稲山覚也『アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover』

http://genbara-k.hatenablog.jp/entry/2018/08/01/231538
かつて、物語として拙いのれない部分あるの認めつつ、絵なり構図なり構成なりでの巧さと挑戦は見せられ続けたわけですよ、読者として。テンプレとサンプリングの小器用さで展開だけは回してみせる芸風と違って、自分なりの作品を表現を描く見せる意志のぞく点が、俺には読者として好ましかったわけですよ。その姿勢がちゃんと才能としての着地を見せた、稲山覚也の最新作はおもしろい。
アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover 3 (電撃コミックスNEXT)アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover 3 (電撃コミックスNEXT)

というわけで、稲山覚也の構成力はよいなあ、と宣伝画像で思わされた一件。








①モブ(観客)→主役(壇上)、読者と作中キャラの視線移動方向の同期、高位置→低位置、アイドル→観客席→セリフ
②セリフの分節、上段キャラの背面→下段キャラの背面(反発)、読者と作中キャラの視線移動方向の同期
③セリフと表情の同調
④前コマからの拡大
⑤高位置→低位置、読者と作中キャラの視線移動方向の同期
⑥セリフと表情の同調、上段からの反転(背中→顔)
⑦セリフと表情(反応)、アイドルと観客の正面顔(対面)、上段からの反転(表情の変化)
それら絵としての演出を読者の視界内でスムーズに認識させるべく、上手く構成がなされている。





また、この場面を試し読みにて見開き単位で見たところ。
「アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover」立ち読み



この場面では一貫して、ステージ上の発話者は上方向に視線を向け、観客席からそれを見る側は下方向に視線を向けている。(中継で見ている側の視線は横方向、かつ右ページ最下段のコマであることで、左ページへのスムーズな接続になる。)それが見開きの最後のコマにおいて、話者が異なる感情を見せると同時に、互いに正面からのショットで“向き合う”(=それぞれの視線が反転する)こととなる。上手い演出である。





読ませるマンガ、であることは、例えばこういう技巧により成立しうるわけだ。
(了)