「チャンピオン読者版このマン2013」参加記事

「漫画脳」様開催企画「チャンピオン読者版このマン2013」に今年も参加させていただきます。
(※昨年の参加記事はこちら。)
購読2年目。今年は全部門参加で、行くぞッッ。




チャンピオン以外部門
対象:2012年に単行本が刊行された別チャン・週チャン連載以外のマンガ作品から上位3位まで



せっかくだから、俺はこのチャンピオン関連ぽい気がする作品を選ぶぜ!

1位 『ハナコ@ラバトリー』施川ユウキ秋★枝
2位 『サッカーの憂鬱 裏方イレブン』能田達規
3位 『ママゴト』松田洋子



ハナコ@ラバトリー(2)(完) (CRコミックス) (CR COMICS)
『ハナコ@ラバトリー』:原作者・施川ユウキがチャンピオンデビュー作家
全2巻完結。施川ユウキについては、自分にとってはデビュー連載『がんばれ酢めし疑獄!!』が衝撃的すぎた。言葉をこねくり回して生(き)のまま提示する芸風が、知の暴走的手法が、おもしろいと同時に「わかる」だったんである、世代的に時代的に。その突っ走りぶりにどっぷりはまった身として、『酢めし』以後の作品については「おもしろいんだけど物足りないなあ」だったんである、ずっと。また針を振っ切って欲しかったのだ。
で、そっから約10年。本作で施川ユウキは原作者として話者に徹し、かつて「わかる」だった私をふっ切ってくれた。嬉しいことに違うベクトルで。新たな作家性を、才能のステージを見せつけてくれた。トイレにしか現れない幽霊、ハナコさんがさまざまなトイレで見つめる人生模様。ウェットであり、時にドライである。シニカルでリリカルでシリアスで、謎がとける最終話には涙ぐんだ。くそー、酢めし疑獄の人なのに、だったのに!いい作品でした。



サッカーの憂鬱~裏方イレブン (マンサンコミックス)
『サッカーの憂鬱 裏方イレブン』:作者が過去にチャンピオンで連載をしていた
よかったよねえ、ファミリーサイエンスコメディー『ピース電器店』。ファミリー戦隊もの『家族戦隊ノック5』も好きでした。で、こちらはプロサッカーを支える様々な裏方の奮闘ぶりを描いた作品。「チーム」の物語で「職業モノ」です。ディテール自体のおもしろさに加え、彼らが一丸となってサッカーというスポーツを作り上げていく様が、能田作品ならではのあたたかさと共に描かれます。私自身はスポーツとしてのサッカーにそんなに興味ないけれども、ヒューマンドラマとして胸にきました。おすすめです。



ママゴト 3 (ビームコミックス)
『ママゴト』:最終巻奥付けで明かされた取材先がスナック「紅」
この取材先って『ブラック・ジャック創作秘話』に出てくる、あのスナック「紅」ですよね。『ママゴト』掲載誌であるコミックビームの副編集長・岩井氏がチャンピオン編集長の沢氏と飲んだりする、あの「紅」だよなあ。
作品の内容は、松田洋子が白い!人間性というシロモノにずけずけ切り込むあのネームが白いと、ここまで温かくも切ないホームドラマになるものなんですなあ。母と子という立場の擬似家族関係の、絆と成長の物語。





別冊少年チャンピオン部門
対象:2012年創刊号〜2013年1月号までに別冊少年チャンピオン本誌に掲載されたマンガ作品から上位3位まで



1位 『ハダカノタイヨウ』吉木まさかず
2位 『サンセットローズ』米原秀幸
3位 『スパイスボーイ』深谷陽



『ハダカノタイヨウ』
マンガを読み続けている大人、という読者から見た時に、「マンガ」を「描く」ことに言及するネームの真理ぶりがよい、少年マンガとしての夢込みで。熱い。



『サンセットローズ』
「男気」を描く王道ファンタジー。海賊というキャラクター達の、意地が心意気が欲までもがカッコいい。(悪役ですら!)しみじみしびれます。



『スパイスボーイ』
深谷陽のタイ料理マンガ読み切り。『スパイシー・カフェガール』『スパイスビーム』に続く、第三のスパイス! コミックビームの「踊る島の昼と夜」シリーズ含めたら四?個人的に好きなんです、深谷陽の料理マンガ。
全40ページ中、調理シーンに16ページ、食事シーンに10ページかけ、じっくりメリハリつけて描写して、うまそうです、いい絵です。その人にあった料理を作る、という人情テイスト・おはなしぶりも健在。再登場期待したいんですがねえ・・・。





