週刊少年チャンピオン2019年42号

細川雅巳『逃亡者エリオ』/動き描けないのをショットの切り替えによりそう見せる、というのはそりゃマンガの表現技法だけども、乱戦描写までそれ一辺倒ではさすがに粗が目立つ。/みんなチョロいキャラだなあ、しかし。作者の以前の連載『シュガーレス』『錻力のアーチスト』ではまあこのメソッドもありでしたよ。あくまでオトコノコ≒“馬鹿”が主人公で世界の地平たるユートピア。そこで描かれる内面は、純真・単純・直情であってこそデフォルメされた内面、表現としてありえましたよ。しかし、時代ものという体裁で舞台を“社会”に拡げ、以前の連載ではあえて描かれなかった“大人”の側もそこに巻き込みつつ、なおこの主人公にチョロいこと折伏されていく本作の世界法則には抵抗感がある。1話で披露された設定のムチャクチャぶりとも通ずるが、つまりそこには、昔の人間は頭が悪かった、という蔑みが前提にあるからだ。バカだから昔の人間は殺人も戦もしたんだ、それを近代の人権主義者たる主人公が「善導」していくんだ、というなんともチープ、そしてグロテスクな世界観。昔の人間にはたいした内面も私的リアルも存在しなかった、という無自覚な単純化は物語として差別的だと思いますよ、私。時代ものに限らず、SFとか異世界ものについてもだけどさ。

板垣巴留BEASTARS』/解説・実演されるとマジでウンコネタだよなっていう。浦安も負けてられない!あとラストにハルちゃん出てくるけど、ウサギには自分の糞を食べる習性あるし…いやいやまさか。序盤で触れていた戦争の話も関わってくるのか。かつては種族別で隔離状態だったのだろうか。/板垣恵介板垣巴留の父娘対談掲載。娘の作家性への父親目線がいいねえ。


夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち─バキ外伝─』/本編がリハーサル中な一方で、よほど迫力ある力士の戦闘描写になってるんですが…。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/なんか最近サービス回?的な展開あるけど、見せない方がエロいと自覚してるよな。

●中村勇志『六道の悪女たち』/公的・社会的復帰が救済にあたる作品なんだよね、よくも悪くも。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/強い…。どんな背景があろうと、勝負の場なのだよなあ。

桜井のりお『ロロッロ!』/応援上映の魅力はよくわからない…一昨日アイマスLIVEのライブビューイングに行ったばかりだけど。映像の中身としては女子同士の世界なわけだよな、これ。

●灰谷音屋『月影の忍』/読み切り。忍者アクションと思いきや、主題は内面の話か。心についた傷は消せなかった、と。『ジュニオール』の方と表裏一体のテーマでもある。

立原あゆみ『本気!』/リバイバル掲載。これよ、この美意識。インタビューは無しか、残念。

週刊少年チャンピオン2019年41号

  • 表2は自社関連広告が続くなあ。



●村岡ユウ『もういっぽん!』/巻頭カラー!増ページ!で、やるのはこの展開というのがこの作品らしいイズムである。仲間、根性、選択。強敵とあたるに至って、先生も指導者・先達としての面が強く出てきた描写がいい。

渡辺航弱虫ペダル』/「いい人」で浮かぶ御堂筋はそのシーンか。結局あの接触は御堂筋側にとってはどうだったんだ。

細川雅巳『逃亡者エリオ』/スピード展開がだんだんギャグに見えてきた。通信とか移動手段とかどうなってんだよ。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/何この世話焼きヒロイン…いやさガキの友情か。

板垣恵介『バキ道』/見せたいものはわかるけど、斗羽の宙返りプレスがダブっちゃってなぁ。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/…とか思ってたら、こっちも回想で力士VSプロレスラーとは。決着の方は餓狼伝キャラの技で勝ってるって話なんだけども、本編にも虎王出たし、まあ。

