コミックビーム2017年8月号

三家本礼『アイアン・ゴーストの少女』/新連載。機械人形に魂移しての異教徒バトル。今回は女子高生主人公。
●H.P.ラヴクラフト、田辺剛『狂気の山脈にて』/前回の迫力怪獣バトル(想像図)から、今回のミニマム(でもないのだけど)な眼前の違和感、というつなぎ方。
桜玉吉『六月の伊豆』/読み切り。幸せそうですなあ、些事もまた日常。
新井英樹『KISS 狂人、空を飛ぶ』/思想統制・密告の横行する世界と、それに御されぬ形としての超能力と。新井作品といえば、背景や小物のディティール、セリフの内圧という形で情報量膨大だけれども、こういう“省略”、洗練に向かうか。この内面の向き合う世界の形は、というリアルでもある。
●conix『青高チア部はかわいくない!』/ちょっと熱いじゃないか。それあたしが欲しい展開(やつ)、には笑ったが。スポ根と女子コミュニティとでおはなし文法の相互作用効いてるのよね、馬鹿のガンバリズムとして相通ずるというか。
●おくやまゆか『むかしこっぷり』/汽車に揺られて善光寺参り。子供の悲しみをこの絵柄でクローズアップされると、くるねえ。
三宅乱丈イムリ』/言葉を失う、この絵、この展開。この物語をここまで紡いできた作家性たるや。/はあ(嘆息)。あと今回も構図芸抜群であるが、特に見開きの空中戦の迫力には、田辺剛とまた異なる良さを感じる。
おおひなたごう目玉焼きの黄身 いつつぶす?』/コミュニケーションのグルメ、なんだよな、この作品は。
カネコアツシ『デスコ』/放浪編か。しかし、この引きは。
●伊図透『銃座のウルナ』/おお、これは衝撃の展開。“手”と“質問”が意図と迷いを匂わせるも。戦場から離れた今、直視することになるのか。
山田参助あれよ星屑』/戦地と性。そこに哀しみを読むのは、結末を知っているからというだけではないよな。下ネタ都々逸の息づき方が流石だ。
須藤真澄『どこか遠くの話をしよう』/どこか遠くにある、在らせるべく、どこか遠くへと。重い、ではなく、切ない、として語れるのがこの作家性、ファンタジーたる筆致だ。
●市川ラク『わたし今、トルコです。』/なんか掲載のタイミング的にもインパクトあるゲイ、バイエピソード。セクシャルマイノリティじゃない、性欲あるだけ、というのは真理だな。男への性犯罪の多さという言及はなあ、ようやく先の刑法改正により同性間の強姦・男性の強姦被害者の存在を認めるようになった、日本の人間が言えた話じゃあねえんだわなあ。
松田洋子『大人スキップ』/その人の生が希望の形、か。これは、しかし物語としては、どういう結末に向かうんだろうな。
山川直人『小さな喫茶店』/御家庭のコーヒーを、時を経て三度。みな流れてうつろい、そして自らが出会えるのは常に側面のみである。だからこそ感傷を見るのも、また。
羽生生純『恋と問』/最終回。ひでえなおい、と作者のこれまでの作品における“物語”の扱い見てきた身としてはあらためてこれ読まされてもなあって意味で言ってもよい、だろう。真摯な刑務所オチ、ではあるかもしらんが。この“漫画”に相対する者として残るのは編集というプロのみ、と。