週刊少年チャンピオン部門
対象:2012年に単行本が刊行された「週刊少年チャンピオン連載」のマンガ作品
及び、週刊少年チャンピオン本誌2012年NO.1〜NO.53に掲載された読み切り・短期連載を含む全作品から上位5位まで



1位 『さくらDISCORD』増田英二
2位 『名探偵マーニー木々津克久
3位 『鬼さんコチラ』重本ハジメ
4位 『りびんぐでっど!』さと
5位 『巨大魚』杉浦洸



『さくらDISCORD』
どストレートな青春群像劇、完結。苦悩を抱えた少年少女が、励まされ受け入れられ発破かけられ友情に支えられることで一歩を踏み出す。その経験と共に歩むことがまた誰かの希望になり、想いが熱がつながり、救いが成就が立ちあらわれる。そのシナリオはもう気恥ずかしくなる程まっすぐで、でもまぶしかった。その世界の中で、全力で叫び、泣き、笑う主人公たちの生き様は、大切なものを描き出していた。最終回で全員が満面の笑みを浮かべるあの光景、そこにたどり着く為の物語。元オトコノコ読者たる私だって、この「さくら」達と共に救いと幸運に出会い、それを十全に味わい、最後には笑顔を浮かべることができたのですよ。それは少年マンガの夢をまた見れた、という幸福ですよ。



名探偵マーニー
週刊連載一話完結ミステリー。動機、もとい人間を語ることがメインの作品。日常生活の中のずれであろうと、情報環境を舞台にしようと、そこにおける「謎」を生み出しているのは常に人間であり、その心である。それは時には絶望の闇であり、時には救いをのぞかせる人生である。毎週毎週これだけ読ませる、ハッとゾクリとニヤリとさせられる「心」の物語をみせてくる技術には舌を巻きます。闇も光も、ユーモアもシリアスも含めての人間ドラマ。おもしろい。



『鬼さんコチラ』
短期集中連載伝奇アクション。いやもう、カッコよかった。ド迫力の絵力と画面構成にのせての熱く優しい物語だった。緊迫の場面やバトルシーンのみならず、妄想ネタやコミカルなずっこけまで映える映える、しっかり読ませる「作品」として屹立してました。これだけ楽しませてくれた、燃えた作品が単行本出ないってのはなー・・・。さわやかな後味の気持ちいい、いい奴らが主人公のまごうかたなき「少年マンガ」。実力見せつけてもらった身として、新作待ち望んでおります。



りびんぐでっど!
ゾンビっ娘ハイテンションギャグ、がいつの間にやらラブコメ枠化しての完結。このヒロインが可愛く見えてしまうというのが連載マンガという媒体のおそろしかところばい。ゾンビっ娘たる生態・分離・モツネタのおもしろさもさることながら、筆すべってんじゃなイカレベルのラフ画とテキスト含むギャグとしてのはっちゃけぶりがもう楽しくて。主人公が花くまゆうさくの『東京ゾンビ』柄のTシャツ着てるとか理屈じゃ出てこないよ、明らかにノリだよ、でもその速度とテンションの共有が楽しかったんですよ。ベッタベタなネタなのに顔の落差がひどすぎて勢いで笑っちゃったら、やっぱそれはおもしろい作品なんですよ間違いなく。馬鹿馬鹿しさは正義!あとまあこのノリつながりだと思うんですが、人妻ヒロインぶりな。『バイオハザード』新連載時はゾンビつながりセンターカラーで入浴回とか編集も共犯だな!この高揚感の中での三角関係とラブラブハッピーエンド、ごちそうさまでした。最終巻宣伝文「ゾンビっ娘は君ん家の本棚で生き続けるよ!!!!」は名文句!ウチがそうだから!