板垣巴留BEASTARS』/年長者ライオンのたてがみが薄いのはハゲの表現なのか!?“食事”の礼は清濁あわせ飲むいいシーン。死期のせまったネコ云々という物語化も面白い形。最後にヒゲをさし出すレゴシ、ルイを“食った”者として同類でもあるわけよな。

西修『魔入りました!入間くん』/「相手の絶対見たくないトラウマを幻覚で再現する」能力、と数話前に説明したくせに、見てもいない現実とは逆の状況を幻視する展開とかどんだけ雑に話作ってんだよ…とイラついたが、もしかしたら作者も編集もそもそも「トラウマ」という単語の意味を理解してないのか?なんせ「アダルトチルドレン」という単語をギャグで使った吸死のネーム通して後から謝罪する羽目になった編集部だぞ?まあどちらにせよムカつく馬鹿ぶりなんだけどさ。ムカつきついでに思い出したから言うけど、先週の巻末コメントで作者が「昔の絵を見直すと恥ずかしい」的なこと書いてたけど、今でも十二分に恥ずかしいレベルの画力だぞアンタ。

●灰刃ねむみ『足芸少女こむらさん』/足の指にタコの触手がからむ絵、作画は面倒そうだがもはやフェチかどうかもわからん。

●中村勇志『六道の悪女たち』/戦慄の笑顔…!

●暦『娑婆王』/千本刺羅(せんぼんざくら)て。

桜井のりお『ロロッロ!』/モヒカンさんを次回に引っ張る為の前フリとしてこの内容だったりすんのか。

吉田達弥『やっこちゃんのお悩み』/読み切り。ギャグ。肥満女子というガジェット。昔の浦安っぽいテイストのネタで笑った。

永井豪キューティーハニー』/リバイバル掲載。2話かよ、いきなり裸(変身シーン)かよ。で、敵の爪と自滅で燃えよドラゴンかよと思ったら日本公開はこれが掲載された数か月後だった、すいません。ギャグセンスの方の寄与を読んじゃうんだよな、このノリ。

石黒正数木曜日のフルット』/美味しんぼパロ。店名「中川」ってまんまじゃん、と思ったが中川は美食倶楽部勤務だから自分の店は持ってないか。


コミックビーム2019年9月号

  • 表3が『繭、纏う』アニメイト限定セット広告、表4が映画『血まみれスケバンチェーンソーRED』Blu-ray広告。表と裏!(何が?)

 



●増村十七『バクちゃん』/新連載。未来日本へ来た異邦人というフォーマットながら、直接的寓意のメルヘンといった風情。

●小山健『生理ちゃん』/なんつう見開きだ…。道を選ぶのは自分だからねえ。

●にくまん子『ガラスのくつずれ』/読み切り6ページ。恋ね!

●原百合子『繭、纏う』/幕間。生クリームまわりのセリフに笑う。絵と設定で情念の世界のようにも読めるが、この関係にはもうちょっとこう、モノのかみさまここたまみたいなファンタジーを見てもいいはず。(え、わかりにくい?)/あと、前号掲載回まで収録の単行本2巻買ったら、掲載時から収録順だいぶ変えられていてたじろぐ。時系列的に新しいのが最新話扱い(そのままだ)。

羽生生純『この物語でネコに危害は一切加えておりません。』/あーあ…。あれだ、寄生獣ではパラサイトよりも浦上の殺人シーンの方が怖いってやつ。

三家本礼『血まみれスケバンチェーンソーreflesh』/やるじゃん忍術。そして、ネロ様が立つ!

