているわけです。そこから奥のお姉ちゃんとドロイドにも視線が向かう。背丈の高さもそう向かうように描かれた構図です、背景の「……」意識させつつ。
●また、手前の彼女に網トーンはみ出させて貼ることで、像としてぼやけてる、という絵になりますね。で、ぱっきり白地の中のお姉ちゃん、奥にいる彼女はピントがあっていると。そういう絵です。このお姉ちゃんのドロイドも、隅っこに細かく描かれてるのもいい感じ。
●6コマ目。お姉ちゃんのドロイどん回想の図。前のコマと同じ角度の顔に、ちょっと表情が出てきます。眉が上がり口が現れます。じわっと感情が動き出している、そういう絵。はっそういえば、的な表情のコマ。ドロイどんにも電話(旧式)がついてたぞ、と思い出します。
●背景は前コマと変わらず白です。このドロイどんの絵、吹き出し内のキャラ周りに細い間隔あけてのトーンの削り方とか、気づき表現の漫符の輪郭線に若干影ついてるのとか、そういうところが好きです私は。
●7コマ目。「ピッピッピッ」とドロイどんの電話(旧式)を操作している、吹き出し内の絵。そうしたことあるぞ!という発見のコマです。三コマ続けて同じ角度のお姉ちゃんの顔に、はっきり表情があらわれます、というか髪が広がるというマンガ的表現です。背景も白から一転、集中線が走ります。






●10、11コマ目。三段目における1、2コマ目です。この前段で、お姉ちゃんは電話をかけています。「プップップッ」という吹き出しが、電話から鳴っています。
●そこからの10コマ目。コマ上部に、三話前まで冒険くり広げてた空中城(を取り巻く龍の巣的雲)が見えます。杉浦茂的うずまき雲も。そこに「プップップップップッ」と下からオノマトペが浮かんでくるわけです。縦長コマなので読者の視線は下方向に向かって、その逆サイドから文字が描かれている。つまりお姉ちゃんのいる地上から上の雲に向かっているわけです、このオノマトペが。電話から出た呼び出し音が。
●10コマ目。これは城の内部。主人公たちに破壊された壁や床を、ロボットが「キヨキヨ・・」と修復中です。読者の視線入るコマの右側は状態の絵で、左側で「キヨキヨ」やってると。ここから三コマの間は「プップップッ」というオノマトペが出ません。三段目の最初のコマにだけ呼び出し音が出てきます。






●14、15コマ目。この右側は一つのコマとして見ます。
●14コマ目。「プッ」と、さっきまでの電話の呼び出し音が一段おきに届いたわけです、ドロイどんに。続けて、お姉ちゃんの電話では呼び出し音が「トゥルルルル・・」となり、ドロイどん内部の旧式電話は「チンッ」と鳴ります。このコマの中で、離れた地点でそれが同時に起きたわけです。
●15コマ目。前のコマの「チンッ」と接するような角度をつけて、「ジリリリリリン」オノマトペが描かれています、こちらのコマのドロイどんに文字列の根元を向けて。この二コマでドロイどんから「チンッ」「ジリリリリリン」と音が出たわけです。吹き出しの中に描かれる、背景に直接描かれる、という部分で音の大きさも「描き分け」されているんですね。
●この「ジリリリリリン」には震えを表す線がついています。旧式電話のベルが鳴る音です。音源のドロイどんも若干震えている。で、オノマトペ追って一旦ドロイどん方向に向かった視線を右下にやると、作業ロボットに気づき表現の漫符が浮かんでいます。これ、ふり返りの動作を表現する線もついていますけど、顔も何もないんですよ。でも、そこになんとなく感情が読める。音の質感とかもですね。そういうマンガの面白さです。



というわけで終わりそうなのかよくわかりませんが、先週の『ドロイどん』もおもしろかったです。最新号は明日発売。