ハルタ 2018-MARCH volume 52

※先月号です。


  • カバーイラストは紙島育。草花の生えた女性に虫と小動物。

森薫『シャーリー・メディスン』/シリーズ読み切り。犯罪者の逃亡と潜伏、と現実に似たような事件起こっちゃってるけども。期せずパジャマパーティー状態。

●空木哲生『山を渡る-三多摩大岳部録-』/新連載。がちキャン△。ハレ的舞台(ここでは大自然)とミーティング、双方におけるコメディ調人間模様、と前連載から変わらぬ安定感で好み。初っぱなからシビアな面ものぞくあたり、ドラマとして誠実よ。

大武政夫ヒナまつり』/うれしくないドラえもんって感じだ。

佐野菜見『ミギとダリ』/坂本くんと異なり、こちらは内面ある主人公なのよな。

福島聡『バララッシュ』/男の世界。正味この手の話には『シニカル・ヒステリー・アワー』冒頭の「幼い頃のテリトリーは狭い」を連想したりもするのだが、しかしやはり、“また”人生を選んだ瞬間なのだ。明確な断絶が本来なくとも、それでも。

ゴトウユキコ『なれた手つきで ちゃんづけで』/読み切り。また意外な作家がきたな、と思ったがエロスは変わらず。ある意味『恋の門』だな。しかし浮気はいかんよ。

樫木祐人ハクメイとミコチ』/確かにこの作品における“美味しそう”の手作り感と、店前の行列に象徴される大量生産・安定供給のイメージとはそぐわないものではある。

九井諒子ダンジョン飯』/変容する夢の世界でバトル、と空間把握の描写力問われる展開。その恐怖の形を、一方通行の通路として表現するのが面白み。物語としてはキャラの内面描写、設定の示唆にあたるか。モンスターは動物名のマクラガイからきてるのか、地口ネタなのか。いい夢に置き換わる、という退治の形が絵物語的表現でほほえましい。フタ開けると浮かぶ蜃気楼という図には、アニメ版ミスター味っ子でやってた湯気の映像化連想しちゃったけど。

八十八良『不死の猟犬』/そういやこの世界観では死刑ないんだっけ、と考えると笑えてくる。

佐々大河『ふしぎの国のバード』/なんか曽田正人的な窮地で輝くキャラになってるけど、実在の人物の描き方としては舞台立てといいどうよ。今更だけど。

●設楽清人『忍ぶな!チヨちゃん』/忍法が山田風太郎路線になってる。意図せず敵方をあざむき、排除してみせたと。

近藤聡乃『U子さんの恋人』/番外編。ヒロ君がゆうこの実家(秋田県)へご挨拶。飛行機内で着席してる視界の構図があまり見覚えなくて好き。その面白いアングルは右ページ最終コマで一コマきり、次のコマ=ノドまたいで左ページ上半分の大ゴマではもう場所移動すんでる、という瞬間芸。新展開大ゴマもまた、中央下部に配置されたヒロ君とゆうこ(背面)を囲む&圧するようにゆうこ家の面々の正面図と方言オノマトペが配置され、ゆうこがコマ左下に浮かべる吹き出し「……」が読者の視界には最後に入るよう位置取りされている。

→そこからはラストまで一室の中、こたつ囲んで着座した大人五人と動き回る子供二人を描いて話が進む。子供二人のコマ毎の描写が、コマとコマの間でも絶えずアクションしていること想起させる見映えでよい。丁寧に描写することがイコール分節点を増やすだけだと思ってる“ハルタっぽい作風”(うーん)とは、こういう所が芸の差である。
/構図としても、おどおどしてる状態のヒロ君(8ページ目)は左向きでコマの右側に、ゆうこ家にとけ込んだ状態(9ページ目)では正面顔でコマ中程に、モノローグ浮かべるヒロ君の隣に座るゆうこ(10ページ目)は右向きでコマの左側に位置しており、右から左へ動く読者の視線と人物の作用関係をリンクさせた読ませ方となっている。

●加藤清志『忍のエン』/読み切り。相変わらずの異色さ。ジョジョの影響濃いという点では、『正義の殺人鬼』の不穏さにも近いんだよなあ。

中村哲也『キツネと熊の王冠』/ビールタンク内に上半身突っ込んでの掃除描写、水着サービス回の風情。体の向きが変えられないことで同じ顔の角度断続的に続く流れが、心理表現の効果にもなっている。密閉空間の内と外、とこういう構成も描けない作家は描けないのよ。そんで真逆に庭にばかでかいビニールプール置くとかいう意味不明な状況出しちゃうわけで。これも隔号連載化か。

●高江洲弥『ひつじがいっぴき』/すわ拘束=蹂躙側に回るのか少女の夢(初掲載作もそういう雰囲気だったし)、とも思ったが一線は守るのね。自壊なのか、しかし。

●井上きぬ『まだ見ぬ春の迎え方』/人魚姫といえば、田中ユタカ『人魚姫のキス』の熱すぎるあとがきですよ、ええ。

●緒方波子『ラブ考』/ホームシック(主に猫)。ある意味これはコミックビーム連載中の『猫恋人』なのでは?

●百名哲『有明の月』/シリーズ読み切り、全3話の1回目。ブラック職場と死にかけた時の回想、てのっけから重いわ。人生最大にして最強の敵めんどくさい、とは古谷実の名言なれど、それに殺されることもある、と。あと、このタイトルは『喧嘩商売』の文さんと父親のエピソード思い出しちゃうじゃんよ。

●浅井海奈『世話のかかるヤツ』/読み切り。サイレント作品。さらにバンドデシネ風の内容へ。作風割り切ったら、絵柄がきっちり構成の巧さとして機能するんだな。おもしろい。