三宅乱丈イムリ』/おお、ここで彼が再登場か。展開としてもテーマの面でも納得。イマクの提言、カーマとイムリの和合の光景を受けての、ニコの決意の重み。それと呼応するタムニャド、という物語構成になるのがまた巧い。/あの伏線は生きているか。かつての行為と思想の対比として、手ずから渡し、食すデュガロの覚悟もまた重い。

いましろたかし『未来人サイジョー』/確かに知ってるマンガだからといって“再生”できるかはまた別だよな。それも読者側の発想かもしれんが。悲劇の未来への抵抗という設定ではあるよね、一応これも。

近藤ようこ(原作:澁澤龍彦)『高丘親王航海記』/モチーフは怪しい中国人キャラといえなくもない。アングラエロスの気配。

●谷口菜津子『彼女と彼氏の明るい未来』/夢の終わり。前回登場の彼といい、今回の主人公といい、男側の意識の軽さってのがもう…。

中野シズカ『てだれもんら』/えー、はい、もろBLっすね。

●うすね正俊『砂ぼうず』/ひさびさの気がする近接戦闘描写。そこまでの超越者なのかよ、アンデッド。

●伊図透『全速力の。』/環境や才能という各々の宿命と、それへのあらがい。スポーツ漫画であってもやっぱり伊図作品だな。

●二星まゆ(原作:宮沢賢治)『ひかりの素足』/集中連載最終回。マンガに起こすとこうなるわけだよなあ。絵の切り替えの効果でフォークロアとしての体裁は保てているか。

●倖田青空『女心のススメ』/シリーズ読み切り。お株うばわれてるぞじいさん、なのだが最後に言い淀むだけマシなのかな。

猪原賽横島一(原作:H・G・ウェルズ)『宇宙戦争』/通信手段がない中での、この川の光景は怖い。主人公の行動は、ある意味乙嫁語りと重なるような。

●福富優樹、サヌキナオヤ『CONFUSED!』/最終回。なんかちっちゃくまとまっちゃったなあ。作劇としてはそこをこそ目指してたのだろうが。


  • 中野シズカインタビュー、スクリーントーンが販売される限り続ける、という発言内容にヒエッとなる。その商品流通に基づく表現なのだよな、確かに。
  • 市橋俊介コラムはカブトムシに苦労する話。玉吉っぽい!
  • 正直そんなにちゃんとは読んでない(内容を覚えてない)のだが、川崎タカオの四コマはどこに向かうんだ。

週刊少年チャンピオン2019年40号

  • 映画「HiGH&LOW THE WORST」特集でグラビアは志尊淳。トッキュウジャーとHeaven?の人。
  • 入間くんアニメ、放送枠はヒロアカの真裏に。まあ異世界チートとバトルアクションなら住み分けもできそう。まともな日本語のネームも書けない作者に作詞やらせるのはどうかと思うが(素)。



板垣巴留BEASTARS』/あれ、ルイの経験相手ってハルだけなんだっけ?いずれヤクザとビースター、影と光も手を結んでの大きな戦いになるのだろうか。

渡辺航弱虫ペダル』/きっかけ、入り口は他人との接触でも、そこからの自覚と拡張は個人で掘り下げるものなんだよな、と。

板垣恵介『バキ道』/比喩表現がお約束のマンガだからこその「まんまじゃん!」の効き。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/で、こちらは作者が直接聞いた実話メソッド。郭海皇…とは違うか。

●中村勇志『六道の悪女たち』/マゾ相手におとしめ台詞は逆効果なのでは。

桜井のりお『ロロッロ!』/ひさびさの林田先生。会長と元部長くっついてトミー先輩あぶれちゃったからちょうどいいんでは、と思ったらなんか潮目変わってる?オチのコマ、わりと構図芸だよな。

●灰刃ねむみ『足芸少女こむらさん』/足フェチという主題にわざわざ直接的エロを重ねるのは、上等の料理にハチミツをぶちまけるがごとき思想では。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/におい付き消しゴムなつかしい。昔の作風知ってると、このオチはノムさんだから可愛く描けるけど、などと。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/武道の大会のハードさと選手層の強みというのは言われてみればな。奇襲ッ!