『巨大魚』
新人読み切り。クリーチャーヒロイン(※わりと可愛い)と少年、ひと夏のボーイミーツガール・ジュブナイル・・・と思いきや、オチに気持ちよくやられる。アオリに藤子・F・不二雄の造語「SF(すこしふしぎ)」使ってあったのも納得のネタ設定と台無しぶり。センスに光るもの感じました。ラストの筆描き文字「完」も、チャンピオンでデビューしたショートギャグの求道者(だろう)、上野顕太郎のそれにダブったりね。新作が読みたいなあ。





チャンピオンキャラクター部門
対象:2012年に単行本が刊行された「週刊少年チャンピオン連載」のマンガ作品
及び、週刊少年チャンピオン本誌2012年NO.1〜NO.53に掲載された読み切り・短期連載を含む全作品
及び2012年創刊号〜2013年1月号に別冊少年チャンピオンに掲載されたマンガ全作品
のうちいずれかに登場したキャラクター全てから上位3キャラクターまで



1位 住吉さくら(さくらDISCORD)
2位 範馬勇次郎範馬刃牙
3位 松岡咲子(みつどもえ



住吉さくら
『さくらDISCORD』のヨッシーさん。悪役然として登場し、悲しい過去を披露し、友情に涙し、決意の面構えを見せ、赤面デレし、コメディリリーフにも奮起し、切ない想いを抱え込み、白化プルプルし、また怒り、また笑い、嗚呼、お疲れ様でした。青春群像劇中における揺さぶられ役、イコール読者の心情揺さぶり役、お疲れ様でした。ようするに、見ていて大変いとおしい、かわいらしい、はやしたてたい女の子だったってことです。いつも一生懸命でカッコよかったよ!他のさくらさん達はほら、カップルで一単位だからさ。島君?彼は僕らの仲間でこそあれ、票を託す対象じゃないんだ!



範馬勇次郎
グラップラー刃牙』『バキ』『範馬刃牙』の範馬勇次郎。とにもかくにも読者に“強烈”を見せつける為のキャラクターでした。「格闘マンガ」として描くそのロマンがディテールがソウルが、「リアル」として読まれ享受される90年代に誕生したピカレスクなエディプスたる鬼。それはドメスティックだからこそ成立しえた少年マンガの夢だった。ゼロ年代に入ると時代を象徴するかのように作品をグローバル化多元主義が覆い、それを無茶とファンタジーで生き延び、そして最後の最後に落としどころとして、あの意志を見せてきた。食卓の味噌汁というホームドラマ、あるいはフォークロア。「家族」というエンディング、和解と団欒の光景。
あくまでハッタリとして、でもそれをこそ提示する、というのは私には「おはなし」への帰還だと読めたのです。タイマン張ったらダチ、の少年マンガ的神話に添い遂げ、父と息子という浪花節体現することだと。やり方は無茶苦茶だけれど作法として、ある意味読者ふくむ観衆への裏切りって形でもってそれやりおおせた。その生き様というのはやはり、あっぱれな昇華だったと思えるのです。



松岡咲子
みつどもえ』の松岡さん。まずは連載再開おめでとうございます>みつどもえ。新作掲載号の表紙絵、みっちゃんの服のチェックの柄があきらかに手描きで、桜井のりお先生の手によるもので、その事実にその絵にうるっと涙腺ゆるめて1年3ヵ月ぶりの新作読み始めた私の脳内を、頭ぱっくり流血だらりでただちにスラップスティックギャグワールド、まごうかたなき浜岡賢次ファンな作家の手による作品世界へと引き戻してくれた松岡咲子さん。その後も盆明けに頭の包帯に血にじませながら死体安置所うろつくわ、三女さんだけへの膿んだ患部の写メールで吉岡さんのジェラシーかき立てるわ、「殺しまでやれば驚いてくれるんだね!」という狂気のアオリに導くわ(それは編集者が悪い)、と八面六臂の大活躍。登場人物たちの成長と親和により、すでにほのぼのコミュニティぶりのぞかせることも珍しくないみつどもえ世界において、いまだ異物としての圧倒的存在感を読者に見せつけてくれる松岡さん。常人を超越した思考回路と体張った芸風、ギャグメイカーとしてひた走り続けるその生き様はやっぱりすごいよ。早く久保田君とのラブコメ回が見たいですね。(ないよないよないよ)





以上ッッ。
みんなも読もう、少年チャンピオン(買おう!!)