安部真弘『あつまれ!ふしぎ研究部』/前回のコマ毎に向きと位置関係がバラバラとか、以前の1コマ後に5人の腕が左右入れ替わるのに比べたら、今回の2コマ後に二人の立ち位置が入れ替わるミスなんて大したことないように一瞬思える、全然そんなことないけど。


●暦『娑婆王』/個人主義VS国家主義。違うか。

荒達哉『ハリガネサービスACE』/サブタイトル「ノートルダムの毛虫男」って、蔑称として自粛されてる旧題の方をパロディにしちゃうか…。

●触媒ヒロオミ『どらコン!』/長舌、一部ではウケそう。

●平平なすこ『ベンジョンズクエスト』/読み切り。ギャグ。尾籠ネタをRPGガジェットで。ひどいんだけども便意という題材の通徹ぶりはちょっと感心した。ひどいけど。

●古田朋大『謀略のパンツァー』/性別を超えてのパンツ幻視。本当なんなんだ、この戦い…。

●黒飛ただし『ヤメさせて!千切先輩』/読み切り。某筋トレアニメ放送中にここまで丸かぶせされても。

吉森みき男『しまっていこうぜ!』/リバイバル掲載。スポーツ漫画に土着の香りが残っていた頃だなあ。インタビュー、ちばあきおとのエピソードがよい。

石黒正数木曜日のフルット』/オークションでの出場権獲得ネコ登場。優秀にしてまさかの悪辣オチ。

週刊少年チャンピオン2019年39号



渡辺航弱虫ペダル』/まさかのママチャリ改造展開。プラモ・コスプレ的なオタク気質ではあるんだろうか。

●実樹ぶきみ『SHY』/同人出身らしい閉塞内面はしょり詰め感というかな…。これを構成や演出という技巧レベルにまで引き上げていってほしい所だが。

安部真弘『あつまれ!ふしぎ研究部』/公園の背景モデル作ったはいいが、貼り付けの雑さによりコマ毎の向きや位置関係がめちゃくちゃという。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/試合とその観戦模様をスムーズに読ませる画面構成が上手い。主人公以外のチームメイトは全員、限られた時間と自覚して選んだ、という意味でも“黄金時代”なわけだよな。

●暦『娑婆王』/一月早く言えばよかったのでは…。

西修『魔入りました!入間くん』/アニメ化と前後して原作になつかしキャラ登場、というのはまあ見かける展開だけども、初期のこのクソつまらん異世界チートテンプレ展開まんまもう一度見せられるとは思わねーよ。ここ数回の展開マジでひどくねえか。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/絵日記ネタ。下手な絵の体で作者の画力が出ている。サブタイトル「浦安ゆうえんち」も味わい深い。

板垣巴留BEASTARS』/希少種教祖の排泄物を崇拝する純血主義団体、てだいぶヤバいだろ。最後に出てきたコイツもいざという時は真・異種格闘大戦のクズリみたくなるんだろうか。ゴーシュの戦いは自分の孫と娘への思いの形でもあるからなあ。

●灰刃ねむみ『足芸少女こむらさん』/裸(※実体)出すのがヒロインよりも先にヒロインの母親、ておかしくない?

●中村勇志『六道の悪女たち』/その戦いには横槍を入れない、とやっぱり感情に目覚め始めてるのか最強ヒロイン。

高橋ヒロシ、鈴木リュータ『WORST外伝 グリコ』/勘違いで話進んでいくメソッド、キツそう。

桜井のりお『ロロッロ!』/僕ヤバでヘテロがもじもじやってるのに対して、このあけすけガチ百合感って。

●盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ』/作者体調不良のため今後しばらく休載とのこと。作風も煮詰まってる感あったし、月刊連載移行もありだと思うが。

●古田朋大『謀略のパンツァー』/なんだこの戦い…。

●櫻井あつひと『名探偵 鳳かおるの事件簿』/読み切り。作風全然変わらんな。

施川ユウキサナギさん』/リバイバル掲載。個人的には『がんばれ酢めし疑獄!!』の方が好きなんだけども、あらためて見るとフォーマットは違えどネタ的には近いノリも混ざるんだよな。インタビュー、語りまくってるなあ。

石黒正数木曜日のフルット』/おごってもらうならとことんまで、悪辣。猫はうな重食べるのかな(昔読んだ児童書では食べてたが)。
ルドルフ ともだち ひとりだち (児童文学創作シリーズ)